五 太田先生の場合
太田先生はこばと寮の寮母さんで寮の三階に息子さん2人と住んでいた。中学生と大学生の息子さんは先生によく似て、キツネ目の面長で身長もめちゃくちゃ怖かった。
ここには、男性に酷い目に合ってくる女性たちばかりなので、身長の高い男性は怖がられるからと、できるだけ寮の利用者とは顔を合わせない様にしているらしい。先生も、DVの被害者で大阪から逃げてきたらしい。
チャキチャキの大阪弁といつも強そうなスポーツウーマンの様な先生にそんな辛い過去があったとは知らなかった。
「みっちゃんのお母さんと私は似てるんよ、男に甘えられないタイプ、つい自分でなんでもするから可愛くないんよ、男を怒らせるんよ」とよく言っていた。
夏祭りの時だけは寮のみんな総出で中庭で盆踊りやヨーヨーなどのお店も並び、その時初めて大学生のお兄さんと話をした。
笑顔が爽やかで太鼓を踊りにあわせて叩いてくれてとても素敵。そう思っていたのは、私だけでなく、ママたちもみんな、お兄ちゃんの周りを囲んでいた。
いつも泣いているそうすけがお兄ちゃんに肩車されてめちゃくちゃ笑ってる!
「楽しい」心からそう思った。「楽しいね」と私が言うと、太田先生は、「みっちゃん、この楽しい思い出をしっかり覚えておくんよ、こう言う思い出が心にあるかないかでその後の人生の大変な時の力になるからね」と言った。
そのことを、後からお母さんに言うと、なんだか母の血が騒いだのが、のちに、小鳩寮、始まって以来の大イベントを母がやってのけたのである。そのお話は最後に・・・
