三月の招待状 (集英社文庫)/角田 光代

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それにしても角田さんて多作。

んでもって、やっぱり私にとって、角田さんの小説って特別なんだよなあ。

たくさんの日常、たくさんの登場人物、それらのアンサンブルが、どれも固有の物語になっていて。
読み終わるといつも、これと似たような切り口の物語って、今まで存在したこと無いのかも?・・・って気がしてしまう。

「あるある」で「わちゃわちゃ」な、ありがちな日常と男女関係なのに、物凄くオリジナル。



で、今作も、まあありがちな物語なんですけど、やっぱり面白かった。

大学の同級生男女の、35歳になった現在の人間関係を描いた小説なんですけども。


発端は、「離婚式」を急に行うこととなった同級生カップル。
くっついたり離れたりを繰り返し、とうとう、浮気続きの男に愛想を尽かし、自由になりたいと離婚を決意する女。

で、その「離婚式」に、かつての大学の同級生だった仲間たちを呼ぶ。
二人の関係の起点が、大学時代の「わちゃわちゃ」した日常にあったから。


角田さんの面白いところは、学生時代に過剰に思い入れを抱きがちな「学生時分に、共同体のど真ん中で生きていた人」の生態を、ポジティブにもネガティブにも赤裸々に描くとともに、
「そこに乗り切れず白けている人種(=遥香)」や
「そこに乗り切れないが、乗り切っている人種への憧れが捨てられない人種(=麻美)」
「そこでしかイケてる人としてなぜか認知されない人種(=宇田男)」
を、これまた絶妙に配置するんですわ。

特に、この一見生ぬるい小説を、ピリッとさせている存在が麻美。

いやこの主婦・・・・
なかなか暗黒具合がスゴイです。

私は麻美というキャラクターが、実はこの小説の中で、一番真剣に生きている人なんじゃないかなあって思った。

角田さんの筆致も、麻美の描写のときは、冷酷極まりないんだけど、凄く内面を丁寧に描いていて、作家的に、彼女にとても思い入れ=愛情を持っているように思いました。

えーっと、麻美とは、田舎から都会の大学に出て来て、他の友達にいつも気おくれし、自分の意見もろくに言えず、何がイケてるかも判断できず、ただ皆のフォロワーのような存在として描かれていて。

学生時代は恋愛らしい恋愛もせず(フォロワーだから)、大学卒業後、堅実な夫と結婚し、専業主婦になり。

で、35歳の友達の離婚式で、当時大学で最もイケてた皆の憧れの男で、今は単なるフリーターの宇田男に、二次会のカラオケ屋の階段の踊り場でキスをされ、いつのまにか「付き合う」ことになり。

有頂天になるも、宇田男からは、食事代からホテル代まで出させられ、全く大事にされず、完全に独り芝居か?みたいな散々な扱いをされ、友達からは「初心な麻美が、勝手に宇田男に入れ込んでる」みたいにうわさされ。

痛い・・・というキャラクターなんですが。

でも彼女は、行動していくんですよね。
主人公以上に。
自分で自分の気持ちや欲望に、自分の行動で、落とし前を付けて行く。


そこを格好よく描かないで、「痛い女」として描く角田さんって、大人だなあ。
そう、自分で自分に落とし前をつけなきゃいけない時って、もう100%と言っていいくらい、ものっそい自分が格好悪いシチュエーションにいる時なんですよね。
自分の弱さと向き合っている時、というか。

そういう時にしか、人間って成長できないし、そこまで追いつめられないと、本当の意味で自分を変える行動を取れないって、角田さんは、作家の嗅覚で、分かっていらっしゃるんでしょうかね・・・


という意味では、窪美澄さんの小説の世界観とも似ている気がした。

あれ、さっき角田さんてオリジナル!!って言ってたのに似たもの発見しちゃったよ。

でもどっちの作家さんも好きなんで、結局、私の共感する世界観ってことなんでしょうねお二方のは。


しかし読んでも読んでも、角田さんの小説って、読み足りない、もっと読みたいって思う。


すごい作家さんですわ角田光代さん・・・
と、改めて思いましたとさ。