最終日、今日は年配先生とともに素直に早く起きる。生徒にも「できるだけ早く出発した方が、その後の日程が楽になる」と伝えてあるからだ。しかしバイキング朝食後、先発隊の出発はむしろ予定より遅れてしまう。忘れ物を取りに行くにも、このオープンスタイルのホテルでは部屋を往復するのに何分もかかるのでやむを得ない面もある。俺達後発隊は15分くらい早く集まることができた。

例によって飛行機の座席をガイドさんに考えてもらったクイズで決めていく。生徒達は朝だというのに、自分の座席が決まった者から寝入っていく。よほど昨夜は夜更かししたのだろう。首里城はこれまでのどの施設よりも修学旅行生が集中していて、こんなに高校生がいるのでは何だか大コンサートでも始まるかのような雰囲気だ。拝殿内を大集団でぞろぞろ歩くのだが、殆ど誰も館内展示に興味を示さない。明朝が琉球王朝に与えたという鍍金銀印も展示されていたのに。

休憩所周りで迎えのバスが到着するのを待つ。今朝のバス出発時に人員確認をさせた女子がそのまま席に座ってしまって報告に来なかったことを皆の前で叱ったためか、何だか生徒達が俺を遠ざけて近寄っても来ない。修学旅行を引率して生徒の誰とも写真を撮らなかったのは初めてのことだ。昨夜に引き続き疎外感を味わうが、生徒課になった数年前から俺は生徒に慕われそうな言動を切り捨ててきたので、こちらは仕方ないことだろう。一人でA子にメールで首里城の写真を送る。

飛行機・バスと順調に乗り継いで予定時刻を数分も違わず学校へ帰着。最後にバス中でクラス生徒に少し話をする。今回の旅行が無事終わることができたのも、添乗員をはじめ多くの職業人たちが君らの旅行をサポートしてくれたからだ。お金を払ったからサービスを受け取るのは当然だという考えは、少なくとも今の君達にはふさわしくない。まだどの分野においてもお客さんの立場にしか立てない君達は、今回の旅行で添乗員さんやホテル・マリンスタッフ・ガイドさんたちが見せた、己の職責を全うする責任感と職業倫理の高さに敬意を表し、自ら社会人としての立ち位置が切り開けるよう学んで欲しい。こんな話だが、少々難しかっただろうか?

職員室でテスト解答を受け取って机上整理をしていると、A子から「唯が泣き止まなくて困っている」と電話が入る。OK、ただいま日常。家に帰り、唯をあやし、風呂に入れて寝付かせる。夕飯はおでんとタラの粕漬け。既に届いていた紅芋タルトはA子に大好評だ。準備から中心に頑張ってきた修学旅行だったが本番では少々寂しい思いをした。しかし母子の笑顔に迎えられて、幸せな自分を思い出したよ。