青色申告の取り消しと繰越欠損金の当期控除による認容

(法令)

 法人税法第57条(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)第1項は、内国法人の各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、

 

 当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。

 

 同条第10項は、第1項の規定は、同項の内国法人が欠損金額の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、

かつ、

その後において連続して確定申告書を提出している場合であって

欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り、適用する旨規定しています。

(青色申告書ときていされいない)

 

 法人税法第127条(青色申告の承認の取消し)第1項は、第121条(青色申告)の承認を受けた内国法人につき、

 

 帳簿書類の保存がされていないなど次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、

 

 納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡って、

 その承認を取り消すことができる旨、また、

 この場合において、その取消しがあったときは、

 当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税にかかるものを除く。)は、

 青色申告書以外の申告書とみなす旨規定しています。

 

 

(説明)

 法人税法第57条第1項は、所得が生じる事業年度において、

 繰り越された欠損金を当該事業年度において、

 「欠損金の当期控除額」として、損金の額に算入することができる規定ですが、

 

 ここでは、青色申告書であることを条件としていません。

 つまり、繰り越された欠損金があれば、白色申告、

 つまり、法人税法第127条で青色申告を取り消された事業年度でも損金の額に算入することができることとなります。

 

 法人税法第127条は、承認の取消しにより、取り消した事業年度以後の事業年度の申告は青色申告ではない旨を規定しています。

 

 そして、法人税法第57条第10項は、欠損金の当期控除額として損金の額に算入するためには、欠損金額が生じた事業年度には、

 

 青色申告書の提出が要件となっており、

かつ、

 その後において連続して確定申告書を提出していることが要件であって、ここでは、青色申告書であることを要件としていません。

 

 

 そうすると、国税調査によって3事業年度前の青色申告の承認を取り消された事案でも、

 

 4事業年度前が欠損であった場合(国税調査の対象とされず青色申告の承認が取り消されていない場合)、

 

 3事業年度前の申告について青色申告の承認が取り消されて白色申告となっても、

 

 4事業年度前は取り消されずに青色申告なので、3事業年度前の事業年度で、

 

 この4事業年度前の事業年度から繰り越された欠損金を控除することができることとなります

 

 

(検討)

 現在の法人税法は、事業年度単位の課税方式をとっているので、税法上の前事業年度の黒字の所得も、赤字の欠損も、翌事業年度の課税所得には、影響させないというのが原則です。

(つまり、黒字のときだけ課税し、赤字のときは課税しないという意味で、法人税法第22条の第1項がそのように規定していると考えられます。)

 

 前事業年度の黒字の所得を翌事業年度である当事業年度の赤字の欠損と通算して若干の黒字が残るとして課税すれば、

 

 前事業年度にも課税されているので、二重課税となります。

 

 また、逆に、前事業年度の赤字の欠損を翌事業年度である当事業年度の黒字の所得と通算して、少し黒字が残るとしてその少なくなった黒字のみに課税するのは、

 

 欠損の2年度にわたる計上になると考えられます。(「法人税法詳説」吉牟田勲p305)という考えのようです。

 

 法人税法は、前事業年度からの繰越欠損金は、法第22条の別段の定めとして、法第57条で損金の額に算入することを認めています。

 

 つまり、原則は、繰越欠損金の当期控除は認めないが、担税力等を考慮して、別段の定めとして認めることとしています。

 

 しかしながら繰越欠損金であれば、無条件に認められるというわけではなく、

控除の対象となる繰越欠損金は、

繰り越された(受け取った)事業年度では、あえて青色申告を要件としていないが、

欠損金額が生じた事業年度から翌事業年度に送り出すときに青色申告の要件が課されているということである。