俺もA子も独身時代が長かったので、結婚した後も子供達が生まれるまで、他人に気を煩わされないマイペースな生活が身に染み付いていた。だから子育てに翻弄されている真っ最中の今、一番精神的な負担に感じる事は「自分の時間がない」ことだ。俺はもともと家事は苦にならないから、A子が子供の相手で忙しい間にキッチンや洗濯の仕事を任されることは特に問題ない。しかしこれが逆になって俺が子供達の相手をせねばならないとなると、そりゃたまになら俺も嬉しいのだが、とにかく子供の行動を「待つ」「同じことを繰り返す」「能率的でないやり方を手出しせず見守る」という行為が、普段合理的な行動に慣れきった自分の脳には多大なストレスとなっているのが実感できる。

子供達が本当に赤ちゃんの頃は、彼女達の意思を尊重する必要もなくこちらの都合でどんどん用事を済ませていられたのだが、未成熟とはいえ自分たちの意志を持ち、主張をする彼女達を納得させながら付き合い予定を進めていくというのは、本当に忍耐を必要とすることだ。今朝も早く起きた姉妹はCDをかけて、俺とのダンスを待っている。気の早い和子はCDが廻り始めたらすぐに俺にすがり付いてきて踊りをせがみ、唯は「とうとー、もうじきだんご三兄弟始まるからねー」と落ち着きながらも催促を忘れない。いや、昨日も書いたがこれは本当に幸せを実感できるひと時でもあるのは間違いない。ただまだ洗濯物干しと弁当作りと自分たちの朝食・子供達の朝食介助と台所片付けと髭剃りが済んでいないから、出勤までの僅かな時間にそれを成し遂げたいという焦りが、子供達とのふれあいを純粋に喜べない気分にさせているだけなのだ。

授業を終え、部活を終えてもまだ6時になったばかり。このところずっと気になっていた散髪にやっと向かう。A子からの電話で、子供達が早く寝付いたとの報告があったので、心置きなく遅く帰ることができる。さっぱりして帰宅、夕食は焼きうどん。日中の様子を話してくれるA子によると、我が出てきたとはいえまだしゃべれない和子に比べ、何かと口ごたえして言う事を聞かない唯を親父は持て余しているらしいとのこと。和子の面倒は進んでみてくれるのだが、唯はすぐに叱られてべそをかいて二階に戻ってきてしまうらしい。親父には親父の言い分もあるだろうし、子供の世話を頼んでおいてあれこれ注文できる立場ではないのだが、できれば唯に不公平感を感じさせない接し方を心がけてもらいたいものだと思う。