日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社は4日、東京証券取引所に株式を上場し、記念の式典で日本郵政の西室泰三社長らが鐘を打って上場を祝いました。午前9時に始まった取り引きで、最初の値は3社とも売り出し価格を上回り、初値は日本郵政が売り出し価格を231円上回る1株・1631円、ゆうちょ銀行が230円上回る1株・1680円、かんぽ生命が、729円上回る1株・2929円となりました。初値を基にした時価総額は、3社を合わせて15兆円を超え、24兆円余りだった28年前のNTTに次ぐ大規模な上場となりました。一方、4日の終値は、日本郵政が1760円、ゆうちょ銀行が1671円、かんぽ生命が3430円、5日も上昇して終わりました。日本郵政の株式は、これまで政府が100%保有していましたが、今回売りに出されたのは11%で、株式の売却益はすべて東日本大震災の復興財源に充てられます。日本郵政は、平成17年の衆議院の解散・総選挙で民営化の是非が問われたあと、平成19年に民営化し、上場を目指して準備を進めてきました。上場が実現したことで、今後は市場に評価される成長戦略を示すことが課題になります。日本郵政の西室社長は「『そばにいるからできることがある』という精神で、郵便ネットワークを生かした新たなサービスに積極的に取り組む。また、国際物流事業などで積極的な投資を行って企業価値を上げていきたい」。日本郵政は、平成17年に当時の小泉総理大臣が衆議院の解散・総選挙で勝利したあと、19年10月、郵政民営化法によって、「公社」の形態から「株式会社」となり、民営化しました。郵政民営化法では、平成29年9月までに貯金と保険を手がける金融2社の株式をすべて売却すると定められていましたが、政権交代によって法律が見直されました。平成21年、民主党政権の下、日本郵政株式売却凍結法が成立。持ち株会社や金融2社の株式、さらに施設の売却は改めて法律で定めるまで凍結される。その後、上場の是非を巡って議論が続きましたが、東日本大震災のあと、復興財源を確保するため日本郵政の株式を売却すべきだという声が強まりました。その結果、平成24年に成立した改正郵政民営化法では一転して、できるかぎり早期に日本郵政の株式の3分の2を売却するとされ、日本郵政が保有する金融2社の株式はすべて売却することを目指すことになりました。これによって、株式を上場させる検討が再開され、去年12月、日本郵政は傘下の金融2社と共に、ことしの秋、東京証券取引所に上場する計画を発表しました。今回、3社の株式は、それぞれ11%分が売り出されましたが、日本郵政は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式について、3年から5年後をめどに保有割合を50%程度になるまで売却を進める方針です。「日本郵政」は今後、100%の株式を保有する子会社の「日本郵便」について、どのような成長戦略を示せるかが課題となります。日本郵便は郵便や金融のサービスを全国一律に提供する「ユニバーサルサービス」が法律で義務づけられています。しかし、総務省の試算では、全国2万4000か所余りの郵便局のうち、8割で郵便事業が赤字だということです。このため、8年前の郵政事業の民営化以来、郵便物の集配業務の機能を一部の郵便局に集約するなどして、郵便局の数は維持しながら効率化を進めてきました。その第一弾として、ことし5月、郵便物を配達先ごとに分類する、物流拠点が埼玉県和光市で稼働を始めました。これまで、物流拠点の役割を担ってきた全国の駅前の郵便局は、施設が手狭でトラックなどの出入りが不便だとして、今後は、高速道路の利便性がよい郊外に大規模な拠点を整備し、全国に1100か所ある郵便局の物流拠点を2020年までに70か所に集約する。一方、物流拠点の役割を終えた駅前の郵便局は、商業ビルに姿を変えようとしています。日本郵便は、立地のよい全国の駅前郵便局などを商業ビルとして整備してテナントの賃料など、不動産ビジネスも今後、強化したい考えです。ことし5月には、およそ6200億円でオーストラリアの物流最大手、「トール・ホールディングス」を買収。トールは、アジアを中心に50か国以上に拠点があり、国際物流事業を展開しています。日本郵便は副社長に加え、40代以下の若手職員など合わせて15人を現地に派遣し、国際物流のノウハウを取り込んで今後、海外での物流事業を強化する考え。ゆうちょ銀行の貯金量は177兆円に上り、大手銀行グループの預金量を上回るものの、利益率では大手金融グループを下回っています。ゆうちょ銀行は、上場のあとも法律上の規制があるため、「銀行」とはいいながら、企業への融資や個人向けの住宅ローンなど「通常の銀行業務」が認められていません。
このため、収益力を引き上げるには、利用者から預かる貯金を元手にした資産運用を強化しなければなりません。この切り札として、ことし5月、ゆうちょ銀行の社長として外資系金融機関から長門正貢さんを招きました。8年前の民営化直後、ゆうちょ銀行の資産運用はリスクは比較的低いものの、大きな収益は見込めない国債への投資が76%に上っていました。徐々に、投資先の多様化を進め、現在、国債の割合は50%程度にまで低下しています。ゆうちょ銀行では、上場のあとはさらに海外の証券などの割合を増やしていくことにしていて、資産運用の責任者など、およそ10人を外資系金融機関などから引き抜きました。ゆうちょ銀行の長門正貢社長は、「やれることはやっぱり運用を磨くこと。非常に深くて多様な金融市場に打って出て、世界で有数の機関投資家になりたい」と話しています。