写真家とバレリーナと僕 |  ◎涼のどぶろぐ◎←つながり日記←

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風景というか心象というか、
好きなページを開き、
ゆっくりたどって、味わうような
掌短編みたいな日記。



写真家Nさんの作品づくりに参加した。





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下北沢にある、うちの劇団の稽古場が、古いバレエスタジオということが写真家のNさんの、気に入った。バレリーナのモデルさんもそこで撮りたいとのこと。僕もモデルとして協力している。

午前中、僕ら三人だけの稽古場で撮影の準備をする。


それにしてもひさしぶりだ、この下北沢の稽古場に来たのは。もうすぐ本番なのだが、提携公演でもあり、ここ1ヶ月、あっちの事務所さんの稽古場を使わせてもらっているからだ。
僕はこの撮影のあと、午後からの稽古に向かう。

窓の向こう、井の頭の線路越しに9月公演の会場になる本多劇場が見える。



さっきサラサラと落ちていた雨が、今はやんでいる。入道雲を千切ったような、まるまると太った塊が、空の青い部分を見せていた。


まずはバレリーナさんの撮影になった。奥で着替えもらい鏡の前でバーにもたれながら立っている。僕は、撮影の邪魔にならないように、少し離れた窓際に座り向かいの鏡ごしにその様子を見ている。

薄い皮膜のようなレッスン着にバレエのフワフワした白い腰のスカートをつけていた。
舞台の上のガッチリしたメイクアップはせず、髪も下ろしている。

「目線を、左から窓へゆっくり移して」

写真家Nさんの指示に、したがったりしながら
パシャリ、パシャリと切られていくシャッターの音。

彼女が着替えているとき準備をするNさんが結びなおした髪に今撮っている細身な横顔は、時代劇の浪人を思い出させた。


それにしてもタイツを履いてないバレリーナの足というものに、艶(なま)めかしさよりも、なにか勇ましい野生を感じるのは何故だろう。「細い」というより「長い」感じだ。
身体を動かすときアキレスのあたりに浮き現れる筋肉の細い束に、特殊な肉体性を感じる。
鍛えられた「美」というは、奇異なものだ。これがひとたび舞うと、空間に躍動と放物線の解放を与えるのか。



「へー、シューズそんなに買わないんだ」
「ちいさい頃は、そのたびに替える事に憧れたりしましたけど」
「知り合いの(バレエ)ダンサーさんなんか、その日によって替えたりしていて、何十足も持ってたよ」

「わたし経済的な足なんです。」


撮りながら、質問をしたり
彼女が返したり、そのたびシャッターの音が刻む。
井の頭線が、通り過ぎる窓越しの空を見ながら、僕はそれを聴いている。

白いフワフワのスカートを脱ぎ、色のちがう練習着になった。
場所を変えての撮影。

「写真って、キャバクラ嬢のプロフィールじゃないけど、目を大きくしたりアゴをほそくしたり、なんでもできちゃうじゃないですか」

今度は、彼女が質問した。

「じゃ、写真で手を加えられないものってなんですか」


シャッターを切る音だけが、響いていたように感じた。

「もう少し体を傾けて」

パシャリパシャリ
「反対に」

そうだなと僕も思う。アイドルのグラビア写真だって、だいぶ整えられてるよな。気がつかないけど。
パシャリ、パシャリ

しばらくして


「瞳」とNさんは言った。
「瞳の奥の光は、できない」



「フォトショップなんかは結局は色をたすことなんだ。そのもとにある光は、色を足すことができない」

なるほど。

「その人自身の(生きてきた)雰囲気やなんかはいじることができない」


少し離れて僕はうなずいている。


「写真家とモデルが、この写真はいいと通じあったとしても、第三者が観て伝わらなければ、しょうがない」



それは、お芝居にも通じることだ、と
窓の向かいの本多劇場を仰ぎながら、思う。














≪omakke≫


時間のキュビズム(南雲賢さん)

















もうすぐ、下北沢本多劇場でSFやります!


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この撮影の作品展はちょっと先になりそうです。公開になりましたらお知らせしますね。
どぶろぐ ちょっとお休みしていました。書き溜めならぬ「思い溜め」は日々詰まっておりまして、カタチにしたいと思ってます。

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