DES (デット•エクイティ•スワップ)

 

 DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、企業債務(デット)を企業の資本(エクイティ)に交換することをいいます。

 

 多くの場合、経営不振に陥っているが再建の見込みのある企業に対して、金融機関が保有する貸付金を株式に振り替えることによって、当該企業の財務内容を改善して再建を図る目的で利用されており、これによって、債務超過が解消されることとなります。

 

 DESの方法として、貸付金や社債などの債権を債務者である当該会社に現物出資し、

株式の割当てを受け、債券を混同によって消滅させる方法(現物出資型)と、

 

 いったん現金を払い込んで株式の割当てを受け、会社がその現金で債権者に貸付金等の返済をする方法(現金払込型)があります。

 

 

 問題は、現物出資でDESを行う場合の現物債権の価格をどのように評価するのかということです。

 

 つまり、債権の価額を債権の額面券面額説とするのか、

債権の時価評価額説とするのかです。

 

 平成12年の判決で東京地裁が券面額説を採用することを明らかにして以降、券面額説が定着しました。

 

 

 しかしながら、会社法の改正を受けた平成18年の税制改正により、

DESに対して評価額説を採用し、債務者に発生する債務消滅益に対して課税することとなりました。

 

 なお、適格現物出資や現金払込型でDESを行った場合は、券面額説と同様に債務消滅益は発生しません。

 

 

 

(法令)

 会社法445条第1項は、株式会社の資本金の額は、

この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする旨規定しています。

つまり、時価ってことです。

 

 

 法人税法第2条第16号は、資本金等の額とは、法人が株主等(13号)から出資を受けた金額として法人税法施行令第8条(資本金等の額)で定める金額をいう旨規定しています。

 

 法人税法施行令第8条は、法人税法第2条第16号に規定する政令で定める金額は、

同号に規定する法人の資本金の額と、当該事業年度の各事業年度の株式ほかの金額から準備金ほかの金額を減算した金額との合計額とする旨規定し、

 

 株式の金額は、株式の発行又は自己株式の譲渡をした場合に払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額その他の対価の額に相当する金額からその発行により増加した資本金の額を減算した金額とする旨規定しています。

結局、これも時価ってことです。

 

 

 

 基本通達2-3-14 (債権の現物出資により取得した株式の取得価額)は、子会社等に対して債権を有する法人が、合理的な再建計画等の定めるところにより、当該債権を現物出資 (適格現物出資を除く。)することにより株式を取得した場合には、

 

 その取得した株式の取 得価額は令第119条第1項第2号(有価証券の取得価額)の規定に基づき、当該取得の時における給付をした当該債権の価額となることに留意する旨定めている。

結局、時価ってことです。

 

 

法人税法施行令第119条第1項第2号は、内国法人が有価証券の取得をした場合には、

 

  その取得価額は、金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付により取得した有価証券(適格現 物出資を除く。)の場合は、

 

 その払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価 額の合計額とする旨規定している。

結局、これも時価ってことです。

 

 

基本通達9-1-12 (増資払込後における株式の評価損)は、株式を有している法人が当該株式の発行法人の増資に係る新株を引き受けて払い込みをした場合には、

 

 仮に当該発行法人が増資の直前において債務超過の状態にあり、かつ、その増資後においてなお債務超過の状態が解消していないとしても、

 

 その増資後における当該発行法人の株式については令第68条第1項第2号口(上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる事実)に掲げる事実はないものとし、

 

 ただし書きでその増資から相当の期間を経過した後に改めて当該事実が生じたと認められる場合にはこの限りでない旨定めています。

結局、現金払込型(いわゆる擬似DES)であっても、貸倒損失の計上はできないこととなります。

 

 

 

法人税法施行令第68条第1項第2号ロは、法人税法第33条第2項の特定に事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入に規定する政令で定める事実は、

 

 物損等の事実(売買目的 有価証券以外の有価証券について、

 

 その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化 したため、その価額が著しく低下したこと)及び法的整理の事実とする旨規定しています。

 

 結局、税務上は、評価額説を採用し、時価で交換することとなります。

 

 通常は、債務状況が悪いことから額面よりも低くなるので、資本等取引だけど債務消滅益が発生することとなります。

 

 そのため、当該債務消滅益が税務上の繰越欠損金額よりも大きくなるときは、課税となるということです。ありゃりゃ。