1980年代、毎年夏に、薬師丸ひろこさんと原田知世さん、それぞれの主演作を二本立てにした角川映画が封切られてましたね。
原作はいつも、角川書店から出版される、人気作家のミステリで、赤川次郎さんの作品がほとんどだったかと。
当時わたくし小学生で、赤川作品は三毛猫ホームズは読んでたかな?
当時の若者には大人気なエンタテインメントでした。映画も小説も。
で、「早春物語」。
これ、主人公の沖野瞳17歳が、会社役員の梶川を、白昼の会社ロビーで刺すシーンから始まります。で、彼女の行動のホワイ ダニットが語られていく。ミステリのセオリーに沿った展開で、赤川さんて、意外にしっかりしたミステリ作家だったんだ、と感心した次第(←限りなく失礼)。
更に言うと、この沖野瞳という主人公のキャラクターそのものが、読者を翻弄するトリックになっていて、今読んでも新鮮でした。そういう作品って、余り読んだ事が無いなあと。
映画では原田知世さんが瞳役を演じてましたけど、映画版のストーリーを読むと、小説とはかなりベクトルが違う印象。
しかしこの赤川原作の新鮮さはどうだろう。監督 相米慎二あたりで映画化していたら、もの凄く斬新な青春映画が出来たのでは。
…というのもですね、この沖野瞳という主人公が語られていくにつれ、白昼、中年男を刺すようなキャラクターに思えないんですよ。
陸上をやっていて、軽やかで、飄々として、ちょっとボーイッシュで、受け答えもウィットに富んでいて、つまり思い詰めるようなタイプとは真反対。
その子が、自宅にかかってきた梶川の電話をきっかけに、彼と知り合い、頻発に会うようになり、体の関係を結び、色々あった末、最終的には彼を刺す訳です。このストーリー展開に、爽やかJKを主人公に据える訳です。
読者は物語のラストを知ってる訳ですから、どうやって納得させてくれるの赤川さん?ってなもんです。
それがしっかりきっちり、一人称の内面吐露という手法ではなく、ミステリの流儀で彼女の心の動きが語られていく訳です。
最終章、また冒頭の会社ロビーの場面に戻ります。
そこからラスト迄の下り、たった8ページ足らずの分量ですが、赤川次郎という作家の凄さが凝縮されてて、見事な着地でした。
最初から最後まで、きっちりミステリでした。にもかかわらず、アイドル映画の原作として機能したのは、赤川さんの描く沖野瞳という主人公が、もの凄くイキイキとして、魅力的だからなんですよね。こりゃアイドルに演じさせたくなるわ。
で、その主人公の性格造形そのものが、この「早春物語」というミステリにとって、必然なんですよ。そういう構造のお話です。
赤川次郎さん、物凄く斬新なことやってたんだな、さすがだな‼ (←際限なく失礼)と、痛感した次第。
これ、赤川次郎ベストセレクションという角川文庫のシリーズなんですが、またしても祭りが始まりそうな予感です。
