ハンクジョ-ンズ、1918年7月31日、ミシシッピ州ヴィックスバーク生まれ。有名なジョーンズ兄弟の長兄(次男はトランペット奏者兼作曲家のサド、末弟がドラマーのエルヴィン)。十代の頃から地元で演奏活動を始めただけでなく、トミー・フラナガンらデトロイト派ピアニストの創始者でもある。ザ・グレイト・ジャズ・トリオ by ハンク・ジョーンズは、リーダー兼ピアニストのハンク・ジョーンズの優雅で流麗な演奏スタイル、対照的にダイナミックな演奏を得意とするドラマー、オマ-・ハキムそして絶妙のバランスで音を支える超絶ベーシスト、ジョン・パティトゥッチという大胆な人選で、ミス・マッチの妙とでも言うべき、人々の想像を裏切るようなクリエイテイブなサウンドを生み出していると言えよう。
9月3日東京ジャズ2006のトリを務めるのはハンク・ジョーンズ率いるザ・グレイト・ジャズ・トリオ それに渡辺貞夫が加わった豪華メンバ-。オマ-・ハキムは私もウェザ-リポ-トやハ-ビ-ハンコックなどとのセッションを聞いたことがあるが、非常に振り幅の広い周りをも巻き込むようなダイナミックな演奏が印象に残っている。ジョン・パティトゥッチはチック・コリアとの演奏を何度か聴いた事があるが、二人とも今回のようなハンクジョ-ンズが奏でるような生粋のジャズを演奏するのを聴いた記憶はあまりない。特にオマ-・ハキムはイメ-ジが沸かないだけにどんな演奏をするのか非常に興味があった。
いよいよ幕が下りる。最初はハンクジョ-ンズのソロ、「Alone Together」、数々の名演を刻んできた彼の真骨頂である叙情的で甘美なピアノの調べ。短いが、こなれた中身の濃い演奏でした。2曲目はチャ-リ-パ-カ-の「Au Privave」スインギ-なピアノとリズム、ジョンは4ビ-トを軽く弾きこなし、オマ-も力強く正確に叩く。やはり彼は何をやらせても高いレベルで演奏するだけの技量を持っているのだろう。3曲目の「Song for My Father」でもその真価は十分に発揮された。ジャズの王道をゆく演奏。ジョンのソロも極めてジャ-ジ-、それに呼応するようにオマ-のドラムもタンタンと刻む。さらにオマ-のソウルフルな歌も飛び出した。さすが、音楽の才人、非常にうまい。
4曲目からは渡辺貞夫の登場。渡辺貞夫はボサノバやオリジナルでも有名だが、もともとチャ-リ-パ-カ-などに傾倒し、日本に本場アメリカのジャズの理論を持ち込んだ男だ。 「Stella by Starlight」でも彼の魅力が発揮された。美しい旋律、流れるようなプレイ、彼のアルトサックスの音色には定評がある。続いてハンクジョ-ンズのソロ、ベ-スソロ、サックスとドラムスの掛け合いとなりピシャリと締めた。5曲目はきらりとしたサックスのフレ-ズが響くバラ-ド「Deep In A Dream」その名の通り、彼の深い内面性と人間性が表現される。このスロ-な曲ではハンクジョ-ンズの繊細なピアノも際立つ。ジョンもオマ-もスロ-な曲でも卓越した音楽神経を見せてくれた。
6曲目の「 I'm Old Fashioned 」はうきうきするような曲で、楽しくリズミカルにどんどんと展開する。その余韻は次の「Moose The Mooche」にも引き継がれた。ナベサダも若い頃を思い出しているのではないだろうか? そんな子供のように躍動し生き生きとした演奏であった。ピアノのフレ-ズも次々と飛び出す。彼もまた若く躍動感に満ち満ちていた。一瞬たりとも聞き逃さないという会場の空気と、ジョンとオマ-の情熱が二人のベテランの熱のこもった演奏を支えていた。「Parker's Mood」では荘厳なサックスのフレ-ズに始まり、次第に夜も深まってゆく。喉の底から搾り出すような深いジャズの世界。この歴史に受け入れられ、真髄を極めたものでないとできない重厚な演奏だった。
そして、ピアノがもう一台用意される。グランドフィナ-レだ。
なんと、チックコリア、上原ひろみ、 オースティン・ペラルタの3人のピアニストが登場して、ハンクジョ-ンズとの夢の競演。曲は「Someday My Prince Will Come」。 チックが切れ味良くピアノを叩けば上原ひろみは激しくボルテ-ジの高い演奏、オースティン・ペラルタと共に彼女のジャズピアノの実力を示してくれた。
と、会場が静まり返り、バックの演奏が止んだ。
ここで、信じられない光景が・・・
ハンクジョ-ンズとチックコリアが同じピアノの前に座ったのだ。
ハンクジョ-ンズの繊細なタッチのピアノに、いささか強いタッチのチックのピアノが絡む。
二人は嬉しそうに連弾を楽しんでいた。観客も息をのんでこの歴史的な演奏を見守った。
本当にこのフェスティバルならでは。フィナ-レにふさわしいパフォ-マンスだった。
皆さんもここに居られて良かったと思っているに違いない。
秋の始まりの一大イベントも幕を閉じた。「また、来年も来よう」私もこの余韻に浸りながら、係の人と約束し、幸運にも張り付けてあったポスタ-をもらって家路に着いた。
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