日米外交筋によりますと、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で中国が浅瀬を埋め立てて人工島を造成していることに対し、アメリカ政府はアメリカ軍の艦艇を人工島から12海里=22キロの海域の中に派遣することを決め、27日午前、アメリカ軍のイージス艦「ラッセン」がスビ礁の人工島周辺を航行したということです。12海里は沿岸国の領海と認められる範囲で、中国政府は人工島の造成により主権の主張を強めていますが、アメリカ政府は人工島は領海の基点にならないとしてこれを認めていません。さらにアメリカ政府は、人工島の軍事拠点化が進めば地域の安全保障を不安定化させるとして、中国側に再三、すべての作業をやめるよう求めてきました。しかし、中国は滑走路などの建設を強行し、先月の米中首脳会談でも基本的な姿勢に変化が見られなかったことから、アメリカとしては中国の主張を認めないことをより明確に示す必要があるとして、今回の派遣に踏み切ったとみられています。今後、米中間の緊張が高まることが予想されます。海上自衛隊で自衛艦隊司令官を務めた香田洋二元海将は「海洋の自由利用、航海の自由、中国が造成している人工島は国際法上領海の起点にはならないという、3つの点を国際社会に訴えるのが主な目的だと思う。航海の自由はアメリカの基本的な理念で、中国の主張を容認できないという姿勢を行動で示す必要があったのではないか」「アメリカは、人工島についてこの半年以上中国への警告を続け、目に見えないところでも交渉を続けてきたと思うが、進展が見えず、これ以上引き延ばすと国益に反するという譲れないところまで来たのだと思う」。武力衝突の可能性については、「今の米中関係を踏まえれば、中国にとっては一方的に武器を使用することはみずからの国益を台なしにすることになり、警告といった武器を使用しない選択肢を優先すると思う。アメリカとしても中国から大きな軍事的な反発はないという判断があったのだろう」「アメリカとしては、航海の自由を主張するにはこの1回では不十分で、この先、何度となくこうした行動に出ることはありえる。その意味で、米中の緊張状態は続くだろう。日本としてもアメリカと協調しつつ、中国に訴えるべきことは訴えていくことが必要だ」。南沙(スプラトリー)諸島は南シナ海の南の海域に位置するおよそ200の島や岩礁、浅瀬からなる島しょ群で、中国のほかにフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張。このうちブルネイ以外の5つの国と地域がそれぞれ一部の島や浅瀬を実効支配しており、中国は自国の実効支配下にある7つの浅瀬を埋め立て、人工島を造成しています。中国はおととし12月にジョンソン礁で埋め立てを開始したとみられ、その後、去年夏ごろまでにガベン礁、クアテロン礁、ヒュージ礁、ファイアリークロス礁、スビ礁で埋め立てに着手、さらにことしに入りミスチーフ礁でも作業が確認されるなど、急速にその規模を拡大させました。その結果、アメリカのシンクタンク、CSISの分析では、埋め立てた面積は7つの人工島で合わせて12.82平方キロメートルに及んでいます。人工島では大規模な港湾施設のほか、コンクリート建築のビルなどの大型施設、さらにレーダー用とみられる施設の整備などが確認されています。さらに、ファイアリークロス礁では戦略爆撃機も離着陸できる3000メートル級の滑走路がほぼ完成し、CSISではすぐに運用できる段階にある。最近、スビ礁とミスチーフ礁でも同様の規模の滑走路を建設する動きが確認され、アメリカ太平洋軍のハリス司令官は、最新鋭の戦闘機やミサイル施設などが配備されれば南シナ海全域を実効支配することも可能になりうるとして強い警戒感を示していました。これについて中国側は、埋め立ては国防上の必要性と民間の需要を満たすためのものだなどと説明する一方、習近平国家主席は先月、ワシントンでオバマ大統領と会談した際、軍事拠点化するつもりはないという考えを明らかにしたため、アメリカ政府はその後の中国側の動向を注視していました。