「ニャー」「ニャー」
また喧嘩してる。
私が生まれてからこの猫達はずっと喧嘩してる。
秋風が指先を突き刺す。
冬もすぐ近くにあるだろう。
まだかな…?また寝坊かな?
「お待たせー!友理!ごめんねー」
「いいよいいよ、寒いね早く行こ!」
マイペースで寝坊してきた真子。
高1からずっと一緒だ。人が苦手だった私が一緒にいられる人、2人目。
1人目?…それは、うん伏せておこう。
チャイムギリギリ間に合った。
弾む息が白く現れる。
もうこんな季節か。
教室に近づくほど騒がしい。
朝からみんなほんとに元気だな。
「遅いよー!真子!友理!」
先生が来てないから教卓のイスに座り足をバタバタさせる裕子。
高1から高3の今までずっと3人で過ごしてる。
高1の時は私と真子は同じクラス。
高2の時は裕子と私は同じクラス。
真子とはクラスが分かれた。
けど、3年になった今奇跡的に同じクラスになれた。
ぶっちゃけると裕子はどうでもいい。
『仲のいい人』の枠には入るが、『好きな人』と言われるとイマイチ、ピンと来ない。
ただもともと私と真子は仲が良くて真子と裕子は同じバレー部で仲が良かったから私は流れ的に裕子とも仲良くしてきた。
裕子は癖のある性格で好かれるタイプではなかった。
あの真子でさえ愚痴をチラつかせる。
だが真子や私が離れると裕子は一人になる。
真子は優しい。私ならすぐに離れるのに。好きじゃなくても仲良くしてる真子は優し…い。
いや改めてこれが果たして優しさなのか考えると?マークが浮かぶが…。
私は真子が好き。
こんなに一緒にいて楽しくて飽きない人は真子だけ。!
勿論恋愛としてとかそんなんじゃなく家族以上の存在だった。
だけど真子には他にその家族以上の存在がいたのだ。
それは小さい頃から通うバレーのクラブチームの晴香ちゃん。
真子が晴香ちゃんの話をする度、少しヤキモチを焼く。なんて私は子供なんだ。
真子が私に想う気持ちに不安があった。
遊びを誘うのはいつも私から。
しかも、何度断られただろう?
それなのに私が悩んだり落ち込んだりするとそばにいてくれて話を聞いてくれる。
一方通行なのか。両思いなのか。
もうわからないのだ。
「ねぇ、友理」
「ん?どした?」
「友理からもらったイニシャル入りのボールペン。なくしちゃった♪♪」
ペロッと舌を出す真子。
「えー!!まぁいいよ!また違うのあげるから!!」
平然と見せるが内心、胸の鼓動があった。
キュンとしてるんわけじゃない。
ひどいことをされて傷ついてるけどそこまで怒りの感情はなかった。
今までに真子にいくつのプレゼントを渡しただろう?
そしていくつなくされただろう?
私は小さい頃から人を想うことがなかったから感情の伝え方がわからず
相手を喜ばせる方法としてプレゼントしか思いつかなかった。
あとは必死に優しくする。それだけだった。
何か誕生日とか節目の時とかじゃなくて普段からプレゼントを渡していた。
誰にでも手に入る安いものから大人が買うような高価なものまで。
もう全額足したら…。
バイトで稼いだお金はほとんど奢るかプレゼントか。
だから時計とかはそれなりのものは買えた。
その例のそれなりの時計はお揃いだった。
ふと自分の持ってる時計をみる。
あー、あと少しで昼休みか。
考え事しているからむろん勉強など入ってこない。
後ろの席の裕子は寝息をたてているし。
この子進級大丈夫かな?
あ、そういえば最初に渡したプレゼントは何だったかな。
真子の誕生日は5月。その時にこの時計をあげたのか…。待てよ、その前に何かあげたような…。
♪キーンコーンカーンコーン♪
「あー!疲れた!昼休みだ!!」
「いや寝てたのに何で疲れたのよ笑」
さっきまで寝てた裕子が素早く起きた。
「ねぇ真子ー。私真子に初めてプレゼントしたのって時計だっけ?」
「えー、たくさんくれるから覚えてないな…でも、たしか…」
「たしか…?」
「私がさ自己紹介で猫が好きって言ってたからか次の日、猫のストラップもらったかも!」
そうだった。
石川友理。伊藤真子。名前順で偶然にも席が前後だった。
それで真子の笑顔を見る度に
『この人なら仲良くなれる!』って思ったんだ。
もともと人間嫌いで友達は作る予定もなかった私が心を許せた人だ。
日に日に真子への気持ちは高まった。
恋とは違う。そこは絶対。
大切にしたいって思った。
母へ思い気持ちと何だか似てた。
真子への気持ちもいつの間にか『好き』から『愛』に変わってた。
♪キーンコーンカーンコーン♪
続く!!