偶然がちょっとしたドラマになった。
ちょっと長いけど、どうぞ。
前回、吉田うどんの「月見里」に行ったとき、
隣の看板を見てびっくりした。
「ときわ食堂」
？？？
あの巣鴨の「ときわ食堂」？
どゆこと？
う～む、これは．．．
翌日。
見た目はなんとなく似てるような、
そうでもないような．．．
メニューを見ると、アジフライを推してる。
「巣鴨もアジフライは看板メニューだな。」
外から中を覗いてみる。
見るからに大衆食堂。
おひとりさんから老夫婦までいる。
「よし、行ってみるか。」
暖簾をくぐる。
なんか地元臭が強い。
結構なアウェー感。
何にするかと
壁に張られたメニューを見る．．．
．．．って、いっぱいあリすぎ。
なんか、あれやこれやとある。
ありすぎて、何にしたらよいか迷う。
焦る。
ただでさえ、アウェー感。
時間のプレッシャーの中で
あるメニューに目がいく。
「それ、知らんな。」
よし、それだ！
料理を待つ間、
店内を観察。
色紙があちこちにある。
ブラマヨに有吉も来てるな。
向こうにはモヤさまの色紙もあった。
「これで、あと高田純次が来たら、お散歩コンプリートじゃん。」
しかし、このアウェー感。
「巣鴨のときわ食堂と、
どのようなご関係が．．．？」
などと聞ける雰囲気ではない。
でも気になる。
聞きたい。
じっとチャンスを待つ。
“イカフライ玉子煮定食”￥850
いわゆるカツ煮の
イカフライバージョン。
初めて食うが、
味は何となく想像がつく。
バグッ！
やっぱり、思った通りの味だ。
でも錯覚か、イカじゃなく
カツ煮食ってる気がする。
「不思議だ！」
ふと、隣のテーブルで、
ひとり飯食ってる姐さんのロースの生姜焼きが目に入る。
「むむっ、それ美味そう。」
「そっちにするべきだったか。」
完食間際での後悔。
もうお腹いっぱい。
どうする、俺？
翌日．．．
“豚肉ロース生姜焼き定食”￥930
これですよ、
隣で姐さんが昨日、
一人うまそうに食ってたやつ。
いいね♥
ステーキタイプの生姜焼きにハズレはない。
うん、姐さん、美味いよ。
さて、そうこうするうちに
オイラがラストの客だったようで、
最後一人になる。
チャンス！
支払いのときに、
思い切って聞いてみる。
「あのぅ、
巣鴨のときわ食堂さんと
何かご関係が．．．？」
「暖簾分けです。」
やっぱし！！
「それじゃ、
アジフライが美味しいのでしょうね。」
って言ったら、お母さんがにっこりして、
「巣鴨に行ってるの?」
ってな感じで、
もう閉店なのに話が弾んだ。
アウェー卒業！
もはや、ここは
ホームグラウンド！！
大山って下町感あって、いいなここ。
大きな商店街のある町。
なんか憧れやわ。
そして常連への道。
「おばちゃんに顔を覚えてもらうこと」
．．．ならば
通う！
”牛肉コロッケ定食”￥760
「おおぅ、このコロッケ、
やたらと美味いな。」
さらに通う！
”野菜にんにく味噌炒め”￥800
「くうぅ、パンチがあって美味いぜ！」
コロッケ美味かったから単品オーダー￥510
まだまだ通う！
”ミックスフライ定食”￥930
エビフライ、カニクリームコロッケ、
アジフライ。
揚げ物は全般的に美味い。
揚げ方が上手いよね。
もうね、
めんどくさくてアップしきれないくらい
短期間に集中的に通った。
その甲斐あって、
おばちゃんに顔を覚えてもらえた。
．．．そんなある日。
またいつものように店で飯食っていると、
これが目に入った。
えっ？
．．．
．．．
．．．
口の中に食い物が入ったまま、
そのまま10秒くらい、時間が止まる。
「どゆこと．．．？」
箸を持った手が、心なしか震えてる。
もうそのあとは
何を食ったのか味を覚えていない。
最後、支払するときに恐るおそる聞いてみた。
聞いても無駄なのに。
やっと常連になった
と思ったら、
あと数日でお別れ。
気になる子と
やっと仲良くなれそうだと思ったら、
翌月に転校．．．みたいな。
今はこんなご時世だから
なんかいろいろあるんだろうな。
とはいえね．．．
なんか．．．
どうすんの？
まだメニューコンプリートしてないよ。
どうすんの．．．？
おばちゃんが
食材の仕入れ等の関係で、
最終日までやるかどうかわからない
と言ってた。
いつ店の灯が消えるか分かんないけど、
行けるだけ行こう。
．．．後悔したくないから。
ラストサムライ．．．もとい、
”ラスト常連”
またの名を
”想い出侍”
想い出ちょっとしかないけど、
行くですよ。
行ける日はみんな行った。
そして．．．
6月30日。
在りし日のときわ食堂
今、
夫婦で長年経営していた店が、
次々に閉店している。
昭和が静かに
その灯を消しつつある。
ときわ食堂
東京都板橋区大山東町38-4
03-3964-0953