雨のなまえ/窪 美澄

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「ふがいない僕は空を見た」でデビューされた、窪美澄さんの最新作。


「ふがいない~」は、本も売れたし書評も高く、映画化もされ、当時わたしが出入りしてたドラマの企画会社の人達も激賞してました。

が、あんまり乗れなかったワタクシ。
山崎ナオコーラさんの「人のセックスを笑うな」に近い、モチーフのあざとさと文体の奥ゆかしさのコントラストで女性のひりひり感を描こうとしている感じが・・・男性には新鮮かもしれへんけど、女性であるワタクシには、その切り口にデジャブ感があったもんで。

しかし今作は、なかなかの粒ぞろいだったと思います!!


雨をモチーフにした短編が5編。

・妻の妊娠中、逃げるように浮気する夫。「雨のなまえ」
・パート先の大学生に焦がれる中年の主婦。「記録的短時間大雨情報」
・不釣り合いな美しい妻と結婚したサラリーマン。「雷放電」
・幼馴染の少女の死をひきずる小学校の男性教師。「ゆきひら」
・幼い息子を連れて離婚したシングルマザー。「あたたかい雨の降水過程」



わたくしが心を掴まれたのは、2話目の「記録的短時間大雨情報」でした。

スーパーでレジ打ちしている中年主婦が、痴呆症の義母を預かることになる。
彼女の夫は、昔、浮気をしていて、浮気相手から「子供ができた」との脅迫電話をもらったことがある。
夫に離婚を言い出すが、彼は妻を無視し、暫くしてから「全て終わった、ウソだった」と伝える。
その後、1年に1度、思いだしたように妻を抱くが、夫婦の間に会話はなく、義母のことも押しつけられたまま。

そんな折、大学生の男の子がレジ打ちのバイトに入る。
全く仕事のできない彼をヘルプしてやり、腹ペコと言えばパンやおにぎりを与え。

妻は分かっている訳です、自分の人生に、夫も積極的に関わってこないし、会話もない。
痴呆症になった義母を、兄夫婦は自分に押し付けるだけ。
義母は、他愛もない文房具やお菓子を万引きするクセがあり。
貧乏くじをひききったかのような自分の人生、でも、そんなに不幸せって訳でもない。

慣れてしまった訳です、そんなしょーもない人生のあれやこれやの出来ごとに。

そんな彼女が、大学生の彼に、「何もしない後悔より、やった後悔の方がいい」という義母の言葉に押され、彼のアパートまでいき、告白をする。

「いや・・・○△さんのことは、お母さんみたいにしか見えないし・・・」

彼にドン引きされ、職場では影で笑われ、さげずまれ。

それでも彼女は、淡々とレジ打ちバイトをする。
息子を大学にやらなきゃいけないし。


このやるせなさ。
ホントどーしよーもない物語なんですけど、この主婦の人の強さと言ったら。
クライマックスがいつかも分からない、超平坦な人生を歩み、
年をとればとるほど、砂をかむよーな現実しか身の回りになく。
浮気した夫でさえも、心の葛藤に妻の存在を入れない。

でも彼女は、「私って何なの!?」とか、安いやつあたりなんかせず、
淡々と日常をこなし、
淡々と恋をし、
報われないって絶対分かっているのに彼に告白をする。

それが自分の気持ちの動きであって、彼女はそういう自分のどーしようもない日常に、自分の行動で、きっちりおとしまえを付ける。
そういう生き方を描いている。

行動の結果はハッピーエンドに限るとか、人生ってそういう期待をするもんじゃないよね。
自分で自分のことを可愛がるだけが、女の人生じゃないよね。

・・・ということが分かってる登場人物なんですよね。

物凄く地味な作品ですけど、わたしはこの主婦のキャラクター、斬新でカッコいいと思った。
そういう風に、ハードボイルドな主婦を描く窪さんも、カッコいいと思った。


他の作品はですねえ。
まあ、悪くないです。(←上から)
でも、「記録的短時間大雨情報」の突出したハードボイルド感と比較すると、やや平凡だったかな。



窪美澄さん・・・また、読むのが楽しみな作家さんが増えました^^