オルバースのパラドックス | 今今と今という間に今ぞ無く 今という間に今ぞ過ぎ行く by道歌

オルバースのパラドックス

今日本屋に行ってみるとパラドックスについて取り上げている本がありました


そこに懐かしいものをみつけてうれしくなってしまいました


それは「オルバースのパラドックス」というものです


そもそもパラドックスというのは逆説的な理論をさします


本当は○○であるはずなのに××と考えると矛盾が生じてしまう・・・・


みたいなやつです


上で上げたオルバースのパラドックスというのは物理に関する逆説です


誰に聞いても夜は暗いということくらい知っていますが、それがおかしいと


いうことになってしまうお話です


光の強さはは距離の二乗にに反比例するけれど、地球のからある距離にある

恒星の数も二乗に比例して増えているので結局はあらゆる方向から来る光の強さを

合計すると無限に明るいことになってしまう

無限に明るい宇宙を見上げているのに夜が暗いのだから、星の数は有限で

なければならない、つまり宇宙の広さは有限で無ければならない


こんな感じのお話ですが、なかなか鋭いところに気づいています


確かに宇宙が無限で星が無限にあるならそこから来る光も無限になってしまいそうです


かと言って宇宙が無限に広いわけではないというのは物理学に反します


実はこの問題は宇宙の最新の理論までつながっています


ここでは簡単にこのパラドックスについて考えて見たいと思います


まず、一番初めにハレー彗星で有名なハレーが恒星が実は動いていることを発見します


それまでは恒星は名前の通り動かないものだと考えられていたのです


その後、ハッブル宇宙望遠鏡で有名なハッブルが地球から見たすべての星が

離れていっていることに気づきました


ちょっと余談ですが、星の動く早さは光を使って測られています


ある星からくる光を見た時、その中から特定の元素が放つ光を見つけ出します


特定の元素は特定の波長の光を放ちますが星が動いているとドップラー効果で


波長が変化して地球に届きます


ここでドップラー効果というのは「ピーポーピーポー」と救急車が


近づいてくる時は音が高く聞こえて離れて行く時には低く聞こえるのを


思い出してもらえれば良いと思います


その波長の変化の大きさはどれだけの速さで地球から離れていっているかによって


変わってきますので、そこから速さを測ることができるのです


そうやってハッブルがいろいろな星を研究したところ、遠くにある星ほど

距離に比例して早く離れていっていることがわかりました


いわゆるハッブル方程式というやつで、現代物理でも非常に重要な方程式です


さて、このハッブルの研究成果は非常に衝撃的でした


すべての星が地球から離れていっているなんてことはばかげていると


考えられたのです


それではまるで宇宙の中心に地球があるみたいではないか!?というわけです


全方向で一様に星が離れていっているということは天動説のような世界を

想定しなければ普通の空間内では考えられません


しかし、このデータは紛れも無い事実です・・・・


そこで普通の空間とはちょっと違った空間を考えてみましょう


一番良く上げられる例として風船の表面が用いられます


ちょっとだけ膨らんだ風船の表面のある一点にポチッと印をつけます

そして、さらにもう何点か違う点に印をつけておきます

そのまま、風船を膨らますと初めの印から見て他の点は一様に

離れていくことになります


このように膨らむ風船の表面では中心など無いのにどの点から見ても


回りが一様に離れていくことになります


これがつまり、宇宙の一番イメージしやすいモデルということになります


ハッブルは宇宙の膨張というものすごい事実を発見してしまったのです


そしてこの宇宙の膨張こそ初めに出てきた「オルバースのパラドックス」


を解く鍵なのです


要するに、ハッブル方程式より地球から見た宇宙のかなり遠くの星はすごい

スピードで地球から離れて行っているのである距離より遠くでは

その星は光の速さよりも速いスピードで地球から離れていっていることになります

それならば無限に星があっても一定の距離よりも遠いところにある星からは

光が届かないので光の明るさは有限ということになりこの問題は解決できます


めでたしめでたし・・・ということなのですが、勘の良い人ならば星が光よりも早く・・・・


と言うところに納得できないかもしれません


光は真空の空間を進むものの中で一番早いものであるはずです


しかし、上の議論で問題となっているのは空間を星が進んでいるのではなく


空間そのものが広がっていっていて星はその上に乗っているに過ぎないので


光の速さ以上で離れていっていても問題とはなりません


今度こそ本当にめでたしめでたしです


でももうちょっとだけ話を続けると、現在物理では宇宙の膨張が一定の

速さではなく加速しながら膨らんでいることがわかっています


これ自体非常に奇妙な現象で、そもそも宇宙の膨張というのは


ビックバンの名残でまだ勢いが残っているからであると考えられていたのです


そうであれば宇宙に含まれる各々の物質の引力で膨張は減速するはずだと


思われていました


しかし、なんとその宇宙は自身の重力に打ち勝って加速しながら膨張しているのです


現在その膨張の力の源がなんであるのかわかっていません


物理学者たちは仮にこの力の源になる物質をダークマターと呼んでいます


今まで観測に引っかかってこない暗黒の物質というイメージだからです


しかし、膨張が加速しているとなると、宇宙の未来は二通り考えられることになります


つまり、ずっと膨張していって宇宙は無限に希薄な何も無い空間になるというもので、

開いた宇宙と呼ばれているモデルです


もう一つは途中で重力が打ち勝って収縮に転じビックバンの逆である


ビッククランチという現象の後新しく宇宙の膨張が始まるというパターンで、

閉じた宇宙と呼ばれています


なんとなく後者の方が未来を感じさせますが実は最近の研究では、宇宙の空間の


曲率の計測から宇宙は開いた宇宙であるという見解が有力視されているようです


ちょっと寂しい結論ではありますが、まぁ我々が生きているうちには


関係無いかもしれませんね


希薄化する頃には地球も無いですしね(^^;;アセアセ