このミステリーがすごい! 2011年版/著者不明
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やってきましたこの季節が。

このミス1位は・・・・


悪の教典 上/貴志 祐介
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でした。

で、読んでみたさ。

面白かった!!

上下巻のすごいボリュームだけど、リーダビリティがすごい。

貴志佑介さん・・・すごい巧みな作家さんですね。


お話はですねえ。

32歳、英語の高校教師、蓮実先生(通称ハスミン)。

生徒に人気のある、イケメンで仕事のできる、今時の好青年・・・と思いきや。

ハスミンは、他人への共感能力に著しく劣る、生まれながらの性格欠陥者という設定で、

その自己中心的な生き方の必然的な帰結として、どんどん殺人を犯していってしまうんですね。

最終的には、自分の受け持ちのクラス、ほとんどまるっと全員、殺してしまいます(生存者3人だけ)。


このハスミンのキャラ設定が秀逸。

自己中心的で、他社への共感能力に劣る・・・って、まんま現代人の姿じゃないですか。

だから最初、ハスミンが、フツーの優秀でソツない先生という風に読めるんですよね。

でも、だんだん彼の内面描写を読むにつれ、「アレ?」って思う仕掛けになってます。


特にハスミンが、高校生の愛人?とエッチする場面、それなりに彼女を酔わせる行為をする訳だけど、読者には彼が感情の伴わない、欲情だけのセックスをしていることが丸わかりで、コワっ。って感じでした。

このカラっと渇いた、恐怖のセックスシーンは、かなり不気味でした。


そして最後の、クラス丸ごと一個分、大量殺戮していくシーン。

あれよあれよと、ハスミンが自己防衛のため、計画を狂わせて「全員殺す」って判断を下さざるを得なくなるカセの作り方が、ヒジョーに面白かったです。

ああ、狂った人ってこうなんだ・・・みたいな。

最後の最後、「彼が新しいストーリーを作り始めた」場面、つまり罪逃れの為、精神異常者を装い始める描写は、非常にリアル感がありましたね。


しかし最近、こういう「ピカレスク」型主人公というか、絶対能力者みたいな、なんでも出来て冷静で、でも性格がぶっ壊れてる天才犯罪者みたいなキャラクター、多くないですか?

もうそろそろ飽きてきた。

フツーのおとーさんがとんでもない殺人を犯す小説が読みたい。

しかし悪役って、賢くないと盛り上がらないからねえ。


ワタクシ的には、天才悪人VS天然ボケ探偵の組み合わせが好きなんですよー。

作家さんでは、初野晴さん、乾くるみさん、鯨統一郎さん、加納朋子さんが一押し。

皆さん、こう見えて?本格ミステリ派です。

ランキングに、初野さん「空想オルガン」、乾さん「セカンドラブ」が入ってて嬉しかった。

東野圭吾、伊坂幸太郎とかはあんま、食指を動かされないワタクシ。

そういう方は、ぜひこの4人のミステリを読んでみてほしいなあ。


とはいえ、今年の「このミス」は、読んでみたいなーって作品が多くて、充実の1年だった気がします。

京極夏彦さん「死ねばいいのに」は、私の仕事中の口癖をまんまタイトルにしてることもあって(最低・・・)、早速年末年始の読書用に購入しましたよ。

あと東川篤哉さん「謎解きはディナーの後で」も、登場人物の女性刑事が私と極めて似ている名前(宝生麗子っていうの)だったので、他人と思えず購入。

あと奥泉光さんの「シューマンの指」、島田荘司さんの「写楽 閉じた国の幻」、宮部さんの「小暮写真館」も、ブックOFFに出てきたらゼヒ読みたい(わあ)。

それと、梓崎優(しさきゆう)さんとか、円据挽(まどいばん)さんとか、新人さんもバランスよくラインナップされてて。

やっぱミステリ業界は活況を呈してるな、と。


しかしこの貴志佑介さんの「悪の教典」は、基本エンタメでありつつ、現代的な悪の切り口といい、殺人はもちろん、日常的なディティール描写の細かさといい、思った以上に面白かったです。


映像化する際には、ハスミン役はぜひ堺雅人さんでお願いしたい。