上海右矢印成田の、飛行機で観ました。
行きは、人間の奈良漬状態(ふつかよい)でほとんど何も出来ませんでしたが、帰りはめでたく復活。


2011年のハリウッド映画。
ジョージ―・クルーニー演じる父親が中心の、ハワイを舞台にした、家族再生の物語。
監督はアレクサンダー・ペイン、「SIDEWAY」ってゆー男女4人のワイン畑を巡るロードムービー撮ったヒトだね。
この監督さんは、等身大の大人を描くのがとても上手。

これ、なかなかの良作でしたよ。


物語は。
ジョジ・くるはハワイで娘二人と妻を持つ弁護士。
かつ、カメハメハ大王の末しょうの家柄で、ハワイに広大な土地を持つ大地主。

が、ハワイ州の相続についての法律が変わることが決定、ジョジ・くるは、相続権を失う前に、土地を売却しようとしていた。

そんなある日、妻がモーターボートの事故で植物状態に。
仕事にかまけて家のこと放ったらかしだったジョジ・くるは、17歳と10歳の娘たちの超・反抗的な態度に翻弄されるも、長女のある一言で、更に呆然自失に陥る。

「あたしがママとケンカしてたのは、ママがパパを騙してたから。
ママは、浮気してたんだよ?」


ジョジ・くるがハワイ人と白人のMIXという設定で、脇の多くはハワイ系と思われる俳優さんが演じ、音楽もハワイアン・ミュージックで統一、舞台も100%ハワイ島や周辺の島で、観光地ではないハワイがとても新鮮。

そして、そんなゆるい世界を舞台に、反抗期まっただなかの娘と、土地の売却と、妻の事故&浮気に、ジョジ・くるが翻弄されていきます。

その一つ、一つのエピソードが、ドラマチック過ぎず普通すぎず、ユーモア交えて淡々と、でもジョジ・くるが人間臭く、父親らしく、そして妻に騙された男の情けなさをふわっと漂わせながら、いつもの色気抑えめで、かなりの好演をしています。

娘二人も、いわゆるジブリ映画で描かれるファンタジー女子とは正反対の、リアル100%、でもどぎつ過ぎず、等身大のティーンエイジャー、思春期入口の少女の姿で描かれていて。

この娘さんの描写が、この映画を、単なる人情話にせず現代の共感話にしている勝因ではないかと。

17歳の娘は、ハワイの月謝の高い私立高校の寄宿舎にいるんだけど、まー酒は飲むわマリファナ吸うわ。が、それがまあ普通のリアルな、アメリカの高校生の中流ってレベルな訳ですよ。
エリートでもなし、かといってドロップ・アウトするまでも行かない、中くらいの子。
でもそういう子って、自分を分かっている賢さがありますよね。
で、オヤジも上から目線でちょいバカにしてる訳ですな。
ママが浮気してるのに全然気付いてなかったし。

ほんでもって、この子の彼氏も出てくるんだけど、まあこれが絵にかいたよーなアフォなティーンエイジャーで。


二人目の10歳の娘は、コレがほんと、ちょっと小太りで、まあにくたらしい。
おかーさんが植物状態になったら、その写真を撮りまくって、スクラップ・ブックに貼って友達に見せまくり、「怖い」と学校に苦情が来て、ジョジ・くる呼び出し。
「有名な写真家のナントカさんが、死に際のおかーさんの写真を撮って評判になってたから同じことしたの。だってあたし、フォトグラファーになりたいんだもん。」
さらに、同級生の女の子に、
「知ってるよ、夏休みの間に陰毛が生えたでしょ?」
とメールを送り、相手の子の親にまた呼び出し。

・・・頭抱えるジョジ・くる。
「いつの間にウチの娘は、こんなことに。手に負えない。(しかし妻は植物状態)」

てなエピソードが、ほんと秀逸。

で、おかーさんが浮気してた。ってコトが発覚してからの、ジョジ・くるの取り乱しぶりがまたとても人間臭い。
行き過ぎないけど、滑稽で、ありきたりそうで、個性的。
そんな台詞とリアクション。


つまりこの映画、とてもシナリオが上手。
奇をてらってないけど、キャラクターの個性が生きていて、かつ現代的。
さらに舞台をハワイにしたことで、ジョジ・くるの妻の浮気相手ストーキングとかが、さほど思い詰めて見えないというか。
娘と父親の確執も、ゆるいハワイの海岸をバックで描かれると、台詞のセンスも相まって、なんか微笑ましいというか。


娘二人がほんと、かわいくねーティーンの代表みたいな子たちなんだけど、物語が展開するうち、まあ素直で可愛いとこもあるわな、と思えてくるし、長女の彼氏も、ロクデナシながら芯がある子なんだな、って分かってくるし。
その辺の一回落としといて、「程よく」加点していくストーリー運びが、実に大人。

ジョジ・くるも、ほんと滑稽なんだけど、忍耐強く、娘と家族を彼なりに愛し、父親・夫であろうとする責任感が、じわじわ伝わってきて。

ヒトがヒトに対して誠実であろうと努力するサマが、押しつけがましくなく描かれている役です。

最初よくジョジ・くる、こんな地味な映画出たな・・・と思ったけど、この役は演って正解でしたね。

エンドロールで、カウチに下の娘が寝そべってる右矢印ジョジ・くるが隣に座る右矢印長女も座る右矢印3人でハワイの自然のドキュメンタリーか何かを、チョコチップ・アイスを回し食べしながら観ている・・・って描写が、とても粋でした。

これ前フリがあって、最初ジョジ・くる、娘の食の嗜好も分からず、せっかく作った朝食を「卵キライ」「朝は食べない」みたいに、全否定されてた場面があったんですよね。

が、最後は、下の娘にチョコチップアイスを渡すと、そのチョイスを「グレイト。」って褒められてて。
親父に「グレイト」って言っちゃう10歳の娘もおかしいし。
でもちゃんと、二人の娘は、親父を尊敬しているのが分かるエンドなんですよ。


これ、監督も脚本家も、実際に娘がいる人なんかな?つーくらい、演出も台詞も見事でした。
アカデミー脚色賞をとってますが、なるほど納得。
何気ないけれど、とても上手い脚本なので、そっち方面に興味のある方には、ゼヒお薦めです。


そしてジョジ・くる、永遠の独身主義者なのに、きっちりフツーのおとーさんを演じきってて、さすがハリウッド役者だなって。


ゴージャス・セクシーじゃないジョジ・くるって、こんなに魅力的だったのね、という感じ。
衣装もチノパン+アロハシャツの親父スタイルを貫いてますが、それも段々素敵に見えてくるのが不思議。



ワタクシ的には、ジョジ・くるが、妻の浮気相手の奥さんに、軽いキス・ハグをすべき所で、思いっきり深いチューをして相手の奥さんを「???」ってさせる場面が、すごい面白かったです。
さすがジョジ・くる。


ちなみに原題は「the descendants」、末しょうとか、末裔という意味。
ジョジ・くるの設定が、カメハメハ大王の末裔で、広大な土地の所有者だからですかね。


等身大のハワイの「今」を舞台に、家族を愛すること、生まれた土地を愛すること、そういうことを迷いながらも選びとっていく人間の姿が、演出と脚本で実に粋に表現されていて、とても勉強になりました。
こんなのも描けるなんて、さすがハリウッドは大人ですな。