あだち充先生の名作、「タッチ」の連載が開始されたのが1981年、少年サンデー。
それからまるっと30年。
確かに南ちゃんは、マンガ史上最高のヒロインなんだろうなあ。峰不二子と双璧を成す。
南ちゃんと不二子と、どちらか一人選ばなきゃならないとしたら?
ってな話題、きっと男飲み会じゃー、盛り上がるんだろうなあ。
この本の筆者の主張は、だいたいこんな感じ。↓
「男は好きになった女性の中に、南ちゃんを探す。
つまり、男が好きな”女性性”を、抽出してキャラクター化したのが、浅倉南。
故に南ちゃんを嫌いな(異性愛の)男はいない!!」
えーっと、女子にとっての
「キャンディキャンディ」のテリィ、
「花より男子」の道明寺、
「ブラックジャック」のブラックジャック・・・・みたいなもんか?(すいません、最後のはワタシの趣味です。)
いやこの本・・・読んでて何度、
「・・・キモイ!!」
と叫んだことか。
ごめんなさい。
男心が分からん女で・・・だってマジキモイんだもん。
しかし、コレを読んで思った。
あだち先生は、まさにモンスターな女子キャラを創造してしまいましたね。
モンスター女子です、浅倉南は。
もう、女性目線で見たら、ホンマこの娘、何考えてるかさーっぱり分からん。
こういうと、大多数の(南ちゃんファンの)男性がイラっとするらしいけど、
まさに「男子の脳内女子」だわ・・・
ある意味AKB以上。
秋元康も及ばない。このフィクション性。
フィクションを愛するワタクシとしては、このように精巧な「浅倉南」というモンスターを、マンガ内にすんなり成立せしめた揚句、リアル男子の心を30年も鷲掴みにしているあだち先生の想像力に、ただただ感服するのみです。
南ちゃんのどこらへんが、脳内女子っぽいかと言うとね。
南ちゃんて、この本の解説を読むに、漫画の最初から最後まで、ずーっと、「たっちゃん」のことが好きなんだね。
一ミリも、「かっちゃん」に揺らがない。同じ顔なのに。
で、とにかく手を変え品を変え、ずーっとずーっと「たっちゃん」に、
「たっちゃんのことが好き」
って信号を送り続けて、レオタードになったりパンチラしたり。
たっちゃんがくじけたり怠けたりすると、
「たっちゃん頑張って!」とか「南を甲子園に連れていけ!」と
ほっぺにちゅっとしたりパンチラしたり。
恐るべきパンチラ力。
じゃなくて、最強女子力と言うそーな。
結局アレだ、この南ちゃんの「一途」さが、なんかウソっぽいというか、
何がしたいんだコイツは?というか。
まあ本来、女性の方が「恋愛」好きだとは思うけど、
あんなに新体操とかで世間の注目を浴びちゃってる学校のヒロインが、
いつもいつも「たっちゃんが好き」
ってウザいほど、行動や台詞で言い続けてるところが、脳内キャラっぽいというかキモいというか(わあ)。
そーいや同時期のサンデー連載、「うる星やつら」のラムちゃんも、
「ダーリンが一番」
ってずっと言ってたなあ。こっちのがずっとパンチが効いてるが。
フランス人人気はNO.1だそうです、鬼っ子ラムちゃん。
ラムちゃんは全然キライじゃないんだけどなあ。
浮世離れしているけど、たぶん、女の子は皆、ラムちゃんには感情移入して読んでたと思うよ。
でもなあ・・・
南ちゃんはなあ・・・・
まっっっっったく、感情移入出来ないんだよなあ・・・・
ずーっとたっちゃんが好き好きって言い続けてるループ感というか。
こんな「変わらない」人間、いるんかいな?
しかも「たっちゃん」からは、ほとんど何も、返礼が来ない訳ですよ。
弟「かっちゃん」に遠慮して、という設定だけど、女から見たら、ただのイジワルな男だな、って。
弟のことも、南ちゃんのことも、上から目線で見下してるから、「対等」に、
「俺も南が好きだ。野球がやりたい」
って、かっちゃんに言えなかっただけじゃねえの?
でも、そこがまさに、この漫画のドラマの核なんですよね。
国民みんなが、たっちゃんに感情移入できたのは、この男のずるさ、小心さであって、みんな愛されてる者の優越感を味わいたい。
そのカラクリは、たぶん、女子も一緒。道明寺とかテリィとかね。
だから「南ちゃんが好き」「道明寺が好き」ってタイプは、徹底的に受け身な小心者で、ナルシストな上、プライドが高くて承認欲求に飢えてるヒトなんだと思うんですよ。
なもんで、そういうマザコンかつファザコンな日本人の男女の心をがっちり掴む、ある意味「都合のいい」「奴隷的な」キャラクターを、極めてPOPにクリエイトした作者には、ホンマ頭が下がるけど、好きにはやっぱりなれないです。
「キャンディキャンディ」でも、アンチ・テリィ派だったっけ。
ワタシはどっちかっつーとアンソニーか、ちょっと気障なアーチ―が好きだった。
道明寺より花沢類のほーが好きかな?あの主人公になびきそうでなびかないところが。
もう南ちゃんが言いそうなことが、段々分かってくるんだよね。
全部オチは「たっちゃんが好き」って感じで台詞作れば、南ちゃんの出来上がり。
憎まれ口も、シリアスな場面も。
このマンネリ感・・・
たぶん女性の方が、男性の50倍くらい、変化に強い=変化が好き、恋愛で自分をステップアップさせたい=玉の輿願望が、強い生き物なんですよ。
だから幼ななじみで隣に住んでて、自分のことなかなか好きって言わないけどしつこくパンチラだけはチェックしてくる男のこと、そんな長いこと、精神的にカバー出来ないと思うんですよ・・・・
ものすごい無理ある設定だわコレ。
しかしこの不思議ちゃん南ちゃんを、30年もの間、マンガ界の不動のヒロインの座に置いた、あだち先生のキャラクター造型力、エピソード配分力、マンガ力は、ホンマにホンマにすごいんだよなあ。
フォロワーも生まれないもんね。
そして未だに野球アイドル漫画をお描きになってますし。
あだち先生の短編とかには、結構、毒のあるキャラが出てくるんですよね。
だからワタクシ、「南ちゃん」は、あだち先生がプロ根性を最大限に発揮して作り上げた、いわゆる「それ」用のキャラクターなんじゃないかな?と思ってます。
まあつまりアレだ、「冬ソナ」のヨン様みたいなもんだね。
ホント、フィクションて、あっちゅうまに現実をかっさらって言っちゃうから、ある意味怖いものです。