天国旅行 (新潮文庫)/三浦 しをん

¥562
Amazon.co.jp
先日友人と行った居酒屋の生グレープフルーツサワーが、自分史上最高に美味だった件について。
お店に入ったとき、ふわっと柑橘系の良い香りが鼻腔を突き。
普段は●○サワーとかゆう飲み物を、初見の飲食店などではぜったい頼まないんですけれども、つい頼んじまった。したら大当たり。
このお店は、他にも熊本の「山ウニ豆腐」とか、岩ノリマヨネーズ添え冷やし胡瓜とか、いい塩梅に旨い酒の肴がそろっていて、めちゃくちゃ満足でした。
しかしあの生グレープフルーツサワー・・・・
あらかじめ果実が絞られてインした形で出てくるという、飲食店で本来あるべき姿で給仕されるところも真っ当に魅力的。しかも美味しい。粒々グレープフルーツジュース以上に粒々が入っている。
丁寧な仕事ぶりに、プロとアマの差って如実に出るもんだなと。
長々とした前置きにて開催中の三浦しをんさん祭り。
「天国旅行」・・・しをんさん、すごく上手くなってる!!(←上からですみません)
えっと、「風が強く吹いている」が2006年の著作、「仏果を得ず」が2007年、「光」が2008年で、「天国旅行」が2010年。
文楽太夫を描いた「仏果を得ず」から3年あまりで、ここまで完成度上がってるとは。
ほんとしをんさん、プロ中のプロですなあ。どんどん丁寧に、技に磨きをかけていらっしゃる。
「天国旅行」は、「心中」をテーマに描かれた短編集です。
文楽の「心中物」と言われるお話に触発されて、現代における「心中」を考察してみた。って感じの読み物。
これがどれも完成度高いし、「心中」といえば「死ぬこと」それも自殺に近い死に方がテーマなので、いきおい通俗的な感じでドラマチックになりがちなところを、変化球仕込みで淡々と描いている。そこが凄く面白い。
わたくしが特に面白かったのは、
「星くずドライブ」。
彼女がバイトの帰り、どうやらひき逃げにあったらしく、幽霊になった姿で彼の部屋に来る。
観た目は生きてるまんまの彼女。
つい、バイト先の店長との仲を疑ったり、無防備な生活ぶりを責めてしまう彼。
彼女のお葬式に行くべく、彼女を助手席に乗せ、二人は会場に向かう・・・
最初はPOPな感じで始まるんだけど、色々な伏線が効いてきて、後からジワジワと、
「彼女をひき逃げしたのは、バイト先の店長との仲を疑っていた、彼なのでは?」
という疑問が、読者に広がって行く恐ろしさ。
彼女だけ死んだ、あるいは殺したかに見える彼は、死者の彼女との繋がりを、鬱陶しいとどこかで思いながらも、断ち切ることが出来ない。ゆるやかな心中。
これは怖い。
それと最後の一遍「SINK」。
車で海に飛び込むという一家心中の生き残りの、鉄細工職人が主人公。
つかず離れずの、学生時代からの友達が仕事の発注元という関係。
おぼろげな記憶を頼りに、自問自答繰り返し、生きてきた主人公。
自分は、家族を見捨てて、助けを求める母親を足蹴にして、一人だけ生き残ってしまったのか?
誰に問いかけても答えがある訳ではなく。
・・・最後に彼は、「自分だけでも助けようとして、母親が自分を車の外に押し出してくれた」というストーリーに、繰り返してきた記憶を、書き換えてみることをする。
つまり彼は、「心中」から本当の意味で、「生き残る」ことを選択しようとした訳だね。
最終話が、「心中話」という真っ暗闇から、光の方向へ蘇生しようとする「生」の話だったことが、この短編集を後味の良いものにしていると思います。
すごい、構成が良く出来てるな~この短編集。
途中、「君は夜」や「炎」といった、近松門左衛門もかくありきや・・・の壮絶心中チック話もあり、どれもさすがの力作だったんですけど、私もどうやら男女の愛憎高じて死に至る、という心中王道ストーリーが、どうも刺さってこないタチのようで。
しかし、男女の愛憎の果ての心中ストーリーって、「人間」を描くのに格好の題材ですね。良く出来た男女心中ものって、どこを切っても「自己中」という、人間を構成する不変の悪癖が顔を出すお話に仕上がるんだな、と。さすがしをんさん。ほんわかした作風が多いですが、この方、根底は人間をすごく冷徹に観てますよね。ありのままに観てる。それを小説として誤魔化しなく構成する。そこがプロだな~と。
しをんさんの文楽修行?が結実した、とても読み応えのある短編集でした。
ありそうで少ない、
よく出来た生グレープフルーツサワー並みに、レアな小説集だったと思います!

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先日友人と行った居酒屋の生グレープフルーツサワーが、自分史上最高に美味だった件について。
お店に入ったとき、ふわっと柑橘系の良い香りが鼻腔を突き。
普段は●○サワーとかゆう飲み物を、初見の飲食店などではぜったい頼まないんですけれども、つい頼んじまった。したら大当たり。
このお店は、他にも熊本の「山ウニ豆腐」とか、岩ノリマヨネーズ添え冷やし胡瓜とか、いい塩梅に旨い酒の肴がそろっていて、めちゃくちゃ満足でした。
しかしあの生グレープフルーツサワー・・・・
あらかじめ果実が絞られてインした形で出てくるという、飲食店で本来あるべき姿で給仕されるところも真っ当に魅力的。しかも美味しい。粒々グレープフルーツジュース以上に粒々が入っている。
丁寧な仕事ぶりに、プロとアマの差って如実に出るもんだなと。
長々とした前置きにて開催中の三浦しをんさん祭り。
「天国旅行」・・・しをんさん、すごく上手くなってる!!(←上からですみません)
えっと、「風が強く吹いている」が2006年の著作、「仏果を得ず」が2007年、「光」が2008年で、「天国旅行」が2010年。
文楽太夫を描いた「仏果を得ず」から3年あまりで、ここまで完成度上がってるとは。
ほんとしをんさん、プロ中のプロですなあ。どんどん丁寧に、技に磨きをかけていらっしゃる。
「天国旅行」は、「心中」をテーマに描かれた短編集です。
文楽の「心中物」と言われるお話に触発されて、現代における「心中」を考察してみた。って感じの読み物。
これがどれも完成度高いし、「心中」といえば「死ぬこと」それも自殺に近い死に方がテーマなので、いきおい通俗的な感じでドラマチックになりがちなところを、変化球仕込みで淡々と描いている。そこが凄く面白い。
わたくしが特に面白かったのは、
「星くずドライブ」。
彼女がバイトの帰り、どうやらひき逃げにあったらしく、幽霊になった姿で彼の部屋に来る。
観た目は生きてるまんまの彼女。
つい、バイト先の店長との仲を疑ったり、無防備な生活ぶりを責めてしまう彼。
彼女のお葬式に行くべく、彼女を助手席に乗せ、二人は会場に向かう・・・
最初はPOPな感じで始まるんだけど、色々な伏線が効いてきて、後からジワジワと、
「彼女をひき逃げしたのは、バイト先の店長との仲を疑っていた、彼なのでは?」
という疑問が、読者に広がって行く恐ろしさ。
彼女だけ死んだ、あるいは殺したかに見える彼は、死者の彼女との繋がりを、鬱陶しいとどこかで思いながらも、断ち切ることが出来ない。ゆるやかな心中。
これは怖い。
それと最後の一遍「SINK」。
車で海に飛び込むという一家心中の生き残りの、鉄細工職人が主人公。
つかず離れずの、学生時代からの友達が仕事の発注元という関係。
おぼろげな記憶を頼りに、自問自答繰り返し、生きてきた主人公。
自分は、家族を見捨てて、助けを求める母親を足蹴にして、一人だけ生き残ってしまったのか?
誰に問いかけても答えがある訳ではなく。
・・・最後に彼は、「自分だけでも助けようとして、母親が自分を車の外に押し出してくれた」というストーリーに、繰り返してきた記憶を、書き換えてみることをする。
つまり彼は、「心中」から本当の意味で、「生き残る」ことを選択しようとした訳だね。
最終話が、「心中話」という真っ暗闇から、光の方向へ蘇生しようとする「生」の話だったことが、この短編集を後味の良いものにしていると思います。
すごい、構成が良く出来てるな~この短編集。
途中、「君は夜」や「炎」といった、近松門左衛門もかくありきや・・・の壮絶心中チック話もあり、どれもさすがの力作だったんですけど、私もどうやら男女の愛憎高じて死に至る、という心中王道ストーリーが、どうも刺さってこないタチのようで。
しかし、男女の愛憎の果ての心中ストーリーって、「人間」を描くのに格好の題材ですね。良く出来た男女心中ものって、どこを切っても「自己中」という、人間を構成する不変の悪癖が顔を出すお話に仕上がるんだな、と。さすがしをんさん。ほんわかした作風が多いですが、この方、根底は人間をすごく冷徹に観てますよね。ありのままに観てる。それを小説として誤魔化しなく構成する。そこがプロだな~と。
しをんさんの文楽修行?が結実した、とても読み応えのある短編集でした。
ありそうで少ない、
よく出来た生グレープフルーツサワー並みに、レアな小説集だったと思います!
