法人の罪

 

犯罪とは、「構成要件に該当し、違法で、有責な行為」といわれています。

行政罰でも同様に考えます。

 

つまり、課税要件に該当する申告(収益を計上しなかったこ とや損金不算入であるのに算入したなど)をし、それに対して責任が問われるべきであるとするものです。

 

これに対して故意が必要かすると、違法な「行為」とあるので故意が必要です。行為には故意が必要と考えられています。(目的的行為論)

 

また、この「行為」には、「する行為」のほか、行為を「しない行為」を含み、無申告を含みます。積極的に「しなかったときには違法となると規定している場合」の課税要件だけでなく、しなければならない場合にしなかったときを含むということです。

 

したがって、課税要件に該当する(しなければいけないのにしていないこと)ことを認識していることが必要です。(うっかりミスでは査察《ほ脱罪》にならない。)

 

なお、違法か否かは課税要件として掲げられているので、それに反すること

つまり課税要件に該当する場合には、違法が認められます。

 

違法性が阻却されるのは、宥恕規定(例えば:法人税法69 条(外国税額の控除)第15項に規定する「税務署長において特別の事情があると認める場合を除く」)がある場合です。

 

最後に責任です。責任がないところに犯罪なし。

 

つまり、責任がないところに課税なしとなります。ただし、申告書の提出はしているのですから、そこに責任が認められ、また、課税要件の不知を理由とすることもできません。

 

そうすると、個々の取引について、申告をしなければならない者(法人は手足がないので、代表者)に責任の所在を求めることになります。

 

ほ脱罪であれば、代表者が刑務所に入ることになります。

 

しかしながら、代表者がその取引について知らない場合にまで、刑務所に入る必要はあるのかという問題があります。(さらに、追加税金を払う必要があるのかも含めて)

 

法人税法では、主語は「内国法人は」となっています。ですから、追加納付、罰金を支払うのは法人です。しかし、刑務所に入ることはできません。

ですから、刑務所に入るのは、代表者で、お金を払うのは代表者と法人となります。

 

法人税法第159条(罰則)第1項は、法人の代表者でその違反行為をした者は(これが主語)、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し又はこれを併科する旨規定しています。この罰金は、代表者に対して課され、第163条で法人にも罰金が課されます。これを両罰規定といいます。

 

なお、第159条で、偽りその他不正の行為を行う中に、「代表者、代理人、使用人その他 の従業員」となっていますが、これは、会社の肩書きでは従業員であるが実質的な経営者である場合への対応ですから純粋な従業員は含みません。

 

したがって、刑務所に入るのは不正を行った単なる従業員は含まず、形式的又は実質的な経営者と共謀した税理士ということになります。

 

重加算税の賦課と不正行為とは異なりますので、従業員が行った仮装隠蔽行為は、その結果、税額が少なくなっている場合は、重加算税の対象となります。

問題は、不正行為行う者に純粋な従業員が含まれるかということです。

 

単なる従業員が会社のために会社からの指示もなく勝手に不正な行為により税額を免れていた場合(そんな場合があった場合)、7年遡ることとなるかということです。

 

つまり、重加算税が課税されるが、3年が限度で不正として7年遡れるのかということです。

 

通常、従業員が行うのは背任や横領である。会社が知らない間に不正を行って(勝手に売掛金を回収していたり、在庫を売却していたり)いた場合、所得に影響する場合は、否認できるのかということです。

 

従業員の横領等の場合は、会社は認識していないので、資産ベースの犯罪を想定しています。(架空外注費の計上と不正なバックの場合は計上している。)

つまり、財産を毀損している状態です。

 

そのため、法人税法上は、当該資産損失の計上と当該従業員からの返済予定の未計上となりますから、損失額を減算し、同時に当該従業員に対する未収入金となります。(架空外注費の場合は、損害賠償金としての未収入金の計上のみ)

 

ただし、法人税基本通達2-1-43 (損害賠償金等の帰属の時期)から、実際に支払いの受けた日に益金の額に算入することできます。

 

したがって、代表者以外の者の不正行為の場合は、代表者との関係、代表者が認識していたか又はし得たか等、代表者に責任があることを示す必要があります。そうでないと、不正行為であるとまでは代表者を追及できません。

 

さらに、横領等となれば否認することも困難となります。