イギリスにもバブル時代があった。

 

90年代前半から後半にかけて、

経済だけでなくスポーツ、文化すべてが輝いていた。

 

それは

クール・ブリタニア

と呼ばれた。

 

それはひょんなことでブレイクする。

 

 

1992年

EUの域内通貨統合プロセス(ERM)の調整で

ヨーロッパ各国の通貨価値が実態と乖離し

いびつな状態になっていた。

 

 

そこに目を付けた投資家の

ジョージソロスが空売り攻撃をしかけ

イングランド銀行が打ち負かされてしまった。

 

これでERMからイギリスは離脱し、変動相場制に移行。

ポンド危機が巻き起こる。

(ポンドがユーロに参加していない理由のひとつね)

 

だが皮肉なことに、これが逆にイギリス経済の景気復活に向かう。

 

 

 

これに1890年代から始まっていた、ムーブメントと見事に合致。

栄光のバブル時代到来へ。

 

 

音楽では「ブリットポップ」と呼ばれ、大隆盛時代が巻き起こる。

 

 

そのきっかけとして挙げられるのが、

1989年11月にリリースされたこの曲。

 

ストーン・ローゼズ「Fools Gold」(全英8位)

このダークさが、何ともマンチェスターらしい。

 

The Stone Roses (20th Anniversary Legacy Edition)

 

 

 

 

少し話を戻る。

 

70年代後半から80年代初頭にかけて、

世界はレコード不況になっていた。

 

それがデュラン・デュランやカルチャー・クラブなどの

第二次ブリティッシュ・インベイジョンのブーム。

マイケル・ジャクソンやマドンナ、プリンスの登場によって

音楽産業が活況になり、ビッグビジネスになっていく。

 

イギリス勢も、やあアメリカだ、世界だ!と

ガンガン攻勢をかけた。

 

その結果、

音楽からイギリスらしさが失われ、

イギリス人たちの不満も募る。

音楽的にも薄っぺらで、つまらない音楽が氾濫し始めた。

 

そんななか、じわじわと自分たちの音楽を求める人たちが台頭し、

ついに反乱が起こり始める。

 

 

イギリスらしさ

 

いわゆる

英国文化礼賛主義時代。

 

この特徴は、

やたらとユニオンジャックがデザインされている事。

 

 

世界に媚びず

イギリス人の

イギリス人による

イギリス人のための音楽が活況になる。

 

 

 

1993年2月 

スウェード「Animal Nitrate」(全英7位)

 

Suede (Remastered) [Clean]

 

 

 

クールブリタニアのピークは1994年から。

 

サッカーでは当時、マンチェスター・ユナイテッドが全盛時代を迎えており、

1995年にデヴィッド・ベッカムがプレミアデビューを飾る。

 

TV・映画では「Mr. Bean」が90年からブームを起こし、

「Four Weddings and a Funeral」が世界中で大ヒットし、

主演のヒュー・グラントが時の人になった。

 

そして1996年にクールブリタニアを象徴する

「Trainsopotting」が大ヒット。

主演はオビ・ワンね。

当時の華やかなクール・ブリタニア時代の

裏側をリアルにえぐった。

クール・ブリタニアに興味のある人は必見!

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音楽では1994年4月にデビューしたこのバンドが旋風を巻き起こす。

 

オアシス「Live Forever」(全英10位)

 

オアシス 20周年記念デラックス・エディション

 

 

彼らと同じころに、このバンドも最高傑作を出した。

ブラー「Parklife」(全英10位)

 

Parklife

 

 

音楽的には1995年に最高潮を迎える。

 

 

パルプ「Common People」(全英2位)

90年代のイギリス音楽では、個人的にこれが一番好き。

 

 

 

音楽紙のNMEがオアシスとブラーを煽ることで、

2バンドの対立が一大エンターテイメントになる。

ついに1995年の8月

両者の同時シングル発売対決で対立がピークを迎える。

 

オアシス「ROll With It」(全英2位)

 

モーニング・グローリー デラックス・エディション

 

ブラー「Country House」(全英1位)

 

The Great Escape

 

 

発売翌週のNMEの現物がこれ!

 

この戦いはブラーが勝った。

 

 

 

スーパーグラス「Alright」(全英2位)

この曲、凄いヘヴィーローテーションでラジオからかかってた。

イギリス人が浮かれている感が良く出てる。

 

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1995年のピークを締めたのが、ビートルズのアンソロジー。

25年ぶりの新曲として発表された「Free As A Birl」(全英2位)

の発売日は超盛り上がってた。

 

Anthology 1

 

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そろそろ、クール・ブリタニアの終わりの話。

 

1997年に発売されたVanity Fairのイギリス特集

オアシスのリアムと結婚したばかりのパッツィ・ケンジットの表紙。

この時代を象徴する一枚。

この頃から、”クール・ブリタニア”と呼ばれ始めた。

 

 

 

そして1997年の5月

若きトニー・ブレアが率いる労働党が、

18年ぶりに政権奪取。

一気に変革や新時代のムードのピークを迎える。

 

この写真も当時を象徴する1枚として有名。

ブレアとオアシスのノエルが首相就任パーティで握手。

 

 

 

ところが、この3か月後

ある事件をきっかけに、

一気にクールブリタニアが終わりを迎える。

 

 

 

 

 

8月31日 ダイアナ妃 パリで交通事故死。

 

多くのイギリス人から聞いたから、間違いない。

これの衝撃がイギリス人に与えた影響は計り知れなく、

一気に酔いがさめた感じになったらしい。

 

 

そして、この時期にヒットしていた曲が、

その気分を助長した。

 

90年代のイギリス最高の1曲として挙げるメディアが多い。

 

ザ・バーブ「Bitter Sweet Symphony」(全英2位)

 

Urban Hymns

 

何とも退廃的で、物悲しくなる曲。

 

ひとつの時代の終わりにふさわしい1曲。

 

 

 

 

 

この狂乱時代の中で

ドラッグ中毒者が倍増し、

社会問題として顕在化。

 

1998年には

もはや

クール・ブリタニア

で浮かれるイギリス人は消えた。

 

 

 

日本のバブルもそうだったけど、終わるときはあっけない。

 

(おしまい)

 

 

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