- 空想オルガン/初野 晴

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楽しみにとっておいたんですけど、解禁しちゃいました、初野晴さん「空想オルガン」。
2011年このミス33位、本格ミステリ20位の青春ミステリです。
高校生のチカとハルタの吹奏楽部員コンビが、学校外・内で起こる様々なミステリ的難問を解決していく、とゆう。
「退出ゲーム」「初恋ソムリエ」に続く、シリーズ3作目です。
このシリーズは表紙も秀逸↓
で、「空想オルガン」なんですけども。
チカとハルタ達は、吹奏楽部の甲子園、普門館への第一歩として、地区大会に出場。
その過程で出会う4つの事件が、それぞれ4編の短編となって纏められています。
このシリーズ、ワタクシ大好きなんですけども。
ラノベっぽい会話とか、チカとハルタのテンプレなキャラクター設定(チカは単純元気娘、ハルタはイヤミで白眉な美少年)とか、微妙なフォーマットなんだけども、推理は本格だし、ギリギリ大人目線があるというか。
今回は、その大人目線という意味で、最終話の「空想オルガン」が実にこのシリーズらしいストーリーでしたね。
話者の驚き、それまでのお話の伏線、結末の鮮やかさなど、読みどころが多いです。
以下ネタばれますが。
「空想オルガン」では、オレオレ詐欺の「支店」をやってる男が主人公。
彼は、小さい頃から腎臓を患い、ずっと闘病人生を歩んできた。
それでも吹奏楽をやり、高志という友達も出来た。
が、新卒のとき、腎臓移植手術しないと助からない状態になり。
その時病院で、医者になっていた高志と再会。
男は、てっきり、母がドナーになってくれると思っていたのに、母親はドナーを拒否。・・・絶望する男。
結局、彼は、高志からドナー提供され、手術は無事成功。
で、高志は不運にも、男の手術の日に交通事故に遭って死んでしまう。
男は、それまでかかった治療費(ってことなんだと思うけど)500万を闇金で借り、親に返し、さっさと親子の縁を切ろうとする。
そして闇金業者から、「オレオレ詐欺」の加担を持ちかけられる・・・・
ってゆう感じです。
結局、彼は、「高志」の一人残った母親に「オレオレ」をやります。
簡単に引っかかる母親。
高志は死んだのに・・・
母親は、最後に息子がドナー提供した男を、ずっと探していたんだね。
それを知ってて、母親を騙す男。
彼は、お金は持ち去らず、「高志(の腎臓)から、母さん体に気をつけてって伝言を貰ってた」と言い残し立ち去る。
で、男は、オレオレの支店長から、自分の母親がオレオレ詐欺に引っ掛かったことを知らされる。
母は、自分が親子の縁を切ろうとして渡した500万だかを、ずっと大事に持っていたのだ。
男は、やっと長年の恨みから解き放たれ、自首することを決意する・・・・
とゆう、見事なネタばれなんですが。
作者の「ヒトは、当たり前のように受け取ってきた無償の愛を、次の誰かに捧げることが出来た時、初めて大人になれる。」
とゆうお考えが、見事に着地した一遍ですね。
オレオレ詐欺・・・未だ年間、ウン億円の被害になるゴッツイ犯罪ですが、人間心理をついていて、素材として未だ面白いなと。不謹慎ですが。
ミステリの素材としてのオレオレは別として、実際のオレオレ詐欺についてワタクシはちょっと、そこまで同情が出来ない部分があります。
ってゆうのはですね、親が子を思うのは無償の愛だとしても、これ、結構な大人になった子供の不始末を持ち掛けられて、ウン百万振り込んじゃう・・・ってゆうカラクリじゃないですか?
まず、「結構な大人の息子」には、自分でケツ拭かせましょうよ。
それと、「不始末」をとりあえずの一時金で解決できる・・・ってゆうのは短絡スギじゃあないですか?お母さん。
未成年ならともかく。
大人同士でいざこざを起こした揚句、親の金で大人の解決させてくれ・・・・って電話がいきなりかかってくる訳ですよね、音信フツウの息子を名乗る男から。
この一連の行動を見るだけで、もうずるがしこい、完全な大人の男ですよ、息子はんは。
「オレオレ詐欺」に引っ掛からないコツは、
「自分の子供はもう大人。犯罪者になったとしても、自分で償わないと。」
ってゆう愛のある突き放し?なんじゃないかと。
それと、世の中、お金で解決できることは大変に多いが、それなりの手順を踏んで使わないと、永遠にむしられまっせ。
お金払ったからと言って、「無かったこと」には出来ません。
今の生活を維持・補強したり、未来への投資にすることは出来ますが、過去を「消す」のはムリでしょ。
「消せない」けど、過去の影響を今の金で何とか軽減することは出来ると思うけど。
例えば、昔犯罪者だったけど、今事業をやって大金持ちになってたら、たぶん銀行は金貸してくれるし家も売ってくれるし、故に快適な生活を送れることでしょう。
一方、犯罪歴ゼロだけど、今カツカツな人は、なかなか銀行も金貸してくれませんし、ヘタすりゃ保証人も見つからず家も借りられず、ひもじい生活を強いられるかもしれませんね。
そういうときお金は信用だな・・・って感じですけども、「犯罪を犯した事実」まではチャラに出来ませんからね。
そこんとこ、親はキッチリ子供に叩きこまないと。
犯罪犯したんなら、その落とし前の人生として、色んな意味で「お勤め」して、きっちり働いてお金稼がないと、この世の中に居場所なくなるよ、と。
結局金かよ?って感じになりましたが、そーではなくて、お金は色んなことの代替として万能だが、現実を消すことは出来ない、と。
だから安易に、金払えば色んなことがチャラに・・・って考えるのは、違うでしょ、と。
その考え方だと、永遠にムシられそーです、色んなところから。
とはいえ「空想オルガン」でのオレオレは、今はもう縁が無くなってしまった息子たちを装った、たった一本の金の無心の電話に、縋りついてしまう母心が描かれていましたね。
「縁が無くなった息子」っつうのが、切ないモチーフでしたね。お互い自業自得とはいえ・・・
ヒトは現実の辛さを、空想で補って生きてる生き物なのかもしれませんね。
とゆうことを考えさせられた「空想オルガン」。
ラノベ風に見せて、意外と大人なミステリーでしたとさ。
