11月7日(土)東京経済大学創立120周年記念事業の一環として、講演会「東京経済大学図書館の歴史と未来」がzoomウェビナーを利用して行われた。
このイベントは図書館が主催するもので、本学ホームページから事前予約を行い、学生だけではなく本学卒業生、在校生父母、一般の方と幅広い層の方が視聴していた。
橋谷弘名誉教授の進行のもと、はじめに本学で「日本史a/b」や「歴史で知る東京経済大学」などを教える戸邉秀明教授による東京経済大学図書館のこれまでの歩みについての話があった。
本学の前身である大倉高等商業学校が国分寺市に校舎を移す前、赤坂葵町に位置していた時の図書館は耐火建築であったという。
そのため、関東大震災に被災した際も被害を免れることができ、図書館は復興をしていく東京経済大学のシンボル的な存在であったのではないかと戸邉教授は推測する。
その後1927年、図書館としてさらなる充実を図るために、当初の図書館は書庫となり、新たに「自修館」が竣工された。
自修館は3階建ての鉄筋コンクリート製で、当時の学生たちは気温の変化に悩まされたという。
また、自修館の1階は食堂・売店となっており、このことに対して大倉高商新聞9号には「カツレツの香の中に『英雄待望論』よまる」との記載がされていた。
そして戦争が終わると、校舎は国分寺市へと移された。
空襲で多くの本が焼失したこと、財閥が解体されたことなどが影響し一時は厳しい状況にあったものの、卒業生や父母の支援もあり1952年に「堀図書館」、1968年に「鬼頭設計図書館」(現大倉喜八郎 進一層館)が竣工され、2014年に現在の図書館が開館した。
この話の最後に、戸邉教授は大学図書館に求められる役割は激変していると語った。
単にサービスを提供するだけではなく、変化に対応しながら学業を支える教養を養う場としての役割を果たし続けることが重要だという。
現在の図書館にPCスペースやグループ学習室が設けられているのは、その一環といえるだろう。
次に話があったのは本学経済学部卒業生であり元専修大学教授の新井勝紘氏による、有名な私擬憲法の1つである五日市憲法の発見についてだ。
五日市憲法は1968年、本学の色川ゼミナールの学生たちが現在の東京都あきる野市にある深沢邸の蔵を調査した際に発見された。
新井氏は当時色川ゼミナールに所属しており、五日市憲法の発見に大きく貢献している。
新井氏によると当時の色川ゼミナールは「色ゼミ」と呼ばれ、周りからは異色のゼミであるという印象を持たれていたという。
新井氏によると色川ゼミナールに所属すると必読書として50冊以上の本の題名が書かれた紙が渡され、それを読むために幾度となく図書館を訪れたそうだ。
この年の色川ゼミナールの学生たちは、1968年が明治100年の年であることから「明治百年祭」を問われた。
この色川ゼミナールの研究活動の一つとして、深沢邸の蔵の調査が行われた。
1968年8月27日は新井氏にとっての原点の日といってもいいそうで、その調査の日の写真を交えながら貴重な話を聞くことができた。
新井氏は薄暗い蔵の中で初めて五日市憲法を見たという。
調査後は、卒業論文のテーマを色川教授の意向で急遽、五日市憲法に変更し、その卒業論文がそのまま本「民衆憲法の創造」に掲載された。
新井氏は最後に「学生時代に通い詰めた図書館があったからこそ、五日市憲法への考えが深まった」と述べた。
続いて話があったのは、名誉教授村上勝彦氏による本学蔵書の和書コレクションについてだ。
本学には貴重な和書、洋書、朝鮮語書、錦絵などが数多く収蔵されている。
その多くは、三橋猛雄、桜井義之、四方博という3人によって蒐集されたものであるそうだ。
三橋氏の蒐集品は主に明治時代前期の政治や経済、民衆の思想が分かる書物などであり、桜井氏の蒐集品は近代日本と朝鮮関係を主とする文献や地図などであるという。
特に桜井氏は他にも錦絵約130種を蒐集している。
講演の中では、壬午事変後の日本と朝鮮が交渉している様子を清国が望遠鏡越しに見ているという変わった構図の錦絵が紹介されていた。
そして、四方氏は桜井氏と同じく朝鮮との関係が分かる資料を数多く蒐集しており、中でも珍しい資料として、京都で通信使をもてなした際の食事の献立表である「京都旅館御食事御献立帖」が挙げられる。
四方氏はこれを購入する際に古書店から送られてきた袋も保管しており、いかに貴重な資料として扱っていたのかが分かる。
最後に図書館館長の米山高生教授から
「私たちは過去の人類の英知の上に立っており、読書は過去の人々と対話を可能とする。そして、現在の優れた図書を所蔵して未来につないでいく役割が図書館にはある」「図書館予算は削減されやすいものであるが、大学らしい大学を繋げていくためには、この無用の用も重く見ていかなければならない」
という話があった。
時代が変わろうとも、図書館の建物が変わろうとも、そこには必ず学ぶ学生の姿がある。
対面授業でキャンパスに来た際には、図書館に寄ってみてはいかがだろうか。
オンライン授業からでは学ぶことのできない何かが見つかるかもしれない。
なお、錦絵は東京経済大学図書館デジタルアーカイブ『朝鮮関係錦絵コレクション』
https://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000719tkudb
から閲覧することが出来る。
貴重な資料を鮮明な画像で見ることが可能となっているので、ぜひ見て欲しい。