今回は、「これから就活を経験する皆さんに言っておきたいこと」です。

「先立つモノがなければ何もできない」

多くの方は、家計がしんどいときに、この言葉を使うものと思われます。
しかし、これは、アナタが将来勤めることになる(であろう)企業、または国や地方のお役所にとっても同じことなのです。

官公庁には破産能力がないので、ここでは破産がありうる民間企業に対象を絞ってお話してまいります。

お金が入ってこなければ、人件費は払えないし、人を雇えない。どのジャンルでも、国際競争などの厳しい市場でモノ余りと値切り要求が激化し、売っても利益が上がらない事業者が我が国に限らず世界的に増えているので、「お金が入らない」傾向は加速しています。その結果、少人数に多くの仕事が集中しているのにそれに見合った給料が出されない、あまたの「ブラック企業」が表面化して社会問題になっていることはご存知かと思います。

そんななかで、業績はさておいて、多くの正社員を維持している企業は、さぞ魅力的に映るでしょう。ボーナスも超勤も有休育産休も出る、昇給もある、福利厚生も充実。仕事もプライベートも充実、ワークライフバランスの模範例。ブラック企業の蔓延が謂われる世の中では実に天国と呼ぶにふさわしい。
しかし、そんな企業の説明会に行った時、または面接の最後に「何かご質問はありますか?」と聞かれた時は、ぜひこのことを問うてみてください。

「これだけの正社員をどうやって維持しているのですか?」

ここで冒頭の「先立つモノ」を思い出していただきたいのですが、そういう企業には、何があっても倒産しないだけの基盤が不可欠。それは圧倒的な売上であったり、そもそも業界が寡占状態であったり、国の産業政策による参入規制であったりするのですが、いずれにしても、もともと高利益率商品を扱っていて、なおかつ新規参入がそもそもないか、少々あったところで値崩れを起こさないことが、正規雇用の維持には必要不可欠になります。

高利益率ということは、客側の視点から言い換えるなら、不当に高値を払っている「ぼったくり」です。ひいては、正社員そのものも、見方次第では「客からぼったくっている」とも取れることになります。そのような「ぼったくり」は、世界規模で競争の激しい大多数の業界では、先に述べたように値引き要求が激しいですから、例外はいくつもあるものの、基本的には淘汰されることになります。値引き圧力は収益→給料→家計→消費→収益→…と影響が循環拡大しますから、よりその傾向は強まります。それほどの時局で、高値をつけ続けることが可能な企業など、本当に一握りしかありません。

企業は慈善事業ではありませんから、利益が出たうちからしか、給料は出ません。正社員として人を雇い、諸手当福利厚生を出すことは、確かに企業の義務ではあるのですが、それを当然のごとく受け止めているうちは、まだまだ甘いし、ぬるいです。あくまでも理想にすぎません。超勤手当など、高度成長からバブルにかけての、モノが足りず、「作れば売れる」市場あってのものです。今は「作っても売れない」がために、値引き競争が起き、安い人件費を日本人が歓迎せず、果ては安全性に問題のある(疑いのある)外国に生産拠点が移転してしまった。その結果が、昨今問題になっている、マクドナルド異物混入騒動です。市場構造、消費、雇用、品質問題、すべてがすべて、循環しているのです。

以上を踏まえたうえで、正社員、正規雇用というものを考えると、今はまだよくても、実際は不安要素が多いことがわかります。それでも「とにかく売り上げて、正規で人が雇えるぐらいに会社の収益を増やすぞ!」という腹積もりがあるのなら、正社員は目指す価値のあるものではないかと思います。そのような視点に立つと、仕事もプライベートも充実、なんて生ぬるいものでは、断じてなくなります。

ワークライフバランスとはよく言いますが、それとて、実のところ、超がつくほど有能な人の特権です。よほど仕事ができて、定時までにしっかりこなせて、、、ぐらいなものでないと、雇用形態の如何にかかわらず、プライベートは充実しません。それができる程度の能力を身につける余裕は、むしろ我が国の産業力を本当に支えている中小企業にこそあるのではないかと感じます。所謂ブラック企業と呼んで差し支えない事業者も多く、超勤が出ないのも一般的ですが、大企業のような人事管理統制も、事業者により差こそあれゆるく、先輩や上司の指導もより個人の特性に根差してきめ細かく受けることができます。

中小企業で力をつけたい場合に特にオススメの職種は経理です。経理は、社内の物品、売上、利益などの会計処理のほかにも、事業計画書などを持ち込み、銀行にかけあって融資を取り付けてもらう仕事がありますので、財務管理の何たるか、お金を借りることの何たるか、信用の何たるかを、より深く理解することができるはず。ちなみに小ブログ主は、これを大学2~3年の社会人研修として取り入れるべきと考えていますが、、、

当たり前のことですが、人に喜ばれなければ、お金はもらえないし、食べてはいけない。また、ちょっとした働きで大金が返ってくるほど、今日の市場は甘くはない。そんな「労働天国」は、今や寡占企業のごくごく限られた席にしかない。従前にもまして値引き要求が激しい今日の市場ではそれすら危ない。
「原資がなければ何もできない」
「無い袖は振れない」
そんな現実を踏まえた上で、就職、労働、生産ということを考えてもらいたいのです。小ブログ主の自戒としても。