2002年に都市型の国際的ジャズ・フェスティバルとしてスタートした「東京JAZZ」。2006年から舞台を東京・丸の内の東京国際フォーラムに移し、狭い意味のジャズにこだわらず、幅広いジャンルのアーティストが世界各地から出演している。 今年も国内外を代表するアーティストが、8月29日(金)、30日(土)、31日(日)の3日間計5ステージに集結した。
当初はハービーハンコック音楽プロデュースによろ本格的ジャズイベントとして、味の素スタジアムにてスタートした。その後、東京ビックサイトにて開催され、東京国際フォーラムでは3回目。海外の大物アーティストを招いた大きなジャズフェスティバルが興行的な理由から次々と姿を消す中、本フェスティバルは今年で7回目を迎える。野外では天候などリスクを伴う。また東京ビックサイトのような本来コンサートを開く場所でない地では音響的な問題も生じる。実際、音が回ってしまって、なかなか前に出てこない。ビックサイト2回目はステージを斜めに設置。しかしながら、5000人収容ならば、すっと音響もよく、立地条件もよい東京国際フォーラムへ移すのがよいとかねがね思っていた。昨年の東京ジャズでは東京国際フォーラムの屋外にステージが作られたが、結構問題も生じることは事実だ。私も第1回から参加、イベントしての盛り上がりを期待することもあろうが、音楽を聴きたい者にとっては、やはりゆったりと座席に座って、よりよい音楽環境で聴きたいものである。
今年のテーマは「GLAMOROUS」。“JAZZ”が持つエンタテインメント性を全面に押し出し、華やかに、グラマラスに「楽しめる」ステージを展開。今年のテーマに見られるように、ジャズというジャンルはなかなか一定の枠でくくるのが難しくなっている。ポップスやロック、R&B、ブルース、ラテン、民族音楽までさまざまな音楽の垣根を越えて、ジャズ的な手法によって、独創的な音楽を作り出す。ジャズの大御所たちを中心に据えつつも、そこから新たな展開を試みる。これが、東京発信のこのフェスティバルのコンセプトのように思える。なおかつ、ジャズの持つエンタテイメント性を前面に押し出し、総合的なエンタテイメントとしての色彩を持つのが、このフェステバルの特徴といえる。
今年のステージでもハンクジョーンズ、ロンカーターがNHK交響楽団と共演したり、上原ひろみとタップダンスの熊谷和徳とのバトル。スライ & ザ・ファミリー・ストーンやリシャール・ガリアーノ & ザ・タンガリア・カルテットの登場。また東京JAZZ CIRCUIT」の一環として行われる、日仏交流150周年を記念したスペシャル・イベント「FRENCH JAZZ QUARTER」などまことに百花総花的なプログラムだったといえよう。しかしながら、果たしてハンクジョーンズ、ロンカーターが楽譜をめくりながらジャズフェスティバルで演奏する意義があるのか? あまりにも総花的すぎて、全体を貫く趣旨が見えてこないなどの批判もあろうかと思う。エンタテイメント性を追求しすぎて、その場だけの”ショー”に終わらなかったか? 今後も東京ジャズが続くならば、これは試行錯誤の時期として、ジャズの歴史を刻んでいくような明確なコンセプトを打ち出してゆくことも必要であろう。
しかしながら、東京ジャズの波及効果は大きい。実際の5回のステージのみならず、関連イベント、NHKによる度重なるメディア放送などこのコンテンツで1年間楽しめるのならば、それなりのリターンもある。おそらく、これだけの大物を集めて、無料イベントを開けば財政的に難しいこともあるだろう。コンサートのみではなく、総合エンタテイメント、話題性を重視して、プロデュースされていると思うが、今後どのような展開を遂げるだろうか?
さて、今年の東京ジャズ、内容的にはどのようなものだっただろうか? ハンク・ジョーンズは90歳という高齢ながら今年も活躍、ロン・カーター、デイビット・サンボーンとの共演も果たし、円熟した演奏を披露してくれた。デイビットサンボーンはおなじみのメンバーで来日、相変わらずの華やかな音色で以前見た時と変わらない彼自身のサウンド。好き嫌いはあるだろうが、ハンク・ジョ-ンズと意表を付く取り合わせで話題性はあった。リシャール・ガリアーノ & ザ・タンガリア・カルテットには急きょ寺井尚子さんが出演。これにはサプライズ。『スタンド!』『暴動』『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』『フレッシュ』…。ファンクとロックが融合したサウンドで革命を起こした天才、スライ・ストーン率いるグループが奇跡の来日。スライはカリスマ的で独特のオーラを放っていた。
そのほかにも話題は尽きない。ドミニカ出身のミシェル・カミロはさまざまな要素を融合させ、インパクトのある演奏。彼の演奏は”笑い転げる”と表現する人もいるという魅力あふれるものです。「ソウル・マン」「ホールド・オン」「僕のベイビーに何か?」…。ソウル史に輝く伝説のデュオ“サム&デイヴ”のサム・ムーア。エリック・クラプトンなど豪華ゲストを迎えた34年ぶりのソロ・アルバムで披露したように、迫力のパフォーマンス。ブルース、ロック、フュージョン、コンテンポラリー・ジャズを自由自在に横断する、ギター、ロベン・フォードはアメリカンテイストたっぷりに温かくソウルフルでブルージーなプレイを聴かせてくれた。個人的にはジョージベンソンを楽しみにしていた。知っている曲も多く、一緒に口ずさみながら、ソフト&メロウな歌声とギターを堪能した。
日本人では日野照正、jammin’ Zeb、そしてなんといっても東京ジャズの顔となった上原ひろみの活躍も見逃せない。彼女のバンドでは伸び伸びと美しく演奏していたのが印象的だった。31日のトリはフォープレイとデイビット・サンボーンらスーパープレイヤーによるセッション、盛り上がりは絶好調。数々の名演奏の余韻を残しつつも、一大イベントの幕は閉じた。聞くところによると、後処理にも数か月要したとか。出演したアーティストはもちろん、東京ジャズを支えてくれたスタッフの皆さん、参加したお客様、本当にありがとうございました。また、来年もお会いできるのを楽しみにしています。

プレイバック東京ジャズ2008
NHK-FM 12月29日(月)、30日(火)後1:00~6:50
出演者の紹介、セットリストなど東京ジャズオフィシャルサイト
http://www.tokyo-jazz.com/index.html