コレ、めちゃくちゃ面白かったです。
古沢良太さん(脚本家ね)は、今、日本で一番面白いシナリオ書くな。

NHKドラマだった外事警察が、渡部篤郎さん始め主要キャストそのままで映画化。
とにかく脚本のテンポがよく、笑いや男女のアレコレなど甘い要素いっさいなし、スパイ映画の緊張感で、128分を、ダレることなく描き切ってます。

ストーリーは、まあわりと単純。

濃縮ウランが北朝鮮に流出。
日本の東北の、とある大学では、震災後の混乱に乗じて、核融合を起こす装置の設計図が盗まれる。
いずれも、北朝鮮の工作員の仕業と思われ、日本の公安と、韓国のNIS(特殊工作員みたいなの?)が動きだす。
一方、数十年前、日本の原子力研究室から北朝鮮に亡命した、在日朝鮮人研究者が、韓国に亡命してきて劣悪な環境で身を隠していた。

日本から技術を盗み、更に盗んだ濃縮ウランで核爆弾をつくろうとする北朝鮮。
それを潜入捜査官をつかって水際で止めようとする韓国。
核爆弾製造に自国の技術が使われたなんてことが、あってはならない日本。

3国の思惑が絡み、韓国・朝鮮の潜入捜査官が騙し騙され、そこへ借金の肩に、北朝鮮の工作員と偽装結婚した、真木ようこ子じる日本女性が絡み。

一見複雑そうにみえるけど、日本にしろ韓国にしろ、最終的な敵は北朝鮮なり~の、シンプルな構造のお話です。

でもこのお話は、灰汁の強い韓国・朝鮮と、テロとかサスペンスとかスパイ大作戦的なフィールドには全くもって向かなさそうな日本人を、上手く対比し、最終的に、きちんと「日本の」エンタテイメントにしてるところが素晴らしかった。

ポイントは、日本人の美点であり甘さである、家族や血縁に対する情を、騙しに利用する点ですね。
その役をやるのが、渡部篤郎さん。

この役は、ホント渡部さんのハマり役ですわ。
情に厚いようで、ギリギリんとこで信じていない。
でもやっぱり情がある・・・?
やっぱりない・・・?
ってゆう、どっちつかずの複雑な主人公が、どんばまりです。
渡部さんにいつか、実写版ブラックジャックやってほしいわ。
あーいう二律背反の人間性が、ぴったりくる役者さんです。

そんでもって、マッド・サイエンティストを演じた田中(名前がさんずいに民て書くヒト・・・)さんの演技が、もうホント凄いわ・・・・
こりゃ狂ってるわ。って、マジで思いましたもん。

そして意外と見直したのが真木よう子さん。
あのでかい胸とハッキリした顔が、スクリーンに映えて華があるし、
一見だいこんっぽいぶっきらぼうな演技が、渡部さんとの掛け合いでは、
逆に緊迫感を醸し出していました。
かなり母性を強調した役でしたが、彼女が演じると、どこかカラっとして、ベタベタしないんですよね。
そこがとても良かったです。

で、この映画、衣装もすごく良くて。
真木さんの衣装が、フランスのノアール映画に出てくるちょっと陰のある人妻、って感じで、とてもステキでした。
でもちゃんと現代性のあるファッションで。
衣装さんは女性の方のようでしたが、とても素晴らしいお仕事をされてると思いました。
他の日本のドラマも、これくらいのレベルで衣装にこだわってほしいです。

一か所、渡部さんが韓国で使うGPSの画面が、ちょっとちゃちかったけど、他の小道具やロケ、セットなど、さすがNHKっていうくらい、きっちりしてました。
核爆弾は、どーなんだろ。あんなものなのかしら。まあ違和感は無かったです。

それと、韓国の俳優さんの使い方とか、日本人の韓国に対する知識を、上手く映画に取り入れてるな~と思いました。
韓国のスパイ映画とかアクション映画とかがこれだけ普及した2012年だからこそ、出来た芸当だな、と。
韓国人俳優さんも、とても格好良く、脅し方とか、すごく「らしい」描き方をしてました。

で、日本人のダメなとこ、甘いとこも、ちゃんと描いてるんですよね。
そういう「甘い」とこを逆手にとって、渡部さん演じる住本が、相手も味方も、騙すんですよね-。
真木よう子さんの最後の台詞、「あのDNA鑑定ってほんもの?」ってところ、やっぱそーっすよね~。みたいな。

で、最後に石橋凌が、韓国の公安に「日本の技術が核に使われそうになったことを、洩らさないでくれ」って取引するところ。
その交換条件で韓国の弱みをちらつかせるんだけど、それを握ったのは渡部で。
韓国人工作員と会話したとき、録音してた訳ですね。
で、韓国人工作員に、「だからお前たち(日本人)は甘いんだ」って捨て台詞はかれるんですけど。
その会話(正しくはその前の部分)自体が、韓国との交渉に使われてるという。

そう、この映画は、日本人が最後に、とことん気持ち良くなれる映画です。
スパイ映画ってのは、最後にその国の人たちが、自分たちが一番賢いんだゾ!!って思うための映画だと思うんで、それでよいと思います。

何より、そういう「俺様」マッチョな映画を、日本人がちゃんと作れた。ってことが、私はエライと思う。
ちなみに、アメリカ人、イギリス人、韓国人あたりが、スパイ映画つくるの、圧倒的に上手いですよね。

日本人は、どーも平和主義が過ぎて・・・ってイメージですが、いや、我々には渡部さんと石橋凌さんがいましたよ。
そして古沢さんの脚本が、ホント素晴らしいです。


尾野真千子さんも、渡部さんの部下役を好演してましたけど、今回は真木さんが圧倒的に良かったかな・・・。
それと、韓国人工作員やったキム・ガンウさんも、まだ若いだろーに渡部さんにヒケをとらず、素晴らしかったです。

えーっと、真木よう子が、朝鮮人工作員と偽装結婚してるのを問い詰めるときのオノマチの台詞に、
「子供がいて借金もあってイイ年したあんたなんかに、あんなイケメンで金持ちの韓国人が、本気でプロポーズする訳ないでしょ!!」
みたいなのがありましたが、これ、日本の韓流好き女性に対する日本人男性の心の叫びを代弁するかのよーな台詞だな、と思いました。

それを女性であるオノマチに言わせるとは、古沢さん、やっぱ脚本家らしく性格悪いなあ。と思いましたとさ。