トッド・ラングレンと聞いても
ほとんどの人は知らないですよね。
こんな曲をやってた人です。
トッド先生は何でもできます。
作詞、作曲
楽器も全部
一人多重録音の先駆けの人。
プロデュースも数多く。
一番成功したのはグランド・ファンク・レイルロードの
「We’re An American Band」で、
全米No.1ヒットにもなりました。
自身も70年代前半にヒット曲を出し、なおかつUtopiaなるバンドも作って、実験的な音楽もやってます。
一番のヒットは
「Hello It’s Me」(ビルボード5位)
音楽もポップなものから、ハードなもの、実験性の高いものまで、なんでもござれ。
デビューは1968年。
ナッズというバンドで、期待されたものの商業的な成功には至りませんでした。
イギリスの音楽雑誌MOJOが1995年に
「Greatest Album Ever Made」と銘打ち、
歴代のアルバムベスト100を発表しました。
このうちトッド先生のアルバムは2枚も選出。
「Something/Anything」 61位
「A Wizard, A True Star」 93位
ちなみに、
1位はビーチボーイズの「Pet Sounds」
このランクから、
イギリス人の嗜好性がよく分かります。
ランキングを詳しく知りたい人は、
下記サイトから見てみてください。
なかなか興味深い選出です。
「A Wizard, A True Star」
全曲、ひとりでやってます。
ドラムマシンやサンプリング機器のない1972年に自力で音を作り出しています。
ジョン・レノンがトッドのことを「天才だ!」と激賞したアルバムです。
おまけに、エアロスミスのスティーブン・タイラーの娘、
リブ・タイラー(アルマゲドンに出てた彼女です)の養父でもありました。
よく分かりませんが、親父の代わりに面倒を見ていたようです。
さて、このトッド先生
90年代の初めに
「インタラクティブ・ミュージック」
なるものを流行らせようと、
大野望を企てました。
どんなものかというと、
例えば1番の曲のAメロに2番の曲のサビをくっつけるとか、
1番と2番の曲の歌詞を入れ替えるとか、
1番の曲のボーカルだけ外して聴くとか。
これまでミュージシャンが作った完成品の曲を、我々が聴いていたのを、
ミュージシャンは音の素材だけ提供し、完成はユーザーに委ねる。
またはミュージシャンの完成品に対し、
それぞれユーザーが好きに作り変えて
音楽を楽しむことができるという事です。
それを助けるものとして、
フィリップスが開発した「CD-I」なる、見た目ゲーム機のような再生機がありました。
レコーディングスタジオにあるようなミキサーが、各自の手元にあるという感じです。
まだよく分かりませんね。
トッド先生は理解を深めるために、自らアルバムを発表しています。
オリジナルの曲を加工するとどうなるのか、
最終的には3枚のアルバムを発表してどれだけのパターンが作れるのか見せてくれています。
分かりやすい音源がYouTubeにないのですが、こんな感じです。
曲のイントロは、複数の曲のイントロをくっつけてひとつにしています。
Youtubeにアップした人が
「Worldwide Epiphany」という曲の1.0と1.1、1.2バージョンをくっつけたものです。
まだよくわかりませんね。
オリジナルバージョンと比較してみましょう。
※オリジナルに近いバージョン(ライブ)
※聴衆がドラムをたたいたり効果音を出したり、曲に参加しています。
この全員参加スタイルのライブは
渋谷のライブハウスでもやりました(私も行って参加しました。)
いじったバージョン
構成を入れ替えたり、
後ろの音を消したり、
他の曲を差し込んだり
12インチブームで流行った“リミックス”とは思想が違います。
まだよくわからない人には、
トッド先生が自らデモをしている映像。
少々長いですが、何のことかよくわかります。
しかし、
結論から言うと、
この試みは失敗に終わりました。
再生には専用機器が必要だったこと。
一般のユーザーはそこまでマニアではなかったこと。
さらに時代は1993年。
まだWindows3.1の頃で、スティーブジョブズがアップルを追い出される前。
NECの98シリーズが日本のシェアの8割くらい握っていたころ。
パソコンもMS-DOSが主流で、
16bitとか32bitとか読んでいた時代。
しかも世界はバブルがはじけて、
暗黒時代の真っ最中。
とてもじゃないけど、
「インタラクティブ・ミュージック」
にうつつを抜かしている場合じゃなかった。
そんな感じでもたもたしているうちに、
時代が変化し、退場を迫らられることに。
とどめだったのがソニーのプレイステーションの発売。
CD-Iは簡単に言うと、
パソコンとCD機が一体となったもの。
同じ思想であったプレイステーションが、
高度な演算処理機能を備え、
ゲームに特化したことで爆発的に広がります。
それで、ジエンド。
この革命がもし成功してたらと思うけど、
実は、すでに実現しているのです。
Youtubeにあがっているマッシュアップとか、
DJ達が今やっていることは、
まさにこのインタラクティブ革命と同じです。
“早すぎた”
これにつきます。
これがあの時に成功していたら、
今の音楽は、もっと面白いことになっていたかもしれないのに...
(おしまい)