しつこく、「いもや月間」の続行中。

我ながら、よくやるなと思ってしまう。

 

3月末の閉店を前に、

この“思い出侍”はあることに、

はたと気づいた。

 

 

「そうだ、

まだ食べていないメニューがあった。」

 

そう、「とんかついもや」で散々とんかつは食べていたが、

まだヒレかつを一度も食べていなかった。

 

というのも、

ヒレかつは全いもやのメニューで一番高かったのと、

とんかつは脂身こそが醍醐味であって、

それがないヒレカツに魅力を感じなかったこともあって

食べないままずっと来ていた。

 

 

「いかん。こうなったら思い出コンプリートさせねば。」

 

ということで、若干夜遅くなり不安を残しつつ、いもやに直行。

 

 

 

 

「あぁー、やっぱり。」

 

 

行列である。

 

中に6、7人、外に20人はいるな。

しょうがない。

 

ちょうど半分くらい進んだところ。

 

後ろを見る。

 

「あーあ、行列が路地の交差点を過ぎて、あんな先まで伸びてるよ。」

 

遅ればせながら店に到着した人も、

「あー」というため息とともに落胆の声をあげる人が続出する。

 

そうだね。

時間からみて、もう無理だね。残念。

 

 

やっと入口まで到達。

わくわく。

 

 

そして店内へ。

あともうちょっと。

もう45分くらい経っている。

 

 

しかし店員は忙しそうだ。

 

そうだよな、

自分みたいな思い出侍が

ひっきりなしに襲来しているんだから。

息つく間ないよな。

 

 

それにしても、

こんな行列が3月に入って、

ずっと続いている。

さすが老舗。

 

 

「この調子だと、千秋楽は戦争だな。」

 

と、思っているうちに料理登場。

ヒレかつとの初対面であり、

多分これが最後。

 

じっくりと味わいながら食う。

 

「なるほど、こんな味だったわけね。」

 

 

なんて思っているうちに、

外の客がついに打ち止め。

店に入り切れる人で終了となる。

 

 

帰りがてら「天丼いもや」の前を通る。

こっちもすごい行列だ。

 

 


 

不味い店はともかく、美味しい店は無くならないものだと思っていた。

 

でもどんな店にも寿命がある。

 

人間と一緒だ。

 

店は歳を重ね、そこに来る客も同じ時間を積み重ねていく。

 

今ここにいる皆が、思い出をかみしめるように、黙々とカツを食っている。

 

そして明日もまた、それぞれが思い出にけじめをつけるために暖簾をくぐる。

 

思い出が歴史に変わる前に。

 

 

 

雑踏の中を歩きつつ、

ふとこんなことを思った。

 

 

 

 

 

とんかついもや

東京都千代田区神田神保町2-48

03-3265-0922