さあ、新年度の始まりだ。髭を剃って新しいワイシャツをおろし、久々にネクタイを締める。A子も張り切って弁当を作ってくれた。唯の夜泣きで良く眠れない日が続いているだろうに、一緒に早く起きてもらって悪いなあ。その唯も一緒に起きて見送ってくれた。最近は着替えた俺を見るだけで「バイバイ」と手を振るので、なんだか早く行けと言われているようで寂しい。

朝のSHRはわざと違うクラスへ行って掃除をさせる。向こうもそれを読んでいるので、教室内に入ってもさほどの反応は無い。服装を整えさせて式場へ向かわせる。ところが俺自身が背広の上着を忘れてきていることに気づいて、大いに慌てる。過日の送別会に学校から直接出向き、いつも職員室に置きっ放しにしている背広を持ち帰ったのを忘れていたのだ。あちこちに予備の背広を持ってないか聞いて回り、最後の手段とばかり事務長に掛け合って式典の間だけ借りることに何とか成功した。

新任式が終わり、校長初のやや固い式辞が終わって、生徒お待ちかねの担任発表。毎年露骨に「やったー」とか「ええ~」とかいった嬌声が上がるので、前のクラスの奴らには「間違っても俺と分かって落胆の声を上げるなよ」と釘を刺しておいたのだが、そのせいか自分の受け持ちが発表された時には、他クラスと比べて妙に薄いリアクションだった。新クラスへ出向いて、去年と同じような訓示を垂れる。その前に話をした副担任の若い女性の先生はくだけた内容で和気あいあいムードになっていたので、あまり堅い話もどうかと思ったが、やはり重要なことは最初にと思い、集団生活を維持していく上で守るべきモラルを語る。

いろいろ新年度の準備をして帰宅が18時半と遅れてしまった。春休みの間は比較的早く帰らせてもらうことができたが、今後はこのくらいの時間が当然になっていくのをA子にも覚悟しておいてもらわねばならない。すぐに唯にご飯を食べさせ、風呂に入れて寝かせる。今晩は肉じゃがとナメコの味噌汁。「(献立が)しょぼくてごめん」とA子は言うが、外食よりよっぽど美味しくホッとする夕飯だ。