「ガールズ雑誌考」シリーズ、今日も続けます!

まずは、ここまでのまとめ。

【赤文字と青文字】
1. 赤文字とは「コンサバ・モテ追求」。自民党政権下の2005~09年が第一次黄金期、自民党が復権しアベノミクスが始動した2013年から勢力を回復。
2. 赤文字は整った顔の美人が多く「アイコン主義」。特に山田優、蛯原友里がモテ子のアイコンとされた。
3. 青文字は「個性派カジュアル・非モテ」。民主党政権下の2010~12年に勢いを増した。
4. 青文字はアイコン主義への反発から「自分らしさ」を前面に押し出し、読者モデル達の表現の場として機能した。ただし、結果的にきゃりーぱみゅぱみゅというアイコンに頼ることになる。

【赤文字とギャル】
5. 赤文字とギャルではビジュアルに明らかな違いがあるが、「モテを服に求める」という考え方は共通しており、互いに影響を与え合う関係にある。
6. 赤文字とギャルでは、考える「モテ」の内容に違いがある。
7. 特にギャルの特徴と考えられる「切ない恋」&「記念日」好きは、実は1,400年前から私達日本人に伝わる「古き良き日本の心」。

今回は、6. の「モテに対する考え方」に関して取り上げたいと思います。

赤文字雑誌におけるモテとは、運命的な出会いに期待し、本命のカレと長く愛し愛され、ゆくゆくは結婚を目指すということです。婚期が遅くなった今日では、この傾向は、系列のお姉さん版雑誌(AneCan、Oggi、CLASSY.)になるとより前面に出てきます。結婚後のライフプランに関しては、出版社により違いがあり、JJ・CLASSY.を出版する光文社は主婦向け「VERY」を出版してどちらかと言えば保守的。ただし、後年創刊された「STORY」で職場復帰をある程度意識するようにはなっています。一方、CanCam・Oggi・AneCanを出版する小学館はあまり「結婚」を前面に出さず、キャリア志向を比較的強く打ち出しています。他の2社には系列誌がありません。(厳密には、講談社「ViVi」には「GLAMOROUS」があったのですが…)

一方、ギャル誌ではモテをどのように受け止めているかというと、「何でもいいからファーストコンタクトで抱きたいと思わせる」ということ。肌見せ、日焼け具合、「デコった」小物とメイク、これらはすべて、全身全霊をかけたセクシーアピール。たとえ抱き合ったカレが、結果的に一度きりの相手であったとしても、問題ありません。(そりゃヤリ逃げされたら怒りますけどね。。。でも「まぁ、いいか!」なんて心の片隅では思っていたり。。。)
結婚に向けた、また結婚してからのライフプランを描かないので、このジャンルは「お姉さん版」が出ても商品の単価が上がるぐらいで、また「デコる」度合いが多少変わるだけで、内容はあまり変わらなかったりします。

古来の赤文字雑誌では、常に「本命カレとの結婚」が念頭にあり、非常にトラッドなお嬢様ライクなスタイルを提案してきましたが、1996年以降日本人全体の婚期が遅くなったことで、このあたりに変化が出てきます。どういうことかというと、赤文字読者世代にとって今のカレが必ずしも運命の人でなくてもよくなったのです。長く付き合いたいけれど、それに必ずしも固執はしない。ならば、従来のようにカッチリしたスタイルにとらわれる必要もない。こうして、2000年代半ばから、赤文字雑誌のモテ服は、ほどほどにセクシーさを出した、ギャル色を含んだ「お姉系」に転換します。
一方、日焼けと肌見せとデコで持ってきたギャル誌にも、「ヤマンバ」に象徴される2000年前後の度が過ぎた「黒ギャル」ブームの結果「チャラい」「ダーティな」イメージがついてしまい、同じく2000年代半ば以降は「ガチ黒ギャル」からよりクリーンでクールなイメージを求める方向にシフトしました。海外芸能人、特にハリウッド&LAセレブのスナップをお手本にする傾向も強まりました。

「JJ」は系列のギャル誌「BIS」を統合して休刊する形でギャル色を取り入れました。「ViVi」では、岩堀せり、佐田真由美、長谷川潤などハーフモデルの勢力伸長も手伝い、他誌と比べてギャル色が強まりました。「クールな大人ギャル」を提案したお姉さん版「GLAMOROUS」もこの時期に創刊。この時期に発売された「PINKY」もまた、鈴木えみの小悪魔イメージから、また「non-no」との違いを出す意味でも、ギャル色の強いコーディネートを提案していました。「AneCan」の創刊も、こうした経緯から、「Oggi」とは違う「CanCamのお姉さん版」を望む声に応えたものでした。

この時期には、これらの雑誌の誌面を飾るモデル達がテレビのワイドショー番組を席巻しました。国民のテレビ不信を一気に加速させたことで知られる高岡蒼甫のtwitterなど影も形もなかったこの頃、テレビは国民のエンターテイメントの中心として不動の地位を占め、スクリーンに彼女達が姿を見せることは、雑誌のPRとして極めて有効に機能しました。

特にテレビでの露出が多かったのはこのあたりの人達。所属誌はいずれも当時。
・CanCam - 山田優、蛯原友里、押切もえ、西山茉希、徳澤直子
・ViVi - 佐田真由美、マリエ、藤井リナ、長谷川潤
・Seventeen - 大政絢、水沢エレナ、桐谷美玲
・PINKY - 鈴木えみ、木下優樹菜、佐々木希
・Popteen - 益若つばさ、小森純、ゴリエ(ガレッジセールのゴリ)
・BLENDA - 里田まい
・JJ - 神戸蘭子
・Ray - 香里奈

CanCam単独で5人もの「売れっ子」を出していることが、当時の同誌の勢いを物語っています。が、媒体は複数とはいえ、多彩なメディア露出を得意とする集英社も負けておりません。特にPINKYの3人は、立派に同誌のイメージリーダーとして、多彩な顔を見せました。

その他、2009年には麻生太郎総理(当時)が日本記者クラブでのインタビューでこれらの雑誌(香里奈、蛯原友里、浜崎あゆみが表紙のもの)を手に取り、「世界を席巻するクールジャパンのアイコン」と語っています。

赤文字黄金期は、テレビ番組という効果絶大な宣伝媒体と、コンサバにこだわらずモテの本質を重視して適度に取り入れたギャルテイストの2点に支えられた時代と言えます。もっとも、「JJ」「Ray」の2誌は鳴かず飛ばずの状況が続きましたが。

…というわけで、長くなりましたが、まとめ。

【赤文字とギャル、それぞれの「モテ」】
8. 赤文字系は本命カレとの結婚を目指したコンサバ主義
9. ギャル系は一度きりの関係でもいいから「抱かせる」セクシー主義
10. 婚期が遅くなると、赤文字系もギャル色を取り入れた
11. テレビ番組で盛んに宣伝
12. クールジャパンのアイコン

どうやら書きすぎた模様。「クールジャパンのアイコン」というキーワードも出てきたところですので、そろそろ次回は7. の「ギャル誌にみられる古き良き日本の心」に関して取り上げることになります。