最近、唯の自分を指す言葉が「ボク」から「わたし」に変化している。どうやら幼稚園に通う他の母親から「女の子がそんな言葉遣いしているとおちんちんが生えちゃうわよ」と言われ、その後その子供をはじめ周囲から笑われるようになったらしい。性差を意識するようになるのは成長の表れでもあり喜ばしいことだが、つまんない常識を押し付けられて伸び伸びとした個性が萎縮させられてしまうのは残念だ。A子のことも、これも明らかに園での影響だろう、最近では「ママ」と呼ぶようになってしまった。敢えて訂正はしないが、俺たちはずっと「とうと」「かあか」から「お父さん」「お母さん」へ自然に移行していくものだと思っていた。幸い俺のことはまだ「とうと」である。園における父親の存在感が希薄なためか、言葉の影響も及ばないようだ。

ラジオ体操をして残り物中心に朝食。、午前中は部活に向かい100×50をメインとしたインターバル練習を上から指導。今日は距離も8千以上ということもあり、3時間半もかかってしまった。その後一旦家に帰り、子供らの昼飯の介助を手伝い、午後は補習へ。講義室で準備をしていたら他の授業を受ける生徒たちが馬鹿話でうるさいので一喝する。自習室に早く来て彼らの居場所を奪ってしまうのも気が引けるが、昼に一度家に帰ると予習をする場所が他にないので仕方ない。だいたい無駄話しているなら講義室を使う必要もないだろう。

学校に戻って昨日の出張の報告書など色々と雑務。帰って子供達を近所の公園に連れて行き、日差しの弱まった夕暮れの中で遊ばせる。和子はまだブランコには乗れないが、すべり台の降り口に座らせておくと、自分でお尻を動かしてちょっと上に登り、嬌声を上げながら降りている。どう見ても滑っているとは言えず、単にお尻を動かしているだけに過ぎないが。隣接する神社の御堂前でA子がカブトムシを発見。唯は以前から絵本で見て「カブトムシだったら触れるよ」と言っていたくせに、いざとなると尻込みして、でも興味津々と目を輝かせて見ていた。この辺は自然が豊富にあって本当にありがたい。

夕食は鰻の蒲焼を短冊に切って卵でとじたうな玉丼。親父が庭で育てた枝豆を茹でてくれたので、余分に作ってご馳走する。俺としては一緒に食べようかと思っていたのだが、お袋が残り惣菜を片付けたかったからか断って別に準備を始めてしまったので、親父に作った丼だけ渡して俺たちはいつもどおり二階で食べる。親孝行のつもりで一緒に食べようと提案しても、彼らもマイペースに過ごせる方がありがたいのかもしれない。風呂に入れて寝室で絵本の頃にはもう眠くて堪えられないほど。適当に切り上げ、A子に託して自分の寝室で横になるとすぐに寝入ってしまう。