スタンリークラーク、マーカスミラーそしてヴィクターウッテンのベーシスト3人がこのほどSMVプロジェクトとして、「THANDER」というアルバムをリリースした。六本木ビルボードではライブがあったが、私は見逃してしまった。しかしながら、10周年を迎えたタワーレコード新宿店で3人のトークショーがあり、私もそちらへ参上した。
スタンリークラークは1972年にチック・コリアらとリターン・トゥ・フォーエヴァーを結成、ジャズやファンク、フュージョンを得意とする。1978年にはJeff Beck with Stanley Clarkeとして来日し武道館等で公演を行った。 コード・ストロークとスラップ奏法を使った大胆なプレイが印象的。それまで、ベースといえばサポート的な存在だったが、バンドの前面に出て、激しいアドリブを弾きこなすのが、彼の真骨頂。私もライブアンダーザスカイでハービーハンコックやウェインショーターらとインタープレイを繰り広げたのを覚えている。
マーカスは、'77年製フェンダー・ジャズベースをトレードマークとして、スラップ/タッピング、独特のネック寄りフィンガー弾きなどの奏法を駆使し、ジャズ、R&B、ファンクなどあらゆる音楽ジャンルの習得・理解をバックボーンとしたベースラインやグルーヴ感を伴った演奏が魅力。プロデューサ、作曲・編曲家としても非凡な才能を見せ、デイヴィッド・サンボーン、ルーサー・ヴァンドロスらのアルバム制作に長年携わり、ヒット作を生み出している。マイルス・デイヴィスとのつながりも経歴の一つ。マーカスもライブアンダーザスカイで何年かトリを務めたのを見た。
ヴィクターウッテンはエレキベース界の異端派で、まだあまり知られていない技巧派ベーシストとのこと。 ジャズのエッセンスを余すところ無く感じさせるプレイは、スラップ奏法、タッピング、ライトハンド、ハーモニクス奏法など多岐にわたり、聴く人に「これってベース一本なの?」と思わせるほどの、ベースを超えた領域を持つ開拓者とのこと。私も彼の演奏は聴いたことがないが、今度ぜひ味わってみようと思う。
そんな3人、今か今かと待ちかねていたところ、マーカスが遅れたとのことで、開始がずれこんだ。以前にもマーカスはここタワーレコードでインストアをやったことがあるが、その時はなんと1曲演奏した。非常にサービス精神豊かで、ファンのことを大切に思っている彼、さて、どんな話がとびだすだろうか?そして、やっと現れた。拍手と掛け声が飛ぶ。3人とも陽気な人柄のよう。
「こういう素晴らしいアルバムを作るきっかけは?」以前スタンリーのある賞の授与式にマーカスが来て、一緒に演奏した。「今度是非一緒にやろう」ということで、スタンリーもマーカスもお互いに尊敬しあい、それぞれの演奏が好きだとのこと。ヴィクターも当然のように2人を尊敬し、一緒に演奏できることは光栄である様子。スタンリーは「単なるベーシストを超えたミュージシャンとして演奏する」と話す。きっと3人が集まると、超絶技巧にはとどまらない、ミュージョシャンとしての奥行、人間性が現れるのではないかと思う。
ヴィクターは「やはり3人は即興が好きなので、ライブでは瞬間を大切にしていきたい」と話す。これを話したのは誰だろう? 「音楽からイメージすることは?」と観客に問いかけると必ず答えは同じ。テクニックの話ではなく、「Love」、「Life」、「Color」という言葉が返ってくる。聴いている人も音楽は生活の一部になっているのですね。特にこのように熱心に話を聞きに来る人たちにとっては、、、「この10年でやりたいことは?」。マーカスは「今のままずっと継続していきたい」と話す。最初に日本に来た時から、熱心に演奏を聴いてくれて、今も変わらぬ声援、これには満足しているようだ。
さて、ライブの方はいかがだったのでしょうか? 単にベースバトルということではなく音楽ファンなら誰でも楽しめる素晴らしいエンターテインメントショー。そしてベースファンにとっては彼らの個性も楽しめたとのこと。出音の1発目でマーカス、スタンリー、ヴィクター誰が演奏し始めたかわかる、まさに個性の見事な融合がS.M.V.。9/11のライブでは、マーカスが突然”ハッピーバースデイ”を演奏し始め、ヴィクターの誕生日を祝ったとのこと。そこから終盤のベースバトルまで一気にヒートアップ、スタンディングオベーションとなったとのことで、私をはじめ見逃した方は、また、次の機会を楽しみにしましょう。