2020年12月19日(土)東京経済大学創立120周年記念シンポジウムの特別セッションとして「コロナ危機で加速する産業のデジタル化」というテーマでシンポジウムが開催された。
シンポジウム前半、司会を務めた本学経済学部の周牧之教授、パネリストを務めたTBSホールディングス取締役会長の武田信二氏、ミライト・ホールディングス取締役相談役、NTTドコモ元代表取締役副社長の鈴木正俊氏らによってデジタル化によって普及してきた「NETFLIX」や「AmazonPrimeVideo」といったOTTなどについて議論が行われた。
武田氏、鈴木氏はそれぞれテレビ業界、通信業界から見たOTTについて意見を交わした。
シンポジウム前半は1月6日投稿の記事に記載されいているので、そちらをご覧いただきたい。
なお本記事では、制作コストの問題と、急速にOTTが普及する中で日本のメディア企業がどこへと向かっているかを説明する。
まず、制作コストのもととなる広告費について周教授から説明があった。
去年の広告費はYouTubeが地上波テレビを上回ったという。
また、若い世代はテレビよりもインターネットの利用時間の方が長く、コロナ禍の自粛期間中にこの差はより開いた。
周教授は、YouTubeは膨大な動画が投稿され、もはやエンタメの集積ではなく知の集積へと変化していると語った上で、YouTubeがコンテンツ制作を大きく刺激するし始めているのではないかと指摘した。
緊急事態宣言中テレビの視聴率は上がったがそれはあくまで一時的なものに過ぎなかったそうだ。
小学生のなりたい職業ランキングにYouTuberが入っていることはコンテンツ制作の場としてYouTubeが認められてきていることのあらわれであろう。
武田氏はYouTubeがテレビの大きな競合になってきていることを語った。
一方で、中には芸人YouTuberを支えるテレビマンもいるという。
また、テレビ局が公式のYouTubeアカウントを利用し、一部ドラマの見逃し配信をするなどのプロモーション活動を行っていることもある。
YouTubeなどのインターネットを単なる競合相手として捉えるのではなく、インターネットとどう共存していくかがテレビ業界の今後の鍵になるといえるのかもしれない。
鈴木氏はデジタル化が進むにつれてテレビ画面、スマートフォンの画面、パソコンの画面に差がなくなり、1つになってきていると指摘した。
以前まで長時間の芸術作品はテレビ画面で、短時間の素人が作った動画はYouTubeで見るというのが通常であった。
しかし、現在はどうだろうか。
インターネット上で映画などの芸術作品を見ることが可能となり、またYouTuberが職業として成り立つようにYouTube上で質の高いコンテンツを視聴することが可能となった。
テレビがインターネットの利点をどう取り込むかが、テレビの持つ制作力をさらに向上させ価値のあるものとすることに繋がると語った。
次に周教授は、OTTをはじめとしたメディアの主体には資本力と言語圏に注目するべきであるとした上で、日本のメディア、OTTがどのように構築されていくべきかという質問を投げかけた。
資本力に関して、鈴木氏は、YouTubeやAmazonPrimeVideoなどはインターネット検索エンジンや物流などを主な事業とした複合的企業であり、これらの企業と日本の企業を比べることには無理があるという。
また言語圏に関しては武田氏が、TBSグループがAmazonPrimeVideoから依頼を受けて制作した時代劇について説明をしていた。
TBSグループの制作した作品は完成するとすぐにAmazonPrimeVideo本社に送られ多言語化された。
武田氏、鈴木氏共にグローバル化が進む現代ではコンテンツ制作において言語圏というものは特に問題となることはないとしている。
最後に周教授はパネリスト2人の意見を踏まえ言語圏が問題とならない現代では文化を意識したコンテンツ制作が重要になってくるのではないかと提案をしシンポジウムは幕を閉じた。
若い世代がテレビよりインターネットを利用している時間が長いという話やテレビ、スマートフォン、パソコンの画面が一つになってきているという話は特に学生たちには納得できるものなのではないだろうか。
世界的にヒットをするほとんどの映画は海外が制作しているといってもいいだろう。
しかし、世界的に「バズる」動画というのもの中には日本人が制作したものもいくつかあるように思う。
そうした動画の制作者を日本のOTTをはじめとしたメディアに取り込みコンテンツ制作者として成長させ、今後日本がアジア文化圏のコンテンツ制作の中心となることに期待していきたいと思う。