「えっと、今日はどんなふうにします?」
見下ろし気味に後ろからの姿は、ひょろりとした首筋が、ちょうど人間の後頭部にみえる。
床屋さんの気分だ。
いや、人間ではなく、扇風機なんだけどね。
「じゃ、まずは、シャンプーから」
丸枠の引っ掛けピンを三点はずせば、ツラの金網が取れる。あらわになったファンの留め具を、時計と反対まわしにねじり羽根を取り出し、次にモーター部本体についた、後ろの金網も、プラスチックの留め具をひねり外す。
今年は節電の夏だ。
街を歩いても節電自慢が聞こえてくる。
「クーラー消す生活に慣れてきたゼ」とか
「マジ昼とか、電気消すし」
「扇風機、チョーやべえ」
言語が、高校生っぽいのは、あまり深く考えないでくれたまえ。
我が家のメインの扇風機は、
かなり古いTAIWAN製だ。もちろんコレ一台しかない。
クーラーの消費電力を減らそうと日本各地で、倉庫や押し入れに眠っていた扇風機を引っ張りだし久しぶりにフル稼働させために、埃や接触不良で火事が起きているらしい。
「古い扇風機を使うな!」
というお達しは、わかっている。
もちろん安全対策だし、見え隠れする経済効果含みだってのはニンマリしちゃうし、実際新しいのは省エネだから、新しいのを買った方がいい。
うちのTAIWAN製は、古いうえに日本語がおかしい。
裏の表示の「大きさ」が「大きち」になっていて、とてもオチャメで、「大吉せんぷうき
」と呼ぶくらい気に入っているのだ。(前回記事
)
ま、そんなわけで、
中の埃を、取ってないし、掃除してあげようと
「大吉せんぷうき」をメンテしようと思ったのである。
(注:マネしないように。異常な愛情がそうさせているので)
お風呂場で羽根と金網を流しながら、こないだも洗ったばっかでそんな汚れてない感じが、そういえば床屋さん行く前に家でシャンプーしちゃうなぁと、自分を振り返る。
サッパリしたので、
本体の機械部分に取りかかる。
ここから作業は「オペ(手術)」になった。
「メス!」
とばかりにプラスドライバーを突っ込んで、ポイントのネジを撤去。
「汗!」
ナースは、いない。
しかも、窓を開けていても今日は暑い。
ていねいに後頭部の頭蓋を外す。初めて見る、その仕組みは少しグロテスクだが、おそろしく単純だ。
コイルに電流を流し、電気磁石を回転させる仕組み。モーターにファンを直接取り付けて 廻している。
中学生の科学だ。
モーター部分に、埃はないが首振り部分の仕掛けとコードに埃がほっこりと積もっている。
そりゃあそうだ。買ってからリサイクルで六年くらいたつが、ここを開けたことはない。
しかし、思ったよりもキレイだ。さっそく掃除機で、大まかに埃を吸って、首振りの歯車についた汚れを雑巾で、細かく拭いて除去する。
コイル部分の油が、古くなっているので、ミシン油を可動部分に差す。ここでクレ556なんて使ってはいけない、よく動かす部分は摩擦熱で固まる性質があるからだ(と昔にモデルガン好きな先輩から教えられたので、たぶん正しい)
オペなら、さながらこんなところだ。
「患部から吹き出す血液を吸い取り、患部を清浄したのち、薬を塗り、切開部分を縫い」
最後に頭蓋骨みたいなプラスチックの外装部をはめて、プラスのドライバーでネジをしめていく。
乾かしたファンと金網をつけた
「大吉せんぷうき」の姿は、いつもより、すこし清々しい。
あいわらず、かわゆい(異常な愛情)
コンセントに、差し込む。
スイッチを入れてみる。
顔に巻かれたグルグル巻きの包帯を取るときのような、妙な緊張感がある。
「私が見えるかい?」
ブーンといつも音を立て、首を降りながら動き出した。
おぉ、いくぶん稼動音が静かになった気がする!
しかも、スイッチ「2」から「1」にしたとき、風が「強風」になったのだ!
(風力切り替え機能があったんだ!この扇風機!)
「先生」
「ああ、よくがんばった」
しかし、「1」はあまりに回転が激しく必死な感じなので「2」にしている。
「手術後はあまり無理をしないよう。安静に」
大吉せんぷうきは、
今年も活躍している。
※くれぐれも扇風機の分解はしないように!!
訪問ありがとうございます。
コメントも、ひとつひとつにみなさんの思いが伝わってきて嬉しいです。
前回記事の「節電の夏、大吉せんぷうき
」がブログネタの金星に評価されました。コメントもたくさんつけていただいて、その思い思いがこの作品なんだなぁと感慨深く受け止めています。
これからもどぶろぐをよろしくお願いします。
涼
前記事↓
「節電の夏、大吉せんぷうきの風
」
(ブログネタ金星記事)


