歴史の黎明は、かれら大和民族を、戦いに臨んで精悍、平和の諸芸において温雅、太陽の子孫の伝説とインドの神話にはぐくまれ、詩歌を愛し、女性に対する大いなる尊敬の念をいだく一個の緊密に団結した民族としてあらわし見せている。神道、すなわち神々の道、として知られているかれらの宗教は、先祖崇拝の簡素な儀式であったーーそれは、神秘の山高天原(アマの高原)、すなわち太陽の女神を主神とするオリンパスの山上に、神々の群に呼び集められた父祖の霊を敬い祀るものであった。日本ではいずれの家族も、かの太陽の女神の御孫が八重の雲路をこの島に降臨されたとき、彼につき随った神々の末裔であると主張し、かくて万世一系の皇統をめぐって集結する国民精神を強固にしている。
岡倉天心『東洋の理想』