あたたかい水の出るところ/木地 雅映子

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木地雅映子さん、という作家さんは、初めて知りました。ヤングアダルトものを書かれている方らしい。

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みなさん、温泉は好きですか。
わたしの別宅の近くに、天然温泉の出る銭湯があります。
ここに行くのが、別宅滞在時の至福の時間でして。
大量のお湯であったまると、身体の調子が徐々にチューニングされ、くさくさした心の荒れもいつの間にか取れていく。銭湯万歳。知らない土地に住むときは、まず銭湯から慣れ親しんで行くのが近道かも。
木地雅映子さん、という作家さんは、初めて知りました。ヤングアダルトものを書かれている方らしい。
今作は大人向けと思われますが、「ゆず」という銭湯大好きな女子高校生の一人称でお話が始まる。
…正直、「ほぅ~ん」とかのアホっぽい擬態語とか、ゆずの語尾にやたら「…じゃないの~」と、~ が多用されてたりとか、ヤングアダルト小説らしきテンションに、
あ、間違った。
って思ってしまったんですけども。
読み進める内に、言語化できない擬態語も、ゆずの語尾がなぜ~で伸ばされてるのかも、しっかりテーマにリンクした理由があることに気づかされました。その辺りからリーダビリティも一気に加速。
なかなか力のある作家さんですね、木地さんという方(上からですみません)。
端的に言うと、ゆずはずっと、母親中心に家族からないがしろにされてきた娘さんでした。というか、ゆずの家庭自体が崩壊家庭なんですよ。
しかしゆず本人は、自分の家はフツーだと思っているし、なぜ自分が、常に上の空なのが、意識が飛んでしまうのか、母親の小言をやり過ごし家事が終わると、ただひたすら眠りに逃げ込んでしまうのか分からない。
会話に意味なんてない、ただやり過ごすことが得意なだけ。友達の女子の無条件な優しさが、いつも正しく作用する訳でないことも知っている。病んで家庭内暴力を起こす妹、口だけ達者でいつまでも自立できない姉。存在感のない父。自分の飢えを子供で癒そうとする母。そんな母親から投げられる言葉は、「可愛げのない子。」
自己卑下するのでもなく、甘えたりキレたりするわけでもなく。ただ無気力になりそうな自分を、必死で支えている。
自分の好きなことで。
銭湯が好き、例え意味なんかなくても人と何気無い会話を交わす事が得意で、働くことが好きなゆず。
人はポジティブなことがきっかけで変われる。その様が、一見ふざけた文章で、実はしっかりと描かれている。
例え肉親でも、自立を阻む相手なら、振り切らなくてはならない時がある。悪者になっても自立を選ぶ。
人は自分のポジティブな思いで踏み出した先にしか、自力で進むことは出来ないのかも。人や世間に言われるがまま消去法で進んでも、燃料切れしてしまう。
その延長線上に、お互いがお互いを必要とする出会いがある。
これはゆずちゃんの、ガールミーツボーイ話でもあるんだけど、根本のテーマは彼女の自立で、それと平行して恋愛が描かれています。爽やか。
人はエイヤっと自立しないとならないけれども、一人で立ち上がった先には、同じ目線の他人が必ずいる。
なかなかステキな作品でした。
銭湯さいこう(^▽^;
