宿泊施設で快適な目覚め、まだ5時半頃だ。母子を起こさないように部屋を抜け出し、ロビーで読みかけの小説を進める。小川勝己「葬列」、陰惨なタイトルと文庫カバーとは逆に、漫画チックにあっけらかんとしたバイオレンス物。気の弱いヤクザ、物欲にまみれた中年女などキャラクター設定が良くて楽しめるが、あまりにも荒唐無稽と言える。解説にも書いてあったが、どうしても桐野夏生「OUT」を思い起こさせてしまうのが惜しいところか。

目覚めた唯と周辺を散歩して、皆で朝食。建物の前で集合写真を撮って姉貴一家と別れ、一旦新居に戻る。去年は俺が部活に行くためこの集合写真に入れなかった。この写真を一年間大事に飾る親父・お袋に申し訳ない思いだったが、今年の写真は皆(和子も)こっちを向いていい表情。自動シャッターにしたのが却って自然な表情を引き出せたのかも。家で支度をして、親父・お袋と弟一家、合流した従姉妹の娘mちゃんも一緒になって2台に分乗し、A川へ向かう。

これで三度目となるSの里も、桟敷席を利用するのは初めて。予約席に行くといつも遊んでいるのとは反対側の場所に案内され、全体的に浅いものの川面一帯に木が覆い茂って日陰となって涼しい。深い流れを期待する若者達がいない分静かで良い。ひとしきり遊んで、鉄板で肉や野菜を焼き、焼きそばも食べる。唯と和子は早々に寝付いてしまったものの、皆よく食べてくれて用意した分を無駄にせずに済んだ。もう一度川で遊んでいるとmちゃんの祖母に当たるN叔母さんが新居に迎えに来ているという連絡が入り、急いで帰り支度。2家族が一日遊んで駐車場料金も含めて1万程度だから安上がりだ。

せっかく迎えに来てくれた叔母さんだが、mちゃんを夕食とその後の誕生会に招待するため、世間話だけで帰ることに。夕食は近所料亭の仕出し弁当と、子供たちはお袋のオムライス。そして誕生会は俺の四十半ばのお祝いを全員でしてくれる。ケーキはA子が注文してあったトトロを描いたチョコバナナのもの。全員が見つめる中、蝋燭の火を・・・と思ったら、唯が「ここは私の出番」とばかり吹き消してしまった。残った火を二人で協力して消す。弟夫婦からはガーベラの花束も貰い、こんな盛大な誕生祝いは子供の時にも無かったのでは思えるほど。明日は俺が早いので、寝る前に姪甥の姉弟はかしこまってお礼とお別れの挨拶をする。しっかり礼儀が教育されていると、弟の子ながら感心する。