2005年第二回本屋大賞を受賞した、恩田陸さんの超有名作「夜のピクニック」。

多部未華子さん主演で映画化もされてます。

 

本屋大賞って、数ある文学賞の中でも、外れナシの印象。

 

第一回 小川洋子「博士の愛した数式」

第二回 恩田陸「夜のピクニック」

第三回 リリーフランキー「東京タワー」

第四回 佐藤多佳子「一瞬の風になれ」

第五回 伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

第六回 湊かなえ「告白」

第七回 冲方丁「天地明察」

第八回 東川篤哉「謎解きはディナーの後で」

 

さすが書店員さんの投票でなってるだけに、良く分かっていらっしゃる。

普段ぶっくお○か、amazon.マーケットプレイスでほぼ80%の本を買っているワタシとしては、大変申し訳ない気持ちになりますが。書店員さんごめん。

 

で、「夜のピクニック」。

お話は超有名ですが。

 

全校生徒が24時間かけて80Kmもの距離を歩く、高校の伝統行事「歩行祭」。

3年の貴子は、最後の歩行祭で、自分に一つの賭けをする。

恋愛感情とは別の、ある曰くつきの理由から、ずっとぎくしゃくした関係だった同じクラスの融(とおる)に、声をかけるということ。

しかし、二人のぎくしゃくした様子を、クラスメイトは誤解したりくっつけようとしたり、予期せぬ闖入者に掻き回されたり、空回りする二人・・・みたいな。

 

まあ修学旅行の夜の高校生の会話を、「歩行祭」に移して、ロードムービー風にしたといったらいいか。

こう書くと、軽い青春小説みたいですが、まあ実際そうですが、いやこれ、恩田さんのリーダビリティある語り口にのせられ、なかなかどうして、評判通り、読み応えある良品です。

 

これ読んで思ったのは、恩田さんは登場人物一人一人を、すごく愛情をもって、丁寧に描写してるな、ってこと。

まるで自分のクラスの、大事な友達の姿を見るように、感情移入できます。

 

そして、こうやって赤の他人のことをじっくり観察したり、長い間一緒に過ごすことによって愛着を得たりするって行為は、まさに学生時代ならではのことだったんだな、と大人は気付く。

 

貴子は、もうここにはいない、ある友達の思いによって、まさに背中を押され、賭けに勝ちます(自然なネタばれ)。

友情ごっことも違う、子供ならではの無償の愛情行為というか。

みんな、なるべく汚れないで、そのまま大人になってくれ。と願わずにいられない。

まあムリだけど。

 

貴子は融を、融は貴子を、会話は交わさなかったけど、どうしても気になる相手として、その気配を3年間、ずっと感じ続けてきます。

これまたネタばれですが、貴子は融の父親の浮気相手の娘だったんですね。

そして融の父親は、二人が中学のとき、癌で他界しており。

融は、貴子とその母親を、父の葬式で初めて見かける。

自分の母親より、自立した大人の女で、魅力的な貴子の母親。

貴子も、複雑な家庭に育ちながら、自分と同じ進学校に入学し、自分を憎むでもなく、淡々と毎日を過ごしている。

オレならそーできない・・・って、コンプレックスを感じる融。

なぜに正妻の子供であるオレが、後ろめたく思わなきゃならないんだ!?って、イライラしとる訳です。

 

つまり、異母妹である二人を主人公にすえて、高校生が家族から異性へ、つまり子供から大人へ、自立する過程を、「歩行祭」という一夜のイベントを借りながら、小説にしとる訳だね。

 

兄弟でもあり異性でもあり、という貴子と融の関係性が、犬っころのよーな子供同士の関係から、大人同士の一歩ひいた関係に変わっていく。

それにより、やっとお互いが自分と相手を赦し、認め合えるよーになる。

この場合も、女の貴子のほうが自立が早くて、それを融がイライラしながら観てる。ってゆーのがリアルですね。

 

コレ読みながら思った、もし死ぬときに、「一瞬だけ過去に戻っていーよ」って言われたら、やっぱ十代の、学生時代に戻りたいなと。

当時はどうってことなかったし、さほど青春を謳歌しているタイプでもなかったし、寧ろ早く大人になりたい、仕事したい(・・・・・)って思ってたけど。

 

大人になると、もう人間関係とか人の感情のこととかで一喜一憂したりってことが、ホント無くなる。

なぜなら、自分が一番大事という価値観の中で全てのヒトが動いてる訳で、あんまりな行為に出会ったとしても、「なんでこんなことするの?!」とかって、もはやあんま思わない。

いや、もちろん、そういう行為には、なるべく出会いたくないですよ?

でも、そこはすごく分かり易いというか。

だから大概のことに諦めがつく。

 

そういう世界の中で、みんな毎日つつがなく仕事回してくことで精いっぱい。

自分が一番かわいいのは当たり前だけど、その上で「つつがなく仕事を回す。」ってことにちゃんと意識が向いている人が、いわゆる「仕事が出来る」、「仕事しやすい=一緒にお仕事したい」人達なのではないかと。

そーいう人達に巡り合うと、「ああ良かった・・自分は幸運だわ。神様ありがとう。」って感じで。

それはそれで、友情なのかもしれないけど、

学生時代のそれとは、熱が違うというか、性質が違うというか。

 

死ぬ時に「仕事してたときは充実してたな・・・」とか思うのかもしれんけど、まあ戻りたいとは思わないだろーな間違いなく。

 

つー訳で、やっぱ誰しも、そーいう学生時代のあれやこれやを愛おしく思うものなんだね。

それと恩田さんの人物描写の細かさ、繊細さ、愛情深さが、ウェットではなく、極めてプレーンに書かれている。

イヤ汁が少ないといいますか。

ここらあたりが、男女両方に支持され、今作が本屋大賞1位に輝いた理由かと。

 

そーそー、これ、ハードカバーが○っくおふで¥100だったんよ。

もう即買いしましたよ。

書店員さん、ごめん・・・