配役が出た際に気になっていたことと言えば、主要3役(僕、彼女、彼)に名前がなかったこと。
舞台上では名前が出てきましたね。
この作品では名前を伝える/名前を知る、ということが大事なシーンとして描かれていました。
(名前を伝える場面とか、「名前聞きたかったな」という台詞とか)
僕・彼女・彼はもともとの知り合いではなく、作品中で出逢い、お互いを知りたいと思うようになる。相手を知ることの象徴が「名前を知る」ということなのかな。
そして観客も、名前も知らない状態から始まる僕、彼女、彼のことを、作品を観ながら知っていくということですね。
この作品、名前だけでなく、通常の公演解説にありそうな登場人物たちの背景も全く書かれていないのですよ。性格もバックグラウンドも分からないまま観劇に臨むわけで。結果、僕・彼女はこういう人なのかぁ、とか、彼はこういう人に見えて実は違うのかな、とか、物語が進むにつれて分かっていくというのは、確かにワクワクしました。
とはいえ、主人公である僕がどんな人なのか、最後まで観ても分からない不思議。作中で読み取れるのは性格、名前、過去くらい。学生なのか社会人なのか、働いているなら職業は?とか、現在の家族の状況は?、など何も語られていない。というか彼女と会っている時以外の日常が全く描かれていないですね。
これは観客に想像という余白を与えているのか、知り合ったばかりの彼女目線での情報量で描かれているのか、実は「僕の日常は100%彼女しかないです(てへぺろ)」というキャラなのか…そこも含めて楽しんでくださいということでしょうか。
(彼女の両親と会った時のアドリブで少し語られていたという噂も聞いたけれど)ま、私が観た回ではそういう話はなかったので、私は私なりに妄想しますと…。(以下、ただの妄想ですよー。)
こってぃ僕は良いとこの御曹司。僕少年が名門っぽい制服着ていたし。今は弁護士になるべくカレッジで法律を勉強中。だけど明るくて優しい性格の僕は、お高くとまった同級生とはそりが合わず孤独。親の愛にも飢えて育った中、ふと出逢った彼女の優しい微笑みに人の暖かさを感じて一目惚れ…。
(はい、妄想終わり!)
それにしても、こってぃって、主席だし優等生な雰囲気があるのに、結構不思議キャラ当てられがちよね。演出家の皆様には不思議さが魅力ということなのでしょうか。
さてさて、感想に戻ります。
作品中の現(うつつ)の世界は彼女の関係者が中心。花屋と、もうひとつが彼女の両親。演じるのは鳳海るのくんと舞こころちゃん。
この両親、面白いわぁ。
こってぃ僕との掛け合いはアドリブが入っているのかな?娘のボーイフレンドに嫉妬するお父さんも、それを楽しむお母さんも可愛かったです。
フィナーレ。フィナーレを観るとそれまでの芝居が頭から吹っ飛ぶタイプの私ですが、今回も脳内パーン!となるほどキラッキラしてました。
男役さんも娘役さんも白が基調の衣装だったかな。こってぃとキョロちゃんが出てきて踊りながら見つめあうのは、芝居の僕と彼を観ているようでした。
こってぃ中心での群舞はアダルティ。こってぃは大人の色気を感じますね。一方でキョロちゃんが中心になるとアイドルチームのよう。これぞ若さスパークリングですよ。
デュエットダンスは、こってぃ・ひばりちゃんともに水色の衣装。夢々しいわぁ。カゲソロのすずこちゃんの歌声も含めて美しかったです。
終演後のこってぃのご挨拶では、事前インタビューをもとにした出演者が見たい夢をこってぃから発表。
私の観た回では、1人は葵祐稀くん。ボランティアに関心があり海外で勉強する夢を見たいとのこと。
もう1人は風翔夕くん。こってぃの少年時代を演じることから、こってぃを理解するのにポケモンから入ったと(こってぃがポケモン好きだから)。そんな風翔くんが見たい夢はポケモンの何とか?になって地元渋谷を歩くことだそうです。(なにぶん私がポケモン詳しくないのでキャラ名は分からず…)
最後に余談ですが、この作品を観ながら思い出したのが、小柳先生演出の「アリスの恋人」。世界観は全然違うけど、どちらも夢がポイントで、作品の最後に訴えてたいことが似ているなぁと。
このアリスの恋人、小さい女の子に見せたら宝塚に夢中になるだろう的な可愛くって夢のある作品なので、興味を持たれたら一度観てほしい。