危険法案の国会上程などで延期していた「ニッポンの恋」シリーズですが、最終回ということで、今回はコチラも最終回「ガールズ雑誌考」シリーズとのコラボレーション!

 


「ニッポンの恋」シリーズでは、百人一首に歌われた、宮廷の男女それぞれの恋を取り上げてきましたが、とにかく目立ったのは、「叶わぬ恋」「切ない恋」「デートの後に」の何と多いことか。

「誰にも気づいてもらえないこの気持ち、涙に濡れた袖…キミは気づいてくれる?今すぐ会いたいよ!」
「夜ごと夜ごとに会いたくて、考えてるのはいつもキミのコト…こんなに袖が涙の色に染まって!」
「素敵な一夜だったね!だけど気がついたらまた会いたいよ!朝日が憎いなぁ~。」
「楽しかったよ~また会おうね!だけど他のコに盗られちゃったり、、、しないかなぁ…素敵な黒髪もこの通り乱れて気が気じゃないわ」
「いつまでも会ってくれないキミのコト、思い続けて焦がれる私…どうしてそこまでじらすの?」


43首ある恋歌のほとんどは、「会いたくても会えない」であったり、デートの後に「また会いたいよ!」であったり、「勢いでキミとしたばかりに、次も会いたくなっちゃった!」であったり。これが勅撰和歌集、つまり日本国天皇謹製だというのですから、そして古典の名作として愛され続けているというのですから、我々日本人はよほどこういうのが好きなのでしょうね。

ところ変わって、10~20代向けガールズ雑誌(特にギャル誌)の投稿欄には、幸せに長続きした恋、うまくいかなかった恋、一度きりで終わってしまった恋など、読者の恋にまつわるあれこれが多数投稿されます。人気のアーティストがインタビュー記事で読者のお悩み相談に答えていたりもします。叶わなかった恋も、忘れ去るべき黒歴史では決してなく、むしろ前向きにとらえられていることがわかります。苦い思い出も大切にし、切ない恋にも心ときめく、1,000年来の伝統は、決して滅びていません。

そもそも、恋に心ときめくこと自体が、着飾ること、バッチリメイクすることの原動力。愛しのカレにモテたい、抱かれたい。それを一度きりでもまあ良しとするか、持続させようとするかが、ギャル誌と赤文字の思想的な違いであることは以前 → コチラ お伝えしましたね。

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さて、これまでの連載では、各首の解釈で「会いたい」というキーワードを強調して使ってきました。恋の歌なので当然と言えば当然なのですが、雅を損ねるので、あまり古典講釈の世界ではやらないのがお約束です。といいつつ、今回もすでに8回使っているのですが、、、

ここまで言ってしまえば、賢明な小ブログ読者の皆さんは、
特にガールの皆さんは、もうお分かりですよね?

上に挙げたような歌詞、どこかで聞き覚えがありませんか?

ガールの皆さんにはおなじみの西野カナ。

「着うた女王」として、飾らない、リアルで切ない恋を歌った歌詞でガールの共感を呼び、またファッションアイコンとして、特に大都会のギャルからは高い支持を受けています。

「会いたい」というキーワードが歌詞に含まれた曲は多く、一部では多すぎるとの意見が出るほど。

彼女の人気と古典の名作として親しまれる百人一首には、一見何の関係もないように思えますが、むしろ関係大アリ。私達は、リアルで切ない恋の歌を、こうして1,000年以上もの間語り継ぎ、愛し続けてきた、その上に彼女の曲のヒットがあるのです。

1,000年前の宮中のお姫様と、2000年代の大都会を生きる私達、時代は流れても、三十一文字から着うたまで、その心は実のところ変わっていなかった、と言えましょう。

ちなみに小ブログ主オススメのナンバーはコチラ。まぁ前期(デビュー~2010年)ばかりですけどね。
・君に会いたくなるから
・Celtic
・もっと…
・遠くても feat. WISE
・会いたくて 会いたくて
・LOVE IS BLIND
・Yami Yami Day
・MAYBE
・WRONG
・Yours Only, feat. WISE
・Dear…
・Again
・涙色
・さよなら
「もっと…」「Yami Yami Day」はあるある!ってコも多いのでは。「Dear…」「Celtic」「Yours Only」はジーンときます。

※歌詞を表示しながら本シリーズのバックナンバーを読むと一粒で二度美味しいかもしれません。

見た目はいかにも今ドキの女のコ、それもギャルそのものの彼女の歌が、そしてその歌詞に共感するアナタの感覚もまた、実は1,000年来の伝統を正統に引き継いだものだったと考えてみると、思ったほど日本人も昔から変わっていない、と思いませんか?

切ない恋にも心トキめく、そして素敵な恋を夢見て着飾る。それがニッポンのガールの生き方。それはこれからも、変わらないと思うのです。