特別償却と税効果会計

 

租税特別措置法第52条の2 (特別償却不足がある場合の償却限度額の計算の特例)第1項は、

 

法人の有する減価償却資産で各特別償却に関する規定の適用を受けたものにつき当 該事業年度において、第2項で規定する特別償却不足がある場合には、

 

当該資産に係る当該事業年度の償却限度額は、法人税法第31条の償却費の計算の規定にかかわらず、

 

当該資産の普通償却限度額として措置法施行令第30条(特別償却不足がある場合の償却限度額の計算の特例)で定める金額に当該資産に係る特別償却不足額を加算した金額とする旨規定しています。

 

次に、特別償却には、直接償却する方式とは別に準備金方式による特別償却が認められています。

 

租税特別措置法第52条の3 (準備金方式による特別償却)第1項は、法人で前条第1項に規定する「特別償却に関する規定」の適用を受けることができるのものが、

 

その適用を受けようとする事業年度において、特別償却に関する規定の適用を受けることに代えて、

各特別償却対象資産別に各特別償却に関する規定に規定する特別償却限度額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき

(当該事業年度の決算の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたときを含む。)は、

 

その積み立てた金額は、当該事業年度の所得の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。

 

法人税法第2条第25号は、損金経理とは、法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう旨規定していることから、

 

「当該事業年度の決算の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたとき」は、

純粋な意味での損金経理ではありませんが、同額を決算書上でその意思を表し、申告書別表で減算した場合も含むとしています。

 

第2項も同様です。

第2項は、第1項の規定により損金の額に算入された金額が同項の特別償却限度額に満たない場合において、

 

法人が、前項の規定の適用を受けた事業年度(積立適用後年度)において、各特別償却対象資産別にその満たない金額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき(剰余金の処分を含む。)は、

 

その積み立てた金額は、当該積立適用後年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。

 

 

【税効果会計】

会社計算規則第2条第3項第25号は、

税効果会計とは、企業会計における資産及び負債 の金額と法人税等の計算の結果算定されたこれらの金額との間に差異がある場合、

 

その差異に係る税負担の金額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益の金額と法人税等の金額を合理的に対応させるための会計処理をいう旨定めています。

 

貸借対照表上の勘定科目は、短期繰延税金資産、短期繰延税金負債、長期繰延税金資産、 長期繰延税金負債を使用し、短期、長期ごとに資産と負債を相殺して表示しています。

 

これらを集約して法人税等調整額を法人税等の後に記載することにより当期利益を調整することになります。

 

そして、特別償却準備金を利益処分で経理する場合、

当該特別償却準備金として計上する資産に係る特別償却費に係る税額だけ会計上の利益に対する税額よりも低くなるので、

 

これを税額の後払いとして繰延税金負債として表示することとなります。

 

そうすると、税務上の特別償却限度額の金額(つまり、損金経理として損金の額に算入できる金額)は、

 

特別償却準備金として繰延利益剰余金を処分した金額と繰延税金負債として法人税等調整額を処理した金額の合計額になります。

(つまり、繰延税金負債として処理した金額は条文による「損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき(当該事業年度の決算の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたときを含む。)」として損金経理していないこととなります。)

 

したがって、税効果会計を適用する場合には、剰余金の処分による特別償却準備金の積立金額は、税効果相当額を控除した純額になります。

 

つまり、損金経理した金額が税効果相当額だけ少なくなっていることから、損金の額に算入できる金額も少なくなると考えられます。

 

しかしながら、この場合でも確定申告書に税効果相当額との合計額を特別償却準備金と して積み立てたものとして取り扱うことは認められるものと考えられますが、皆さんはいかに考えますか。