春休み最後の二日間は、H商との合同練習だ。万一にも遅れてS先生の機嫌を損ねては大変だと、部員達に15分前の集合を伝えておいたら、さらに念押しして20分前に現地に俺が着いた時には全員既に揃っていた。これまで横で練習している様子や話をしてもらう中で、彼らもS先生を怒らせてはいけないと本能的に察知した模様。と思ったら肝心のH商部員が一部遅刻して、結局俺たちも含め長い説教を食らう羽目になった。遅れた当人はかわいそうに、練習中ずっと直立不動でプールに入れさせてもらえなかった。

とにかく毎回感心するが、S先生は部員を集めて実に良く話をする。練習自体の話はもちろんだが、モラル・生き方・家族愛まで、自分のこれまでの人生を振り返って延々と話して聞かせる。練習時間全体の半分が話しだと言ってもいいかもしれない。今回は初心者同然の俺たち部員を迎えての合同練習だったのでまた一段と熱が入ったのかもしれないが、それにしても「生き様を伝える」その熱意は相当なものだ。

12時近くなってやっと解散、家に戻りカップ麺と冷やご飯で慌しく昼食を済ませてから親に見てもらっていた和子を引き取る。今日はA子はピアノレッスンで、珍しく唯を実家に連れて行っている。いつも和子では唯が寂しがるとの配慮か。ところが14時を過ぎる頃から和子が泣き出して、もうどうにも止まらなくなる。眠くなったのかと布団の上に乗せて添い寝してみても、ベランダに出て外の景色を見せても、ギャンギャン泣き喚いてお手上げ状態に。15時になってA子が帰って来、心底ホッとする。

夕食は俺が腕をふるってホウレン草ペーストとひき肉のカレー。サイコロ状にしたエリンギやジャガイモ・ピーマンが具。A子は感激してよく食べてくれるが、唯はわざと「美味しくなーい」「まずくなあれ」などと嫌なことを言う。こちらの反応を窺うためにわざと言っているのだが、そのくせ「嫌なら食べなくていいよ」と椅子から降し別室に連れて行くとワアワア泣いて嫌がるのはどうした事か。泣く事まで含めてゲームのように楽しんでいるとしか思えないのだが。