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2014年刊行、トリッキーなミステリに定評のある歌野晶午さんの恋愛連作集です。

敢えて恋愛短編集としなかったのは、訳がありまして…いきなりネタばれしそうになりましたが。

 

「その女アレックス」と違って、この作品は、ネタばれによってかなり色褪せするかな、と。

 

ていうのも、唯一、たった一つのトリックでかなり引っ張ります。ちょっと長過ぎかと… わたくし途中で耐え切れず、ネタばれの章を先読みしちゃいました。あぁ、なるほど… 心安らかに読了出来ました。めでたし、めでたし。

 

まあ、読んで損は無いですが、乾くるみ「イニシエーションラブ」や、連城三紀彦さんの「美女」(←凄いタイトル)、乙一さんの別名義の恋愛ミステリ「吉祥寺の朝比奈くん」ほどのインパクトは無し。ああ言っちゃったよ。

 

ただ一箇所、深く共感したのが、「別れの刃」という章で、大学の演劇サークルに入った主人公が、一回り歳上の女優志願の先輩に、演技の練習のため二股を掛けられてた事が分かって…の下り。

 

主人公は相手の女性をなじります。自分から交際を持ち掛けておいて、二股かけてたのか?…と。

 

彼女は言う、あなただって、体だけは貞節を保っていたかもしれないけど、私自身や、私の心情を、本気で理解しようとしてた?肉欲の解消で付き合ってたという側面もあったでしょ?
男女の関係を神格化するのは欺瞞だよ。…と。

 

もちろん、だからと言って、男女の関係=肉欲の解消、と即物的に言い換える事は出来ませんが。

 

男女の関係を神格化するのは欺瞞、というフレーズは、とてもストレートでわたくし大層共感致しました。しかし、そんな言葉は、なかなかリアルでは賛同されないんでしょうね…


 

で、この連作集の男性主人公の造形について。

 

だんだんキャラがブレて来る所は、目をつぶるとして。

 

こういう人がラブストーリーの主人公になるんだろうな(ミステリの主人公ではなく)、という、歌野晶午さんのやや皮肉めいたメッセージを感じました.…

 

連城三紀彦さんも、あるミステリで、主人公に「自分は女にだらしない」と自覚させながら罠に嵌らせてましたし。

 

ミステリ作家の描くラブストーリーって、捻くれててなかなかオツなものです。