このCDを聴いたのは、最近、HMVの店頭でガンガンかかっているのを偶然耳にしたからなんですが。

椎名林檎さんの「ギブス」を、クセの無い澄んだ歌唱でカバーしている、若い女性の歌声。

どーも最近のカバーアルバムって、特にJ-POPの奴は、プロによるカラオケ大会かよ?的なモンが多く、出す意義あんのかい?と思ってたんだが、このマリエさんのカバーは、まさに「マリエ再生工場」の如く、元歌のミリョクを推定8倍くらい膨らませてて、これぞ企画力の勝利っつうカバー・アルバムでした。


マリエ・ディグビーさんとは、アイルランド系のおとーさんと、日本人のおかーさんの間に生まれた1983年生まれの米国人。

母国語は英語で、幼少の頃、日本語学校にも通ったことがあり、日本語での歌唱は、ほぼ完璧な発音です。

もともとは、ソングライターのコンテストで優勝して、レコード会社に所属が決まったけど、なかなかデビューへの道が開けず、自分でリアーナの「アンブレラ」をギター1本でアコースティックにカバーし、YouTubeにUPしたところ、1100万PVを記録したそーな。

そっからデビューアルバムを発表、今作は日本だけのオリジナル企画で、今年の五月にはセカンドが全世界でリリース予定っつう、経歴の持ち主です。


リアーナの「アンブレラ」をカバーしたYouTubeは、ワタシもチェックした記憶がある。

あの大ヒットR&Bを、アコギでキャロル・キング風にカバーしてて、かなり新鮮だった。

ただまあ、「アンブレラ」自体が数年に1曲のレベルのメガヒット曲だっただけに、やっぱ元曲あってこそのカバーで、せいぜい「自己プロデュース力のある人だな。」っつう程度の感想でしたが。


そんな彼女が今回の「セカンド・ホーム」では、J-POPカバーに挑戦してるんだが、カバーしてる曲は以下の通り。

1.LUNASEA「gravity」

2.スピッツ「チェリー」

3.アジアンカンフージェネレーション「君という花」

4.林檎さん「ギブス」

5.chara「やさしい気持ち」

6.ウルフルズ「バンザイ」

7.今井美樹「PIECE OF MY WISH」

8.夏川りみ「涙そうそう」

9.エレカシ「今宵の月のように」

10.ミスチル「es」

11.ドリカム「LOVE LOVE LOVE」


これ、彼女の意向も当然入ってるとは思うが、プロデューサーが明確な二つの意思を持って選曲してると思う。

1つは、元曲も、マリエさん同様、透明感溢れる歌声で歌われている曲(2.7.8)。

もう1つは、元曲の歌い手が、かなり個性的な歌唱をしている、アクの強い曲(1.3.4.5)。

んで、マリエさんの歌唱でミリョクが再生されるのは、圧倒的に後者のタイプだ、とゆーコトが良く分かった。


LUNA SEAの曲は、河村隆一氏の声では、よくも悪くも「ファンの為だけの曲」に感じられて、正直、全く興味がありませんでした。でもマリエさんの透明感溢れるウィスパー系のクセの無い歌唱で聴くと、こんなイイ曲作ってたんだ・・・と見直す出来栄え。コレ曲の雰囲気は結構、ダークなんですよね。マリエさんの癒しヴォイスでもそこはちゃんと表現されて、やっぱ彼女は、ロック魂を持ってるヒトではないかと。


林檎さんの「ギブス」も、元々林檎さんの中では一番スキな曲なんだが(グランジ好きとしては「だってカートみたいだから、あたしがコートニーじゃない」と歌われちゃったらな・・・)、あの個性的な歌唱に惑わされて、メロディの良さや歌詞の世界が、実はストレートに伝わりにくかったんだ。と、ゆーことが、マリエさんの歌唱を聴くと、よく分かる。


charaの「やさしい気持ち」も、ご本人の舌ったらずの歌唱ではカマトト(死語ですね。)っぽくて、メンドクサイ女子の好意の押し付け的な世界が前面に出ていたが、マリエさんが歌うと、母性すら感じさせる、結構骨太な歌詞世界だったのね・・・とゆーコトに気付かされた。


そしてアジカンの「君という花」では・・・そーだ、日本のロック界にはアジカンがいるじゃないか!と今更ながら再確認する始末。アジカンの後藤氏の歌唱も、そーいや結構独特だよなあ。


んで、これらの元曲が古びない理由って、もちろんメロディも歌詞も突出してるんだが、実は「グルーヴ感」がキッチリあるからではないかと。

んで、マリエさんの歌唱も、声質は癒し系なんだが、リズム感がイイんだよね。

「アンブレラ」も、「エラ・・・エラ・・・エラ・・・」つうフックのところは特に、リズムがキッチリ取れないと、歌のミリョクが半減する曲だし、このカバーアルバムも、プロデューサーと彼女自身が、「癒し声」+「リズム感」がマリエさんの武器だっつうことに意識的で、そこにきちんと立脚した選曲になってると思います。


そして、ワタシはそーいう「自分の武器=売り」がキッチリ分かったヒトが作っている音楽が、とてもスキだ。

「売り」とか、「コンセプト」とか、あんま客観的に突き詰めないで、ぐっちゃぐちゃで音楽作ってるのが実はUtadaさんでは無いかと・・・おっと、また毒吐いちった。


あと、マリエさんの武器そのものである「癒し声」と「グルーブ感」の両立って奴が、やっぱレアなんですよね。

R&B歌姫の中には結構いるが、マリエさんの歌唱はあくまでロックな方向で、そこもレア。

んで、コレ、母国語じゃないからか、自分で書いた曲じゃないからなのか・・・・男一人称でも女一人称でも、曲への思い入れが過剰過ぎず、適度に歌い手が曲世界と距離をとっている感じで、そこもイイです。


ただ、6.から11.までの選曲が、いかんせん古過ぎね?

こりゃプロデューサーの思いいれが強すぎたのか、著作権の問題か?


しかし、90年代のJ-POP・J-ROCKはかなり頑張っていたな、という印象。

2000年以降のJ-POPで、カバー・アルバム栄えするよーな個性的な曲って、そんなあったけかな?

つーことをついつい考えてしまいました。