本格推理小説の最右翼、法月綸太郎先生の、その名も「法月綸太郎の冒険」を読みました。

名探偵の第一短編集のタイトルは、「○×△■の冒険」でないと。

つー理由で、このタイトル。

んで、作者と同姓同名の推理小説家が、探偵役です。

まあ面倒くさい。

しかしこのこだわりが、ミステリ好きのサガってやつですな。

 

えーっと、この短編集は1992年に出版されてますが、一読した雰囲気は、70年代くらいの感じがします。

作中の、特に女性の話し言葉が過剰に古い。っつーのもその理由ですが、

法月さんの文章が、非常にシッカリしてるんですよ。

硬質だが読みにくい訳ではない。寧ろその逆。

90年代の軽ーい感じが、全然しない。

この方、相当、文章が巧いヒトだな、と。

いわゆる雰囲気・会話体小説、ケータイ小説的なものがどーにもこーにも苦手だ。

つーヒトに、オススメでございます。

 

で、中身なんですが。

イヤこれ・・・・相当面白かったわ。

短編なのに、トリックの作り方、舞台の練り方、起承転結の構成の置き方など、

非常にち密に描かれています。

ページ数の割りに、情報量が多い。

つまり、無駄な言葉が無いということか。

でも決して、読みにくい訳じゃない。むしろ読みやすい。

さすが本格ミステリ・・・

文章だけで、読者に全てわからせようとするサービス精神が、まさに

読書の楽しみに合致してます。

 

特に、ワタシが面白くて面白くてつい唸ってしまったのが。

「カニバリズム小論」。

法月綸太郎の学生時代の友達が、殺人事件の容疑者として捕まります。

これが普通の殺人事件じゃないんだね。

というのが、容疑者が、被害者の女性(内縁の妻)の肉を、フツウに料理して食していたから。

なぜ、彼は、女性を殺して、その上食べていたのか?

決して、殺人行為の隠蔽ではなく(冷蔵庫に色んな部位を残している)、

また、彼は食べることに性的快楽を得ていた訳でもない。・・・では、なぜに?

とゆう、ホワイダニット?を、綸太郎が、友人の所を訪ねて、その会話の中で明らかにしていくんですが。

最後の、大どんでん返しがね・・・・

うおー。

素晴らしい。

 

お話としても素晴らしいですが、いわゆる「カニバリズム(人肉を食べる行為)」について、

古今東西、歴史や人間心理をひも解いて、この行為の深淵なる訳を

解説している下りが、ハンパなく面白かったわ・・・

カニバリズムに興味のある方は、ぜひ読んでみて下さい。

単なる異常行為と片付けられない、人間のもつ不思議さ、残虐さ、何が正気なのか?

みたいなとこまで、踏み込んでいます。

で、この結末・・・・

正常と異常のはざまを、ぐるっと一周して、両方見せてくれる、非常に手の込んだ一遍です。

どお?読みたくなった?

 

その他6編収録されていますが、どれもトリックに手が込んでいて、

動機もバラエティに富み、よく練られていて、素晴らしいです。

「ウェルメイド」

という言葉がピッタリな短編集。

個人的には、新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」

に匹敵する面白さだと思う。いやマジで。