去年の今頃

バナナラマのオリジナルの3人が再結成し

最初で最後のワールドツアーを行うとアナウンスされた。

(オリジナルメンバーでワールドツアーはしたことないらしい)

するとチケットを求める人たちで

バナナラマのサイトがクラッシュ。

 

秋から始まったツアーは

ソールドアウト続出。

 

そのツアーは今年の夏で終わる。

 

 

 

バナナラマは日本で

誤解されているアーティストだと思う。

なんせ

日本で全国区になったのが、

例の「Venus」のヒットから。

 

いかにもディスコなノリが

ポッと出のアイドルのようにみえる。

 

 

でも

彼女たちがデビューしたころから

知っている人たちは、3人が

“普通の女の子”

じゃないことを知っている。

 

 

 

バナナラマのデビューにはセックスピストルズが関わっている。

3人はデビューを目指し

様々なアーティストの

バックコーラスをやっていた。

 

しかし

なかなかチャンスがないまま、

時だけが流れていった。

そんな3人が住んでいたアパートの下の階に

ピストルズのメンバーが借りていたリハーサルスタジオがあった。

 

 

彼女たちはドラマーの

ポール・クックに無理やり頼んで

デモテープを作ってもらい、

インディーズデビューした。

 

それが目に留まり

メジャーレーベルとの契約につながった。

 

 

しかしその曲からして普通じゃない。

「Aie a Mwana」

という曲のカバーだったのだが、

歌詞がスワヒリ語。

 

 

3人はそのままスワヒリ語で歌った。

 

イギリス人の誰もスワヒリ語なんてわかるわけがないのに。

 

でも彼女たちは

そんなことなどお構いなし。

 

 

 

そんな

とんがった3人に目を付けたのが

マルコム・マクラーレン。

ピストルズの生みの親であり、

マネージャーだった男。

 

 

彼は彼女たちに

 

「あたしがあんたたちのマネージャーになって、売ってあげる。」

 

とセクシー路線の提案

とともに自分を売り込んできた。

 

しかし彼女たちは

自分たちの目指す方向と違うとして

その申し出を蹴った。

 

 

今風に例えるなら、

秋元康がマネージャーになって売ってやるぞとアプローチしたが

「あんたは嫌よ」

といって断るようなもの。

 

やり手のマルコムをマネージャーにしたら

きっと派手なメジャーデビューになっただろうに。

 

 

でも彼女たちにとって、

たとえピストルズの生みの親であっても

“体制側の人間”に見えたのかもしれない。

 

 

 

大物の申し出を断り

自らで運を切り開く道を選ぶ。

 

 

 

すると、

すぐに彼女たちに興味を示した男が現れた。

先週ブログを書いたテリーホールだった。

自分のグループの新曲のパートナーとして参加してもらい、その曲はヒットした(全英4位)

 

このヒットでバナナラマの存在が知れ渡り、

めでたくデビューアルバムの発売となった。

 

 

同時に、

アジアの果てからも

彼女たちに目を付けた奴らがいた。

 

日本の広告代理店だ。

 

 

ホンダのCMに起用され

日本でも

彼女たちの存在を知った奴らが追いかけた。

 

このCMソングは3人による作詞作曲である。

この3人、曲も書ける。

 

実際アルバムの半分以上は

彼女たちが関わっている。

 

 

このデビューアルバムからは

3曲の全英トップ10をたたき出し、

アルバムも全英7位と

好調なスタートをきった。

 

Deep Sea Skiving (Collector's Edition)

「Really Saying Something」では

ファン・ボーイ・スリーを逆にゲストに招き、全英5位とまたヒット。

 

 

この頃のバナナラマは、

やる気があるのかないのか

よくわからない“ゆるい感じ”でやっていて、

それが新鮮だった。

 

 

昨年のイギリスのテレビに

彼女たちが出演したときの様子。

 

ファッションの話になるが、

この頃はスタイリストもいなくて

全部自分たちでやらなければならなかったらしい。

 

 

 

 

それは映像からもわかる。

「Shy Boy」発表初期の映像。

 

まだ衣装も踊りも決まっておらず、

“適当”にやっている。

 

 

 

ところがしばらく経ち、

曲がヒットしたころの映像。

 

衣装も踊りも、どうやら決めたらしく、

それなりにやっている。

 

 

 

 

 

このあたりの素人っぽさというか、

ざっぱなところが

当時の彼女たちの魅力だった。

 

体制に迎合しない、

パンク魂が発揮されている。

 

 

このうち「Shy Boy」がビルボード83位と、

ちょいとアメリカに手がかかった。

これで、本格的にアメリカ攻略を目論む。

「Shy Boy」のPVはウルトラボックスのミッジ・ユーロが監督。

 

バナナラマには、なんだかんだと大物たちがこぞってサポートしていた。

 

 

 

次作ではシングル

「Cruel Summer」

がビルボード9位と

見事アメリカ進出成功。

 

Bananarama (Reis)

 

アルバム全体の歌詞も

社会的なテーマを取り上げたりと、

このあたりはかなり頭を使っている。

 

 

で、とどめが3作目。

 

例の

「Venus」

で見事ビルボード1位をゲット。

 

ちょうど時代を賑わせていた

ストック・エイトケン・ウォーターマン

をプロデューサーに起用して作らせた。

 

制作にあたり、彼女たちが

かなり細かく要求していたらしく、

プロデューサーも後日

「かなり大変だった」とこぼしている。

 

 

 

ところがこのアルバム

イギリスでは大コケした。

 

「Venus」も

世界中でナンバーワンになったが、

イギリスでは8位がやっと。

 

これまでのバナナラマらしさが失われ、

“売り”に走ったことに

昔からのファンがそっぽを向いた。

 

なんかわかる。

 

これまでのバナナラマは

どこか“ゆるゆる”ながらも、

反体制のパンクスの臭いがあった。

それが、

いきなり体制側に媚びる

ようなものを作るものだから、

昔からのファンが怒るのも無理はない。

 

 

でもやっぱり、

彼女たちはそんなことお構いなし。

我が道を行く。

 

 

それ以降の勢いの衰えを考えると、

その選択が良かったのかどうかわからない。

 

 

でも彼女たちは鉄の意志で活動を続ける。

(ただシボーンはユーリズミックスのデイブ・スチュワートと結婚・妊娠で脱退)

 

 

そう、彼女たちは解散していない。

ずっと続けること36年。

 

去年

イギリスでWoman Of The Yearを獲得した授賞式の一幕。

プレゼンターが3人を紹介する直前の言葉。

 

 

We “BLOODY” love them.

 

“Bloody”という言葉

イギリス人しか使わない言葉で

温厚を善とする英国人が

唯一感情をむき出しにするときに使う。

 

“チョー、好き!!!”

 

今の若い女性たちにとって

彼女たちの存在は

“自立して大成した女性”の象徴。

 

我が道を行き続ける姿に、

女性のIconとしてみているのかもね。

 

 

 

 

 

大ヒットに続く、次回作でのヒット曲

 

男に振られたハズが、

その男はこちらが振ったと噂を流されて

あたいは怒りMaxになっているという歌。

 

 

自分たちのチャレンジに

そっぽを向いた野郎どもへ、

パンチを繰り出すかのような歌。

 

 

 

 

彼女たちの鉄の意志はまだ錆びない。

 

バブル時代の姉さんたちは、

“強く、かっこよく、そして美しく”

今もツッパっている。

 

 

(おしまい)

 

The Greatest Hits Collection (Collector Edition)