光 (集英社文庫)/集英社

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三浦しをんさんといえば、直木賞作家にして、たくさんの映像化作品を輩出している、売れっ子作家さん。



「まほろ駅前多田便利軒」や「舟を編む」などが有名ですね。



此方を一読して、力のある作家さんだな~と感心しました。



あらすじは、美浜島という東京都の外れの島を、大津波が襲う。

生き残ったのはほんの数人で、中学生の信之と、同い年の彼女の美花、幼馴染の輔だった。



ある夜、信之は、生き残った観光客に犯されそうになる美花を助けようと、その観光客を殺してしまう。死体はこっそり、谷底に落とし隠蔽する。島には、たくさんの住民の死体があった。



20年後、信之は妻子持ちの市役所勤め、美花は美貌を生かして女優になっていた。



一方、輔は、父親に小さい頃から虐待され、津波を生き残って大人になってもそれは続き。

父親はある日、輔に金をせびりに脅しに来る。

お前は津波から助かったあの日、観光客を殺しただろう?と。



そこから三人の悲劇が加速度的に連鎖していくんですけれどもね。



お話は東野圭吾さんの「白夜行」や、手塚さんの「MW」に似ていなくもない。つうか、「白夜行」にはかなり似てます。



とはいえ、東日本大震災の前に津波という災害をかなり詳細に描き出していることや、信之や輔の暴力描写、信之の妻が精神的に病んで行き輔と逢瀬を重ねる描写が、微に入り細に入り、凄く細かくて濃厚。でも一気に読ませる。この筆力は大したもの。





しかしもったいないなあ。

白夜行に似せない工夫がもひとつ欲しかった。もちろん全然違うお話になってるんですけれども。



主要因は、美花のキャラクターなんですよね。

自分の役に立って貰う為に男と寝る。んで芸能界をサバイブし女優になっている。昭和の悪女。



人間らしい感情がぶっ壊れた信之、その信之を勝手に親代わりに慕い、そして憎む輔。

この二人のキャラクターは、凄く魅力的。



信之の妻の南海子も、夫の異常さに無意識に精神をやられ、病んで行くさまが凄いリアルで、よく出来たキャラクターです。



ホント、おしむらくは美花なんですよ。

私だったら…と色々考えてみるけど、コレが結構難しい。



ストーリー上必要なのは、

・大人になって、お金持ちになっている。

・信之のファムファタール的存在である。

・津波という暴力、男の暴力に平伏された弱者でありつつ、それを逆手に取りのし上がる強かさがある。



てなるとだなあ、やっぱり女優で成功、みたいなキャラクターになりがちなんですよね。



弱さを逆手に取ってのし上がる、ていうのが、女を売りにする=色恋を生業にする、そこが「女の飛び道具」なんですよねいつの時代も。



で、そのヒロイン像が白夜行をどうしても想起させる訳で。



そう思うと手塚さんの「MW」は、色恋を飛び道具にする主人公を、男性にしてたのが決定的に新しかったですね。



と、色々考えてしまうくらい、キャラクターと情景描写に力のある作品でした。



アンハッピーエンドなんだけれども、、希望の「光」を希求せずには生きていけない人間の性を感じさせる、味わい深いラストでした。



しをんさんの他の作品も、読んでみたいと思いました!