あちこちで大変評判が良いので、観て参りました。
2011年フランス映画。
フランスでは、歴代3位の興行収入を達成する大ヒットだったそうです。
お話はですねえ。
事故で首から下が完全にマヒした、大富豪のフィリップ。
彼の介護士選びの面接にやってきた、スラム街の黒人、ドリス。
彼の話相手にふさわしい教養もなければ、介護士の資格も経験も何もないドリス。
失業保険を貰うために、3通目の「不採用通知」を貰いにここに来た、と率直に言う。
しかし、フィリップは、そんなドリスを敢えて採用する。
「・・・・いつまでもつかな?」
その日から、ドリスは住みこみで24時間、フィリップの介護をすることになる・・・・・
まあ平たく言うと、正反対の境遇の男二人の、実話をベースにした、新手のバディものです。
そう、これは「友情」が生まれる瞬間と、それをいったん手にしたら、ヒトは生き方が変わる、ということを、誰もが共感する、ストレートな手法で描いた映画です。
世界中で大ヒットし、ハリウッドリメイクも決まったのが、納得の良作です。
とはいえこれは、ドリスが黒人で、不幸な家庭環境で、でも情があって嘘が無い「よい人間」で、そこに障害者でありながら自立心をもったフィリップが魅かれていった、というような単純な話では無いです。
ドリスは宝石泥棒の前科があり、いい年しながら定職もなく、年老いた養母を夜遅くまで掃除婦として働かせ、家族もろくに養えないハンパな男です。
一方フィリップも、何もかも達観したように見えつつも、障害者であることを心の底から受け入れることもできず、自殺できる四肢の自由もなく、深い絶望の中で、半分死にながら生きています。
そういうもんだと思います人間だもの。
フィリップは、ドリスに、「生活の糧になる仕事」という誇りを与えます。
そして見下すでもなく遠慮するでもなく、雇い主と雇われ者、という対等な関係の中で、ごく自然にドリスに接する。
一方ドリスはフィリップに、彼流の荒っぽい介護に加え、
日々の生活の中にある普通の人間の喜び・・・・
不幸な境遇を自虐のユーモアに変えて笑い飛ばし、
日常の中に心ときめく異性を見つけ、彼女に近づく方法を考え、
踊れる音楽で弾ける・・・というような彼にとっては当たり前のことを、ごくごく自然に、彼に提供します。
お互いがお互いのもっているものを対等な立場で交換し、お互いがそれぞれ、相手の差し出したものに応えたいと、自然に自分の持っているものを差し出す。
そういうことの積み重ねで、人間関係って成り立ってる。
最後、フィリップは家族の問題をかかえるドリスに、介護士の仕事を辞めさせます。
「これは君の本当の仕事じゃない」と。
新たな介護士を雇うフィリップ。
日常からドリスという友達がいなくなり、徐々に心が荒んでいくフィリップ。
もう限界、となったとき、フィリップの秘書(?)からドリスにSOSが入ります。
「外の世界に連れて行ってくれ」
ドリスに頼むフィリップ。
海までフィリップをドライブに連れていくドリス。
車中の音楽は、アース&フィアーの「September」。
へたくそな大声で、BGMに合わせて歌うドリス。
・・・・ここからエンディングまでのシーンは、要約すると陳腐なので敢えて書きませんが、ホント感動して涙が止まりませんでした。
人が生きていて嬉しいとか悲しいとか、そういう喜怒哀楽全て、結局人とのコミュニケーションから生まれている。
だからといって、出会うヒト全てと、人生のあれこれが共感できる訳もなく。
分かりあえない寂しさ、分かりあおうとしない孤独、そういう砂漠みたいな人間関係の海の中で、みんな「自分にとっての誰か」と、出会いたいと思って生きてるもんだと思うんです。
そしてその「誰か」と、期せずして出会ってたんだと分かったとき、それまでの自分の「不幸」が全てチャラになってお釣りがきた、ぐらいの大転換を迎えてしまうもんだと思うんです。
エンドのフィリップの表情が、この映画の全てを物語っていて。
「これから自分の身に起こる全てのこと」にわくわくする気持ちと、
それがどんなものかドキドキするちょっぴり不安気な表情。
とにもかくにも、「未来」に彼の心の全部が向いている、ひたすら前向きな瞬間。
そういうときが一番、人間て充実してるんだな、と。
彼がそういう表情を浮かべるに至った経緯は、もとはといえばフィリップ自身のアクションによるものなんだけど、ドリスがちゃんと、お膳立てしてるんですよね。
だから、フィリップもより嬉しい。
と、いうことが、「絵」で分かる、素晴らしいラスト・シーンだな、と。
フィリップ役、ドリス役の俳優さんたちの演技も素晴らしいです。
特に、フィリップ役の方は、首から下が全く動かせないという設定ですから、一貫して表情だけで、フィリップの全ての心理状態をごくごく自然に演じ分けていて、こりゃ相当な腕をもった俳優さんだな・・・と思った次第です。
ドリス役の方はコメディアンだそうですが、凄くハンサムだし体もよく動くし、チャーミングなヒトだな、と。
エンドロールで、映画の実在の人物の映像と現在の境遇が挿入されていて、賛否両論らしいですが、まあフランス人てラテン系だし結構ベタベタの人情派と私は踏んでるんで、こういうのはお国柄でしょうかね。
二人ともお幸せそうですし。
脚本的には、構成とかシーンの長さとか、正直いって、さほど洗練はされてません。
でもこの映画のテーマに、あまりにシャープな構成とかって必要ないかな、と思うので、特に気になりませんでした(←珍しい)。
日比谷シャンテで観ましたが、どの回も満席でした。
予約していった方がベターです。
今時珍しいですよね、ミニシアター系でここまでヒットするのって。
ヒューマンドラマですが、フィリップ役の方の絶妙な表情を堪能するのに、スクリーンで観るのがオススメです。
