夏休み前にブック・オフに¥5450円、書籍を売り。
そのお金でまた¥1505円分、本を買い。
うーん、こーしていつまでたっても家から本が減らない・・・
んで、買った本は以下の通り。
①角田光代「夜かかる虹」・・・¥300
②桐野夏生「I’m sorry,mama.」・・・・¥105 安っ。
③鯨統一郎「浦島太郎の真相-恐ろしい八つの昔話」・・・¥250
④小池龍之介「煩悩リセット稽古帳」・・・¥500 友人Fさんのオススメ本。まだ読んでないんですが。
んで、①~③の小説の中で一番面白かったのが、意外や意外?、
②桐野夏生「I'm sorry,mama.」
でしたわ。
これ、すんごい桐野ワールド炸裂してる秀作ですよ。
アラスジを言うと。
舞台は現代。アイ子という47歳の主人公は、娼館で生まれ育ち、「星の子学園」とゆー、孤児施設で大きくなる。
彼女は親の顔を知らず、娼館の女主人から「あんたの母親の形見だけど、いるか?」と言われて、白いパンプスを一足渡されただけ。
んで、このアイ子さんとやらは、子供の時から一様に周囲の人間から「気持ち悪い」「嫌な奴」と忌み嫌われて育つ。
大人になってからは、その異常に発達した環境適応能力から、周囲の人間にたかり、金や物を盗み、バレて居心地が悪くなると放火して逃げる・・・みたいな繰り返し。
根無し草みたいな生活しか送ってないから、周囲の人間もアイ子がどこから来てどこにいったか、ウヤムヤのまま忘れていき、警察にも捕まらず・・・みたいな。
最終的には、彼女は自分の生みの親を探す。とゆ-目的の下、殺人・窃盗を繰り返していくんですが。
コレ、ブック・オフに単行本、文庫本とも複数冊あり、どれも\105・・・・
皆、たぶん手元に置いておきたく無いんだろーなー。
まあソレくらい、アイ子に感情移入も出来なければ、他の登場人物たちも胸が悪くなる位、どーしよーもない人々です。
でも、コレって作者がわざとやってるな、と。
ここまで醜悪にバイヤスかけて描いた「アイ子」という女ですが、フシギな感情を読者に呼び起こさせるんだよ。
そこがすごい、桐野さんって達者な作家さんだな-、と思ってしまった。
で、「フシギな感情」って何だよ?つー話なんですが。
アイ子が、家政婦として居座ったホテルの女社長の所から、愛人が産んだ息子「安史」を誘拐し、連れまわす場面なんですが。
アイ子は、義理の母や実の母に愛されて大事に育てられた「安史」に腹が立ってしよーがなく、自分の悲惨な子供時代の話を綿々と安史に語って聞かせる。
余りの陰惨な話のオンパレードに、とうとう安史は、「おばちゃんの話、気持ち悪い」と言って、道端で吐く始末。
このアイ子の、弱冠知能が弱め(すみません)で、支離滅裂になりながらもディティールだけは異常に具体的な語り口調が、ホント桐野さんはメチャクチャ上手いんですよ。
んで、確かに「気持ち悪い」話なんですが、こんなに子供時代の事をハッキリ覚えていて、それをいい年して幼い安史に嫉妬心を抱き、せっせと話すアイ子という中年女性が、どっかいじらしい、子供の姿にかぶってくるんですよ。
結局、アイ子という人物は、親・・それも母親からの愛情を全く知らず、周囲の人から忌み嫌われて育ち、自分も人を愛することを全く知らず、それでいて大した事のない(失礼)自分の貧しいセックスを交渉材料として巧みに使い、生き延びていく。そーいう醜くて卑しい人間として描かれているんですが。
そんなアイ子にも、ひとかけらの「いとおしさ」が、感じられるんですよ。
これにはビックリです。
結局、子が母を慕う気持ちには、どんな醜悪な人物だろうと、どんなに年を重ねても、ヒトの心を打つものがあるんだな、つーことが、リトマス試験紙のよーに浮かび上がってくる。
これ、アイ子が女性っつーのもまた秀逸な設定で。
ホント、憎たらしい女ほど、始末に追えない存在は無いな。つー感じで、性格悪いわ手癖は悪いわ、下品だわヒト殺すわ・・・・それも「アイ子ならやりかねん。」つー、人物像に描かれてるんですよ。
この小説は、桐野さんにとっちゃー心外かもしれんが、「女性」が「自分の母性を試される」小説だと思う。
ここまで醜悪な子供=アイ子・・・・・もはや中年で、しかも同性である女・・・・を通して、浮かび上がってくる人間の「いとおしさ」。
あなたは、こーんなに邪悪で矮小で卑しい「人間」って存在を、それでも愛せる「母性」を、持っていますか?
つー、最後通牒みたいなもんです。
という意味では、男性は読者に想定されてないのかもしれんね・・・
つうか、はっきり言って、解説を島田雅彦が書いてたけど、男には分からんと思うよ、この小説。
ワタシもはっきり言って、アイ子みたいなヒトとは関わりたくないし、一生避けて通りたいタイプのキャラクターです。
読者100人中100人が、そー思うでしょう。
でも、ここまで醜悪な人間模様を読んで、アイ子の行動様式に、「お前な~」と思いながら、「やっぱそーくるか」みたいに、先読みしちゃう自分がいる。
つーことは、アイ子的な思考回路が、自分の中にもありえるっつーことな訳で。
つまり人間て奴は、自分も含めて、小室哲哉風に言うと、等しく「いとしさと醜さと矮小さ」で構成されてる存在なのだね・・・と、納得させられてしまう訳です、否が応にも。
「女性」にとって、「母親探し」=「自分の母性を探す」旅は、一生の旅なのかもしれません。
つう意味で、この「I'm sorry,mama.」は、キレイ事一切無し、「女性」性の極北を描ききった怪作であると言えよう。
卑しくもヒトの親になろーとしてる女は、全員読むよーに。
などと、つい上から目線で言いたくなる未婚・子無しのワタクシですが、そんな冗談はさておき、この本はマジ劇薬ですよ。
裏表紙に取り扱い注意・・・って書いてブック・オフろーかな。
って、それじゃータダでさえ¥105しか値がついてないのに、買い取って貰えないじゃんか!
つー訳で、ワタシの「劇薬書棚」に、しばらく保管しておきます。
