月組のKAAT神奈川芸術劇場公演、ちなつさん主演「ELPIDIO」を観劇して来ました。



評判が良かったので期待値を上げて行ったのですが、期待値を上回るほど面白かった!


新作で原作無しで別箱って、海のものとも山のものとも知れぬ感じですが(本公演もそうだけど、別箱の方がギャンブル性が高い気がする)いやぁ当たりだわぁ。


カルトワインの時も思ったけれど、評判がいい小規模な公演って、出演者の自信がダイレクトに伝わってくる気がするんですよね。劇場全体が多幸感に溢れていました。


楽しかった理由は何と言っても、出演者の上手さ。


お芝居の話はまぁ色々進んでいく訳ですが、場面としては大きく、群衆芝居、コメディパート、シリアスパートに分かれるかなと。そして、どの場面も楽しませてくれるから、最後までハラハラワクワクが続くんですよ。


群衆芝居は、白雪さち花、千海華蘭、佳城葵ら上級生実力派が引っ張りつつ、英かおと、蘭世恵翔、きよら羽龍ら中堅・若手も場を盛り上げ、物語のキーマンでもある彩海せらも良いスパイスとなり、その他若手もイキイキとしていて、端から端まで皆が上手だった。

さち花さん(新聞記者)やカラン(店主)を除けば、役の説明はほぼ「酒場に集う仲間」で、ともすれば単なるガヤガヤ場面で終わってしまいそうなところを、個性豊かな登場人物に仕立て上げるところがまぁ素晴らしいなと。出身地自慢をし合うヤスとうーちゃんとか、可愛かったよ。


コメディ部分は、ちなつさんを含め、輝月ゆうま、蓮つかさを配置した時点で勝利ですね。何だかもう面白過ぎた。あんまりにも面白くて、本当に幻だったのではないかと疑念を抱くほどで、願わくばもう一度確かめたい(チケットがもう無くて残念)。間がいい、テンポがいい、緩急の付け方が良い。

歌劇の座談会を読むと、謝先生は面白いもの好きコメディ好きのようですが、いくら面白い脚本を渡しても、演じられなければ意味がない訳で、そんな中でこの配役は適材適所だわぁ。この3人の場面はドタバタコメディのような雰囲気なのですが、大衆演劇のようでありつつも気品があるという、他では出せない雰囲気だなぁ(そしてこんなドタバタ感の中、1人真面目な役どころの彩みちるパトリシアがまた良いことよ)。

あと忘れちゃいけない柊木絢斗くん。こんな威風堂々とした若手が出てくるなんて、舌を巻くわ。


で、シリアス場面。ちなつさんとみちるちゃんの恋模様がまた良かった。大人な雰囲気だけど生々しくなく、気持ちで惹かれ合っているけれど感情のみで動いているわけではないという様子が、清廉で気高くて美しかった(一方で自堕落な男女が狂わしく求め合う話も好きだから宝塚ファンは困る)。

自分の生き方に悩む系若手男子あみちゃんも、確か2回ほどあったソロが上手だった。月組1年弱だけど芝居の月組の人だよなぁと思う。

労働組合の彩音星凪くんもダークな雰囲気が出ていて、立ち姿だけでカッコ良かった。


脚本も、「虐げられている人々」(植民地だったり、不自由な女性だったり、戦争に駆り出される男性だったり)への救済・希望、という一貫したテーマがありつつ、そこにコメディや恋愛模様、ダンスや歌を絡めることで、最初から最後まで飽きさせない作りになっていたと思うのです。終わったあと、「わぁ楽しかったー」って叫びたくなる感じのお芝居。


本当に月組って達者な人ばっかりで驚くんだけど、もう一組の全ツチーム(れいうみブラックジャック✖️フルスイング)も上手過ぎて、最近の月組凄すぎない!?もはや怖くない!?何なの!?と、ただただ呆然とするばかりでした。